【通信パソコンMZ-2500】
冬休みも最後の日に、麦ちゃんたちの高校の小田川先生が、また昔のパソコンを
きなこの家に預けていきました。
「そのパソコンはだいぶ新しいみたいだけど、ネットとかできるの?」
「30年以上も前のパソコンだから、さすがにそれは無理よ」
「何か面白いゲームとか入ってないの?」
「このパソコンはあまり売れなかったから、ゲームもそれほど出なかったみたい」
「人気のなかったパソコンも先生は集めようとしてるのかしら」
「今はほとんど使われてないけど、ネット以前はパソコン通信が流行ってて、その先駆けの機種だったみたいよ」
【通信パソコンMZ-2500】
1985年に発売された8ビットパソコンのシャープMZ-2500です。
当時としてはかなり先進的で、ほとんどのPCが8色または16色のカラー表示しかできなかったのですが、MZ-2500は256色カラーグラフィックが可能で、他の8ビットPCが64KBのメインメモリだったのに対して、標準で128KB、最大256KBまでメモリを拡張することができました。
また、搭載された8ビットCPUのZ80も、他機種のクロック周波数が3.6~4MHzだったのに対して、MZ-2500はより高速な6MHzで動作していて、価格も当時の8ビットPC三強と言われたNECのPC-8801SRや富士通のFM-77、同じシャープの他事業所が販売していたX1turboシリーズが軒並み30万円弱の本体価格だったのに対して、20万を切る低価格で販売され、台風の目になるかと言われた8ビットPCでした。
【不遇の名機】
ハードウェア的には1985年当時8ビットPC最強と言われたMZ-2500ですが、それまでのMZシリーズは他機種に比べてハードウェアがやや貧弱で地味だったためにソフトウェアがあまり充実しなかったことがあり、ユーザーはMZの名前だけで「この機種にはソフトが出ないだろうな…」と敬遠されてしまいました。
シャープはMZ-2500を「通信パソコン」と称して、当時始まったパソコン通信ソフトを内蔵させ、専用のモデム付き電話機をオプションで用意しました。
しかし「パソコン通信って何ぞや」と、ほとんどのユーザーには理解されず、それがユーザーへの訴求力となることはありませんでした。
私自身もパソコン通信を始めたのは1990年頃で、それまでは「何が面白いの?」とまったくその便利さ楽しさを理解できずにいました。
今はインターネットなしでは仕事も日常生活もままならない時代になりましたが、当時は電子メールの利用者もほとんどおらず、その普及を阻害していたものは何よりもネットの利便性を大衆にうまく伝えることができなかったからです。
テレビアニメにもなった大ヒットマンガ「ゲームセンターあらし」の作者のすがやみつるさんが、パソコン通信の伝道師として活躍したこともあって、1990年頃にはようやくパソコン通信を始める一般ユーザーが増えてきました。
MZ-2500は時代を先取りしすぎた不遇の名機でした。




