
・「フレンチ・コネクション」のポパイ役は、
元々ピーター・ボイルにオファーされた役だった。

怒れるオッサン大暴れ映画「ジョー」での
強烈な演技あってのことだったが、
ポパイ刑事役は、あっさり断ってしまった。

中堅演技派だったジーン・ハックマンが、
これでブレイクしたことを思うと、
ボイル氏が主演を引き受けていたら
人生も変わったものになっていたかもしれない。

■「ヤング・フランケンシュタイン」で共演、ボイル(左)とハックマン
以降は独特な存在感のバイプレイヤーとして、
異彩を放ち続けることになる。

日本では「ヤング・フランケンシュタイン」の
フランケンシュタイン役が最も知られている程度で、
未公開作がやたら多いのも、チョッと残念。

そんなピーター・ボイル、
僕がこの人の演じた役柄で高く評価しているのが、
ポール・シュレーダー監督「ハードコアの夜」の
俗物丸出しの下卑た私立探偵役。

●Hardcore(1979・アメリカ)
監督・脚本:ポール・シュレイダー
音楽:ジャック・ニッチェ♪

・「タクシー・ドライバー」で名を知らしめたが、
そもそもポール・シュレイダーという人は、
暗いものが好きなようだ。

人間がぶつかる苦悶の瞬間や、
深く抱き込んだ心の闇が大好きなようで、
それを起因として爆発する歪んだ心情に
ドラマのパフォーマンスの頂点を持ってくる。

「ハードコアの夜」は、
厳格なオランダ系カルヴィン派の信者でもある父親が
突然旅先のカリフォルニアで失踪した娘を探して、
文字通りハードコアのポルノグラフィあふれる
アンダーグラウンド世界に深く潜入していくお話。

このストーリーラインに漂う空気は、
ポール・シュレイダーによる、もうひとつの
「タクシードライバー」である。

この親父さんがまた、世慣れていないクソ真面目男で
いかにも友達の少なそうなお堅い人物。

キイィィィィ~~!
演じるはアメリカを代表する頑固オヤジ、
ジョージ・C・スコット。
出てきた瞬間、不機嫌な石像のごとき頑固顔。

バブバブ
こんな御方がいきなり主人公だからこそ、
極端に濁りきった風俗ビジネスの異世界へと迷い込む姿は
現実味がある。

そんな暗黒世界への水先案内人として登場するのが
ピーター・ボイル扮するベテラン私立探偵アンディ・マスト。

見かけは中年ウスラハゲで、野暮ったくて口も悪い、
言いたいことはなんもかんも先に言い切ってしまいそうな
江戸っ子のオッサンみたいな奴である。

しかし、唯一、職業的な勘と嗅覚だけは異常に鋭い。
ここがギラリと光る!

敬虔の念が深い頑固オヤジとは反りが合おうはずもなく、
命知らずの狼と化したオヤジは、
あの手この手で単独捜査を開始して、夜の深みへと迷走していく。

途中、ピープショーで知り合った美しい娼婦と親しくなるが
信心深さゆえに、断じてボディコンタクトは無理と拒む。

偽装や詐欺まがいの行動もやってのけるし、
カッとなってあっさり暴力をも行使するクセに、
そっちの欲望には線を引いて、聖人然とふるまうという
なんともややこしいオッサンである。

やっぱ友達は少ないタイプだ。間違いない!

ここまでの甲斐性なしオヤジに溺愛されたんじゃあ、
そりゃ娘もどっか行くわと思えなくもない。

ま、そんな頑固オヤジの魔界の道行きも
いよいよ核心へと近付いて、自ら抑圧してきたものが
魂の総決算として大噴出する。

それにもまして、残された現実はどこまでも苦い…。

アチャ~~…
さて、忘れてはいけない。
冴えない素振りで、スノッブの極みかと思いきや、
しっかりフィニッシュを決めて見せる私立探偵の貫録。
これぞピーター・ボイルの存在感。
★1個はこのボイル探偵へのサービス。

★★★★
採点基準:★…5個が最高位でマーキングしています。★…は★の1/2です。
































