ホラー洋画劇場Vol.21

●Das Cabinet des Dr. Caligari.
(1920・ドイツ)
監督:ローベルト・ヴィーネ
脚本:ハンス・ヤノヴィッツ カール・マイヤー

はい、みなさんまたお会いしましたね

あのね、今日の映画、「カリガリ博士」いうのね
「カリガリ博士」、ガリガリ君みたいですけれども
映画をお好きな方なら、
いっぺんはどっかで名前を聞いたことがあるかしらん
ドイツの古い古い古い有名な奇妙なホラー映画、
ドイツ表現主義いう言葉があった時代の作品です

けれども今の映画ファンの方で、
これを観た方は少ない思いますな
なぜなら、これは今から100年近くも前に作られた
サイレント映画なんですね

サイレント、音の無い映画、
フィルムで撮った映像だけの映画、
そんなフィルムだけで語る映画ですね
時々字幕が出ますけれども、

今とは見せ方も、撮り方も違うので、
よっぽど熱心な方じゃないと、今の時代に
サイレントを観る人はそうはおりませんな

ところが、今でもこの映画は語り継がれて
映画を撮る人たちには特に大事にされているんですね
映画を勉強する人たちも、教材に使うんですね

いつの間にか
そんな教科書みたいな存在になってきまして、
大事に大事にされてきた作品ですね
なんで大事にされとるのか言いますと
ふたつ理由があるんですね

ひとつは最後に申し上げますけれども
一つ目は、これは、
ご覧になったら、驚かれる思いますが
美術がびっくりなんですね。
とんでもない滑稽な、
けれども何とも知れんモダンな、
不思議な美術の感覚に驚かれる思います。

そんなわけで、
古い棺桶の中に入っとったミイラみたいな映画を
引っ張り出してきましたけれども、
回りまわって
現代のホラー、
怪奇映画の歴史に影響を与えた作品ですね
そしてこの映画には、
そんな棺桶が出てくるんですね
いかにも怪しい棺桶ですな
その気色悪い棺桶の中に妙なもんが入っとる
何が入っているか?

はい、そこには
眠り男いうのが入ってるんですね、
眠り男?聞いたこと無いな…
眠り男、眠り男って何でしょうね?
さあそれがみどころですけれども、

監督は、ドイツのローベルト・ヴィーネ
手堅い作風で定評があったらしいな
そんな人がこんな怪奇映画を撮ったいうことで
ますます評判になったんですね

それから
ドイツのサイレント時代の俳優が何人も出てまいります
今観ても、もう知らん俳優ばっかりですが、

主演のカリガリ博士を演じたヴェルナー・クラウスをはじめ、
当時の名優たちが、こぞってこの映画に出ているんですね
それだから不思議と臨場感がありますな

はい、これはいっせんきゅうひゃく20年度の
ドイツを代表する怪奇映画の古典です
どうかじっくりご覧くださいね

それではあとで、またお会いいたしましょ
映画が始まりますと、
若い男と年とった男がベンチに座っておりますね

年輩の男が、
私は亡霊に取り憑かれて
家族を捨てないかんようになった
言うて、身の上話をしとりますね

そこへふらふらっと
寝巻みたいな
白い服を着た女がやってくる
この女、男たちに気づくでもなく
通り過ぎていきますな

すると、若い男が
あれは僕の婚約者なんや
僕と彼女はな、あんたよりも
ずっと恐ろしい体験をした
どんな体験やったかお話ししましょう
言うんですね
…あのね
僕の故郷はね…
なんて話し始めるんですな

どうもおかしな風やなぁ、
思うて観ておりますと
若い男の故郷で
カーニバルが始まろうとしているんですね

そこに
山高帽にマントで身を包んだ、いかにも怪しい老人が
ステッキつきながら、のっそりのっそり現れた

この老人が、道行く男に小銭を掴ませて
ちょっと、あんたすまんけどな、
カーニバルを仕切っとる所を教えてくださらんか
言うんですね

そこで名刺を出すんですな
そうしましたら、
ドクター・カリガリと書いてある
この博士が、係の所で
カーニバルで興行をしたいので許可をくれませんか
とお願いするんですね

あんた何をやるんや?
夢遊病者のショーです。
夢遊病のショー??
ところがそこで、なんと
そんな聞いたことも無いようなショーを
やってもよろしい、いうことになるんですね

そうしまして、
たいそう賑わっておるカーニバルの会場で
カリガリ博士が
不気味な夢遊病者のポスターを貼りだして
切り口上を張り上げとるのね

あのな、みなさん、
このテントの中におりますのは
棺桶の中で眠り続けている
世にも稀なる眠り男にございます~
なんてことを言うて、人がぞろぞろ集まってきた
眠り男??なんや?なんや?
いうところから、この薄気味悪いドラマも
幕を開けるんですね


はい、いかがでしたか?
セットが曲がってる、
妙な具合に歪んでおりましたな

椅子も机も、
あっちの方の壁も、こっちの方の窓も
町の中も、道も、よう見たら建物も
そして墓の近くの十字架までも曲がってますね

目がおかしゅうなるような
不思議な不思議な美術ですけれども、
しばらく観ておりますと、
何とも知れんファンタジーのように見えてくる
シュールな舞台のお芝居を観ているようですな

はい、この映画、
大事に大事にされてきた理由が
ふたつあると申し上げましたが
いま一つの理由は、
実はこの作品、最初は
プロローグもエピローグも無かったんですね

そんなあっちもこっちも歪んだ世界で、
過信と妄想に走るカリガリいう狂った博士と
ロボットのように何の意思も無く操られる眠り男の
残忍きわまりない物語だった

けれども
これがドイツの全体主義に対する
危険な思想を持っているいうことで、
ちょっと待った言うて、
プロデューサーが勝手に冒頭とラストを作り変えたのね

ところが、
この後からくっつけた部分が
ストーリーそのものを、ただの怪奇話では無い
幻想に満ちた恐ろしい風刺劇に仕立てたんですね

今でも、何かのお手本みたいに大事にされる
もうひとつの理由
それがこれですね。
妙なひねり方をした物語になってしまったけれども
それがかえって、いろんな論議を呼んで
「カリガリ博士」いう映画を伝説にしたんですね

何が起こるかわからんなぁ
いかにも、手作りの映画らしい逸話ですけれども
おもしろうございますね
はい、もう時間きました。

それでは次の作品、ご紹介いたしましょ
次回は、カルトホラーの中でも異彩を放つ危険な作品
『地獄のモーテル』ですね
どうぞ、たのしみにお待ち下さいね
それでは
次回もこの時間、お会いいたしましょう
それでは、
サイナラ、サイナラ、サイナラ
★★★★
採点基準:★…5個が最高位でマーキングしています。★…は★の1/2です。
































































































