『はがない』7巻ようやく読み終わりました。
●僕は友達が少ない 第7巻 通常版
●発売日:2011年9月22日
●価格:580円(税別)
僕は友達が少ない ・・・メディアファクトリーによる公式ホームページ
通常版の表紙は星奈!
おいおい、シャツが大胆にはだけちゃってるぞぉぉおおおおおおお!
なんというか今にも胸がこぼれてきちゃいそうですね・・・(///∇//)ハァハァ
さすが肉だな!これが圧倒的なボリュームってやつなのか!?wwww
先日UPした特装版の感想記事 ではアニメ第0話についていろいろと語らせていただきました。
で、今日の記事ではいよいよ原作ラノベ7巻の中身についてレビューを書いて行きたいなと思います。7巻のストーリーを思いっきりネタバレしちゃてるので未読の方はご注意ください!
・・・さて、この第7巻はアニメ開始直前という最高に盛り上がる時期に刊行された記念すべき巻ということで、作者の平坂先生もかなり気合いを入れて執筆なさったのではないかと思います。
読後に一番強く感じたことは、この巻は『はがない』にとって非常に大きなターニングポイントになったと言えるだろうなということです。
あらすじにも書いてある通り、確かに物語は佳境を迎えつつあるのかなと。
学園祭前という気分が高揚するシチュエーションにも関わらず、普段の下品なネタやオタクっぽいネタは控えめになっており、あまり『はがない』らしくないシリアス度高めな空気が全体に漂っているんですよね。そしてそんなやや重たい雰囲気の中、ついに禁断の言葉をとある部員が口にします。
おそらく、ここから小鷹たちの物語は大きく動き出して行くのではないでしょうか。ついに歯車がガチャリと音を立てて回り始めた・・・そんな印象です。
本当に、この巻はすごいです。驚かされました。終始ドキドキさせられながら読みました。それもいつものギャグの面白さとか萌えに対するドキドキではなくて、ストーリーに魅せられたときに感じるドキドキです。ちょっと『はがない』に対する認識を改めないといけないですね。
それでは以下、具体的な考察に移って行きたいと思います。
-------------------------------------------------------
■言ってはいけないお約束
この『はがない』という物語にはある一つの言ってはいけないお約束がありました。禁忌がありました。
それは、改めて指摘するまでもなく、「隣人部の部員達ってもう完全に友達同士だよな」ということです。
いろいろ迷走しつつも一歩一歩前に進んでいる小鷹たちを見て、私たち読者は「何が『友達が少ない』だ。君たちみたいな関係を友達と言わずにいったい何を友達と言うんだよ。隣人部の7人はどこからどう見てももう立派な友達同士じゃないか。友達いっぱいじゃないか!」と心の中で盛大にツッコミを入れるわけです。
しかしその一方で、当の隣人部の面々は自分たちが友達同士になっているとは思っていない。というか気付いていないんですよね。そして、「将来友達ができたときに備えて」と称していつも怪しい活動を企てては残念過ぎる方向へと転がって行ってしまいます。
読者から見れば隣人部の7人はすでに完璧な友達関係になっているのに、本人たちにはその自覚がない――。
読者と隣人部の間にあるこうした認識の相違というか、ギャップというか、そういう“噛み合わなさ”が何ともシュールで面白く、それと同時に「隣人部のメンバーは友達同士」ということに敢えて言及しないことこそがこの作品の肝であり正義でありそしてお約束でもあったわけです。
まぁ奇妙な繋がりを持った7人だけど本人たちが楽しいならそれで良いんじゃね?
今のまま、ゆるく繋がったままでも良いんじゃね?
友達かどうかなんて別に今さら確認しなくても良いんじゃね?
