「アレクサンドリア・カルテット」 | コラム・インテリジェンス

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透き通るような…心が…ほしい

高校生の頃、
この本を僕に薦めてくれた女性は、当時20代後半のキャリアであった。
バリバリの不良少年がバリバリのキャリア女性に恋をした。

この本に刺激を受けて
アレクサンドリアに飛んだのが僕にとって、初めての海外体験となった。
絶世の美女とは彼女のことだと確信していた。

こちらが社会人になる頃にはあちらは独立して事務所を構えていた。
どこまでいっても追いつくはずもなかった。

彼女がアラスカにスキーに行き、事故にあった。
連絡が入り僕はすぐに現地に飛んだ。
ベッドで僕の顔を見ると彼女は泣いた。「ドジで、ごめんね」と言った。

事故にあったドジではなく男に甘えたドジを恥じているのだと思った。

ゴルフも歌舞伎も会員制のレストランも彼女の手ほどきで覚えていった。

この歳までに2回、彼女にプロポーズした。2回とも断られた。3回目は、ない。

この世のものとは思えなかった美女は、
今ははっきり僕もこの世の女性として認識できる歳になった。

生涯独身で通すつもりだと言っていた彼女が最近、
休暇をとってアレクサンドリアへ旅立った。
直前に彼女は
「アレクサンドリア・カルテットのクレアになって、
 クレアの目で養子でも探してくるつもり」
と、僕に微笑んだ。彼女の目は輝いていた。