【英文ワープロを使うみどりちゃん】
恋の魔法とおまじない /(C)愛ちん
麦ちゃん 「あーっ!!あんたなんで私に黙って獅子堂先生とここにいるのよ!!」
みどりちゃん「獅子堂先生に英語の個人レッスンを受けてるのよー」
獅子堂先生 「蛙石は今年の高校生英語スピーチコンテストの関東大会で優勝したんだぞ」
みどりちゃん「だから、さらに英語力に磨きをかけなきゃねー」
麦ちゃん 「(ギリギリギリ)」
マスター 「それにしてもみどりちゃんが使ってるのはタイプライターかい?」
みどりちゃん「昔、おじいちゃんが仕事で使っていたパソコンなの。40年近くまえのものだけど」
【テレワークの未来を予見したNEC PC-8201】
みどりちゃんが使っている昔のパソコンは、NECが1983年に発売したハンドヘルドPCのPC-8201(設計・製造は京セラ)です。
乾電池駆動のできる8ビットPCで、CPUにはインテルの80C85が使われていました。
当時としては高解像度(240×64ピクセル)の反射型白黒液晶が搭載されていて、本体カラーも白、ワインレッド、シルバーの3色が用意されていて、NECも販売に力を入れていました。
【日本では売れなかったPC-8201】
特筆すべきは、まだパソコン通信も始まっていない時代に、外付けの音響カプラーに電話の受話器を乗せて、通信ターミナルとして使用できるターミナルソフトを内蔵していたこと。そして、英文ワープロを標準装備していたことでした。
日本では漢字混じりの文章を取り扱うためには、さらに高速・高解像度の画面表示能力を求められたため、当時の携帯型パソコンではそれが実現できなかったのですが、英語圏ではこの程度の表示能力でも十分に英文を編集することができたため、アメリカでは特に新聞記者や文筆家がこのPC-8201(またはPC-8201のOEM製品のアメリカ タンディ・ラジオシャック社のTRS-80 model100)を愛用し、現場や出先で書いた記事やコラムを電話回線を使って新聞社や出版社に送るという、今のテレワークを先取りしたような仕事のスタイルができつつありました。
日本でポータブルワープロが普及するのは1980年代後半以降になるため、漢字という文字を使っていたことで、テキストの電子化は英語圏に比べて3年以上遅れを取ることになってしまいました。
このPC-8201は、別売の漢字ROMを使うことで、日本語ワープロとしても利用することができたのですが、英文ワープロに比べると処理速度も遅く、実用性に乏しかったため、日本ではそれほど販売台数も伸びず、この1機種のみが販売されただけで終売となりました。
ですが、アメリカや欧州では後継機のPC-8300、PC-8400が発売されるなど、人気の高いPCでした。
1980年代はPCで日本語を扱うというのは非常にハードルが高い時代でした。