・・・物語が進むにつれて私たち読者はきっとそんな気持ちを強めつつあったのではないかと思います。そしてそれはそのまま主人公・小鷹の気持ちの代弁でもあったのではないでしょうか。
変化のない温室の中で7人が仲良く戯れていられればそれで良い。お約束はお約束のまま、ずっと触れずにいたって構わないじゃないか。だって、今のままが心地良いのだから――。
しかし、それをよしとしない人物がいました。
一向に動こうとしない小鷹を、よしとしない人物がいました。
お約束をそのまま放置しておくことを、よしとしない人物がいました。
それが、志熊理科だ。
■本当はもう気づいていたこと
理科はもうとっくに気付いていたんですよね。
隣人部の7人はすでに友達になっているんだということを。そして、「隣人部は友達同士」という現実を直視することから誰もが逃げているんだということを。
そう、「友達同士という自覚がない」というのは最早過去の話。
出会ったばかりの頃は確かに到底友達だなんて言えるような関係ではなかったと思いますし、実際お互いに友達だとも全く思っていなかったはずです。
けれど、少なくともこの第7巻、学園祭を目前に控えた今となっては、7人の関係はどう言い訳しても友達と呼ぶべきものにまで成長していました。そして、当然その自覚も彼らの心の内には多少の差こそあれど芽生えていたはずです。
あの夜空ですら自分の殻に閉じこもることを止めて、今を前を向いて歩いて行くことを決断しました。タカとの楽しかった思い出よりも、小鷹そして隣人部のメンバーたちと一緒に過ごす今の方こそが大切なんだという結論を出しました。(『彼女の答え』というエピソードを参照。)
執拗にタカとの過去に拘り続けて来た夜空の目を覚まさせる程にまで、隣人部という繋がりは今の7人にとってとても深い、かけがえのないものになっていたのです。
これは一見素晴らしいことのように思えます。
ある意味、友達作りを目的として作られた隣人部の目標が達成された状態にあると言えるでしょう。ついに彼らは本当の友達を手に入れたのです。一人ぼっちではなくなったのです。
しかし、少し考えればそれを手放しで喜べないということがすぐに分かります。それどころか、隣人部が置かれた現在の状況は非常に危機的なものであると痛感させられます。
なぜか。
答えは簡単です。
夜空たちが小鷹に対して友情とは違う「特別な感情」を抱いてしまっているからです。
彼女たちの小鷹への感情は友情ではなく恋愛感情。これこそが途方もなく大きな問題なのだ。
■禁忌に触れた理科
いつしか友達と呼べる関係になっていた隣人部の7人。
しかしそれと同時に、小鷹は女子4人(夜空、星奈、理科、幸村)から好意を寄せられる対象にもなっていました。
初めからずっと小鷹を強く想い続けて来た夜空と、第1巻のプール回のあたりから小鷹を徐々に意識し始めたと思われる星奈。
この古株なツートップヒロインのみならず、当初は冗談半分に小鷹を誘惑しているだけのようにも見えた理科や、男の娘だと誤解されていた幸村までもが、今では小鷹を本心から好きになっている状態です。理科と幸村という後輩組を単なるネタキャラという枠に最早収めることはできません。夜空や星奈と肩を並べられるほど、この二人の小鷹への想いは真剣なものへと変わりました。
(理科に関してはやはり4巻でメガネを外し髪型を変えた辺りが一つの転換点になっているのではないでしょうか。他方、幸村に関してはまだまだ決定的な描写やエピソードが足りていないような気もしますが、これまでの数々の言動を鑑みるに小鷹を異性として好きになりつつあるというのは疑いようのない事実だと思います。)
そして、女子4人の小鷹への恋愛感情は日増しに膨れ上がり、彼女たちは直接的なものから間接的なものまで様々なアプローチを小鷹に仕掛けて行くというわけです。勉強会、買い物、映画館でのデートetc・・・。
しかし、積極的な女子4人とは対照的に当の小鷹は動かないままです。というか、彼女たちのアタックを真に受けようとせず受け流し、それどころか「友達一人もいないようなつまんないヤツに、彼女なんてできないだろ」などと勝手に決めつけ、意識的にも無意識的にも現状維持に努めようとしています。(その理由については後述。)
そんな小鷹の姿勢に振り回され、彼女たちは今までどのような気持ちにさせられて来たのでしょうか。きっと呆れたでしょうし、苛立ちも感じて来ただろうと思います。
けれど、あえて小鷹を強く問いただそうとはしなかった。というか、やはり彼女たちとしても例のお約束に立ち入ってまで自分たちの関係を先に進めてしまおうとは思わなかったわけです。
でも、隣人部の中で誰よりも聡く人の感情の機微を読めてしまう理科は、耐えることができずについに立ち入ってしまいました。皆が多かれ少なかれ気付いていた、けれども気付かないふりをしていた禁断の領域に、とうとう足を踏み入れる覚悟を決めたのです。
小鷹を、そして隣人部を、前進させるために。誰かが言わなければいけない。その役を買って出たのが、理科だ。
「もうそろそろ、先に進んでもいいんじゃないかな? だって――」 (7巻252頁)
「だって理科たちは、もう友達じゃないですか」 (7巻11頁)
理科たちは、もう友達。
いい加減、最低限これくらいは認めなければいけない時期が来ているんじゃないの?
いつまでもこの曖昧な関係のまま付きあっていれば、いずれすべてが破綻するときがやって来てしまうから――。
そう、先に進まない限り、変化を受け入れない限り、隣人部は崩壊してしまうかもしれないのです。
今のあやふやな関係を維持し続けるのには、もう限界が来ているのです。
なぜなら、夜空は言うまでもなく星奈や理科や幸村の心の中でも小鷹を想う気持ちが本当に強いものになりつつあるからです。彼に真剣に恋心を抱きつつあるからです。
このままお互いの関係をハッキリさせずに惰性でさらに仲を深めて行くことになってしまえば、いずれ取り返しのつかないことになってしまう。
小鷹への想いが大きければ大きいものになってしまうほど、最終的に彼に選ばれなかった3人はそれだけ心に深い傷を負うことになってしまう。
いや、選ばれた一人だって素直に幸せな気分にはなれないでしょう。
そういう残酷な未来を迎えることになるか、それとも回避することができるか、今がその瀬戸際。
これ以上現状に目を背け知らんぷりを続ければ、きっと最悪のシナリオが待っている。愛憎が入り乱れ、隣人部の面々は友達ですらなくなってしまうかもしれない。
女子4人の小鷹への想いが諦めきれないほど強いものになってしまう前に、彼は選択しなければいけないんだ。誰が友達で誰が恋人なのかを・・・!
