【ピアノを演奏するYIS】
みどりちゃんのお婆ちゃんが使っていた、1982年に発売されたヤマハのホームコンピュータ「YIS(ワイズ)」を、童子さんが再び使えるようにしました。
さっそくフロッピーディスクに入っていたピアノの自動演奏データを使ってピアノを弾かせてみました。
みどりちゃん「ブラームスの子守歌ね、私が小さい頃よく聴かされていたわ」
麦ちゃん 「すごーい!ピアノの鍵盤がひとりでに動いてるわ」
みどりちゃん「これ、お婆さまがこのピアノで弾いていた曲じゃないの!?」
童子さん 「そうなの、みどりちゃんのお婆ちゃんの指使いまでちゃんと記録されてるのよ」
【YISピアノプレーヤー[PC-1]】
ピアノの上に置かれているのはYISピアノプレーヤーPC-1です。
専用のピアノコントローラを取り付けたピアノを弾くと、鍵盤やペダルの操作をフロッピーディスクに記録し、YISコンピュータ上で楽譜にしたり、演奏を再生したりできます。
コンピュータらしく、演奏の再生時にはテンポを調整したり変調したりすることができます。
また、プロの演奏データも販売されていて、自宅にあるピアノをプロのピアニストが演奏するということもできました。
また、ヤマハが開発した当時最新のFM音源シンセサイザボードも別売で用意されていて、ボードを装着することでシンセサイザを使っての楽曲の演奏もできました。
【SketchUpで作成したYISシステム】
前回の記事では、YISが特にグラフィック機能に力を入れていたと書きましたが、機能的には512×384ピクセル、256色中8色をドット毎に指定できるというもので、表示能力としては特筆すべきものではなかったかもしれませんが、何よりもグラフィック描画のためだけに16ビットCPUのZ8001とヤマハ独自設計の専用LSIを搭載し、圧倒的な描画速度を実現していたことが特筆すべき点でした。
1982年当時はマウスが使えるパソコンは無く、YISで絵を描くためには別売のライトペンを使い、画面に現在の液晶タブレットのようにペンで絵を描くようになっていました。
高性能グラフィックを活かしたグラフィックツールやCADソフトが出ていたかどうかはわかりませんが、当時のパソコン雑誌に掲載された広告でのグラフィックはやはり美しいものでした。
しかし、本体と専用ディスプレイのセットで128万円というのは一般ユーザーには高価すぎました。
YISには専用LSIの開発や自社開発のBASIC言語、さらにはホームオートメーションを実現するための周辺機器の開発など相当な開発費用がかかったと言われています。
そして高価ゆえに販売台数は伸び悩み、YISはヤマハのお荷物となってしまいました。
ですが、コンピュータ用LSIの自社開発で得たノウハウは本業の楽器製造に活かされ、FM音源LSIを採用したシンセサイザの名機「DX7」は大ヒットとなり、さらには携帯電話の着メロ用音源はヤマハの大きな収益源となりました。
謎の多い幻の名機YISに関してはこちらのサイトが詳しく説明しています。
37年語の後だしジャンケン……ECC(旧)さんの記事です
NHKの「これが我が社の黒歴史」に出してもいいようなネタだと思うんですけどねー、ヤマハのYISは。
転んでもただでは起きない技術者たちの貴重な話を聞いてみたいですね。