梅雨の楽しみはアジサイ。
アジサイを美しいと思ったり、
愛しいと感じたりする度合いも、
年齢によって変化していくようです。
年齢とともにアジサイを
愛でる気持ちが高まってくるのは、
加齢によって余裕がでてくるからなのか、
それとも無意識のうちにでもそれぞれに
寿命が限られてきているという本能的刹那が、
人をより優しい気持ちにしていくのか、
それはわからないけど、それはともかく、
アジサイが梅雨時だけに魅せる幻想的な美しさは、
人を魅了してしまうようにも思われます。
「かぎりなく幸いなるは古(いにしえ)の世。耕地に満足していて、怠惰なる贅沢で滅びることもなく、ドングリで空腹を解消する習いだった。」
(「哲学のなぐさめ」ボエティウス/京都大学学術出版会)
人類史上、人間が、
最も幸福であったのは、
太古から古代にかけてまでの人間が、
傲慢・怠惰・虚飾・虚栄とは縁のない
時期であったのかも知れません。
「いまだ深い海を渡ることもなかった。旅人は新たな岸を見なかった。」
(「哲学のなぐさめ」ボエティウス/京都大学学術出版会)
古(いにしえ)の人々は、日々、
質素な暮らしに満足し、贅沢は知らず、
海の向こうに何かがあるなどという野望も、
川の向こうに
怠惰な贅沢があるなどという不埒な欲望も、
抱くことさえなかったようにも思われます。
「だがアエトナの火よりも猛り狂う所有へのたぎりたつ愛が燃えている。」
(「哲学のなぐさめ」ボエティウス/京都大学学術出版会)
アエトナは古代ギリシャの都市で、
アエトナの人々は、常に火山の
噴火を目のあたりにしていたようです。
人間の欲望は、特に所有という欲望は、
活火山の火よりも恐ろしく、
人間の理性をも
焼きつくしてしまうようです。
僕は所有欲に恵まれていないから、
とても良い人のようですけど、
そのかわりにスケベという活火山に
悩まされているのです。
そしてなにより、
女性を好きなのと同じ熱量で、
体制を嫌ってもいるのでした。
「もしネズミたちのあいだで1匹のネズミが自分に特権と支配権という権力を、他のネズミたちに要求するのを目にすれば、あなたがたはどんなに大笑いすることでしょう。」
(「哲学のなぐさめ」ボエティウス/京都大学学術出版会)
現代の選挙制度などは、
まさにこの1節であるようにも
思われなくもないのです。
我こそはなどと謳う立候補者のなかに、
これっぽっちも善などは、
見出せないような
気もしないでもないのです。
「最悪の連中がしじゅう権力にのさばっているのですから、それらの本性が善でないことも明らかです。」
(「哲学のなぐさめ」ボエティウス/京都大学学術出版会)