だから理科は、言いました。小鷹を、自分たちを、先に進める一言を言いました。
変化を受け入れるのは怖い。けれども、もう逃げていられない切迫した状況になりつつある。だから、前に進もう。ハッキリさせよう――。
決意を固めた理科の視線は、隣人部が大切であるからこそ、どこまでも鋭く厳しい。
■動きたくない小鷹
さて、理科によってお約束をぶち壊され、現実をまざまざと意識せざるを得ない状況に追いやられた小鷹ですが、彼はそれでも尚動き出すことに躊躇いを感じています。
彼にとって7人で過ごす今の隣人部の残念な日常はとても心地よく、そのぬるま湯にいつまでも浸っていたいからです。
もちろん理科に指摘されるまでもなく彼はとっくに「隣人部は友達同士」ということに気付いていました。
というか、そのことを一番よく理解していたのがおそらく理科と小鷹だったのだろうと思います。この二人は隣人部のメンバーの中では実はかなり真っ当な感性を持ち合わせており、物事を常識的に捉えることができるからです。(理科は表面上だけ見ればダントツで壊れているけれど、それはあくまで彼女の仮の姿。)
しかし、自分たちが友達であるということを認め、その上でさらに先に進む選択をしてしまえば、今のこの絶妙なバランスの上で成り立った隣人部の関係は変化することを余儀なくされてしまいます。小鷹にとっては今が最も理想的な状態であり、誰かと恋人関係になるなんてもっての外なのです。
(また、彼女たちに対する自分自身の気持ちが恋愛感情と呼べるものにまで発展しているのかよく分からないという本音も当然あると思います。)
だから気付かないふりをし、動かなかった。いつの間にか鈍感なふりをしていた。
小鷹の気持ちは男性読者にとっては痛いほどよく分かるのではないでしょうか。
たくさんの可愛い女の子たちと適度な距離感を保ちながら付き合えている。誰からも一切嫌われることなく、それでいて誰とでもある程度親しく接することができる絶妙な距離。・・・正直、これはかなり魅力的です。手放したくない、壊したくないというのも分かります。
しかし、小鷹はもう変化を受け入れなければならないときを迎えているのです。
いつまでもこの中途半端な関係を維持し続ければ、やがてみんなが傷つくことになるし、それどころか下手をすれば何もかもが崩れ去って行ってしまうかもしれません。
誰か一人を選択するということはすなわち、全員でハッピーエンドを迎えるのを放棄するということだ。しかし、このまま誰も選択せずに惰性で進み続けるということだけは、絶対にあってはいけない。
だから小鷹は覚悟を決め、動かないといけない。決着をつけることができるのは小鷹だけだ。
-------------------------------------------------------
・・・というわけで、ざっと7巻の考察的なものを書いてみました。いかがでしたか?
いやしかし、『はがない』は単なるギャグ作品から順調に友情・恋愛・青春モノ作品へと進化しつつありますね。
正直に言って、最初の3巻くらいまでを読んでいたころは「勢いだけで乗り切っているあまり深みの無い退屈な作品だな」と心のどこかで思っている部分があったのですが、最近の巻になればなるほど繊細な心理描写に磨きがかかり、ストーリーにも重厚さが増して来ているような気がします。
今ではすっかり小鷹たちの迷走する青春物語に心を奪われ、7人の関係はこれからどうなってしまうんだろうかとドキドキさせられながら読んでいる状態ですよ。
そして、友達とか恋人って何なんだろなと改めて考えさせられたりもしました。・・・うん、やられましたね。『はがない』は濃いです、深いです・・・!
ただ私とは逆に、初期~中期の比較的軽いノリの頃の方が好きだった人も少なくないかもしれませんね。特にこの第7巻は今までの中で段違いにシリアスなので拒絶反応が出た方ももしかしたらいたかもしれません。
一度シリアスな方向に流れると昔のような軽いギャグテイストに戻りにくいということは他作品においても往々にしてあるので、いかにギャグとシリアスのバランスを取って行くかが今後の課題になるのではないかと感じました。
・・・とか言いつつ、『はがない』にはあくまで下品さやバカバカしさを前面に押し出して行って欲しいなと個人的には思ったりもします。やっぱり彼らがギャーギャー騒いでるところを見るのは楽しいですし!ww
※関連記事