アリストス1 | コラム・インテリジェンス

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透き通るような…心が…ほしい

「アリストス」には、こんなことが書かれている。
 
“ 現在の世界に広く行きわたっている考え方として、
哲学は哲学者に、社会学は社会学者に、死は死者か坊主に、
任せておけという意見がある。
これは現代の大いなる異端あるいは暴虐の一つではないかと、わたしは思う。 ”
 
なんだか小難しいようにも思われるけど、
たいしたことを言っているわけでもないのかもしれない。
その証拠に、「アルストス」にはちゃんと、そのあとで、その回答も用意されているからなのだ。
 
不満がこの世紀に湧いて離れぬのはなぜかというなら、
それはまさしく私たちが最も基本的な人間の生得権、すなわち、
自分にかかわるすべてについて自分で考え出した意見を持つということを、
見失いかけているからなのだ。 ”
 
なんのことはない。
個性だ提灯だと主張しながら、似たり寄ったりになっているのではなく、
個性などは、だまっていても、その人その人に、
幸か不幸か、備わっているのだから、
少しは、物まねではなく自分で考えなさい、くらいのことらしい。
 
ヒトは黙っていても、それぞれがアタリマエに個性的にできている。
そこに最大最小公約公倍数的共通項を見出していくことも、
ヒトと人との絆に繋がっていくのかもしれない。
 
ただし、そこには、人真似物真似ではなく、
独自の考えを持ってこそ、独自の考えを持っている者同士こそ、
真の絆で結ばれていくのかもしれない、という厳しさも残されているような気もしないでもない。
 
唯我独尊、自信過剰、慇懃無礼等々、
さんざっぱら罵られながらも、マイペースで生きてきたオジさんなどは、
「アリストス」の最も愚かな曲解者になってしまうのかもしれません。
 
ジョン・ファウルズ著「アリストス」
 
アリストス ≒ 古代ギリシャ語、「与えられた状況のための最良の者」