補助席というのは、どの国でもどんな乗り物でも座り心地が悪いもんだ。

しかも、通路の補助席だったので、車内販売の車が通るたびに腰を上げなければならなかった。


この補助席、腰を上げるたびにすごい勢いで座席が上がる。

しかも座席自体に重量感があるので、いちいち「バタン」という大きな音が鳴った。

立ったり座ったりを何度か繰り返しているうちに、指を挟んでしまった。

挟んでしまった薬指は、見る見るうちに紫色に変わっていく。

イタリアの地下鉄の扉も、この補助席も勢いがよすぎて危険だ。

なんでもっとソフトにできないかなー??



通路は先程までいたボックスに比べて居心地が悪い。

ここに長時間座っていてもいいんだろうか?

先程までは歓迎されていたが、ボックスを出れば周囲の視線にさらされる。

肌の色が違う自分が他人の目にどう映っているかが気になった。


そのうちに、隣のボックスの人たちがこちらを見て何か相談していることに気が付く。

視線が合うと、一人の老婆がゆっくりとこちらに歩み寄ってきた。

その土地にはその土地のマナーがある。

自分では気付かない間になにかマナーに違反している可能性もある。

老婆が何か言ってきたら言うとおりにしよう・・・そう思った。



老婆は補助席に座る自分の前で立ち止まると、1つの瓶を差し出し何か言っている。

(なんだろう??)

分からないでいると、後ろからやってきた婦人がジェスチャーで教えてくれた。


瓶を開けてほしいらしい。

勝手に怒られると思っていたので、意味が分からなかった。

なんだ・・・

ほっとして瓶を開けてあげた。

その瞬間、隣のボックスから笑い声と拍手がおこる。

老婆は手をとりながら言った。

「グラーッツィエ!」(ありがとう)

素敵な笑顔だ。

そのやり取りを見て、先程の「マーレ」の老夫婦も目を輝かせて笑っている。


車内の人々は皆、明るくて優しかった。

自分の心配は見当違いのちっぽけなものだったことに気付かされた。

いつの間にか自分のことしか考えられないようになっていたのかもしれない。

国境を越えるその列車に乗っている人々も又、旅を楽しんでいるのに違いないのであった。



つづく・・・

列車は国境を越えてフランスに入った。

そこからは「フレンチリヴィエラ」、「コートダジュール」とよばれる地域だ。

イタリアからフランスへの国境を越えても、同じEUなのでパスポートのチェックなどはない。

気が付けばフランスだった。



フランスに行きたいと思い始めたのはいつだったろうか・・・

一番の憧れはパリだったけど、海岸線に沿ったこの地域にも興味があった。

19世紀、印象派の時代のフランスは、多くの偉大な画家を生んだ。

それは、そこにあった人間関係、芸術運動、万博など、色々な要因があった為であると思う。

しかし、根本となったのはその土地の環境ではないだろうか。

モチーフとなった海辺の街、芸術家が目指した南フランス、その土地には何かがあるはずだ。

偉大な画家達の心を動かした場所の一部でもこの目で見てみたい。

その環境に少しでも身を置いてみたい。

そんな思いで立ち寄ろうと思ったのが、これから向かう「コートダジュール」の都市「ニース」だ。




フランスに入ってすぐのところで、老夫婦の孫娘が降りるらしい。

気が付いたときには出口の辺りで、挨拶もせずに降りていってしまった。

窓からその姿を眺めていると、大きな荷物を3つほど抱えている。

その場所には両親がいるのか、そこでしばらく暮らすのか、詳しい事情はよく分からない。

老夫婦はたいして別れを惜しむでもなく、自分の席で普通に会話を交わしていた。

老夫婦が座っているのとは逆側の窓から1人で彼女の後姿を見ていると、急に気が付いたように彼女が振り返った。

少し照れくさそうに手を振っている。

嫌われてたんじゃなくて良かった!

笑顔で手を振り返した。



列車はまた、走り出した。

世界で二番目に小さい国「モナコ」へも、もうすぐの距離だ。

街中で行なわれるF1グランプリが有名なので、車窓からでもいいので是非街並みを見てみたかった。

しかし!

「モナコ」に近づくにつれて列車は地下へ入っていった。

そして「モナコ・モンテカルロ駅」。

駅はきれいだけど、地下駅だ。

F1の街並みはまるで見ることができなかった。

残念。

次回は下車したい。


「モナコ」を過ぎてしばらくすると、列車はまた地上に出る。

列車の後方に「モナコ」と思われる場所が見えた。

この辺りに来ると街並みの雰囲気が少し違う。

華やかというか、優雅な感じか?

海の青とオレンジの屋根、白い壁が美しい景観をつくっている。

冬なのに季節を感じさせない景色がそこにはあった。




列車の終点、「ニース」に到着した。

一緒のボックスだった老婦人は笑顔で言う。

「あなたと一緒の席でとても楽しい旅ができたわ。どうもありがとう!」

老紳士は例のごとく目を輝かせ笑っている。


お礼を言うのはこっちのほうだ。

旅の間中、常に強い警戒心を持っていたけれど、彼らのおかげでリラックスすることができた。

楽しい列車の旅だった。

 

ちょっと目頭が熱くなった。

精一杯の感謝の気持ちを伝えたいけど、言葉が見つからない。

この親切なイタリア人夫婦に対して、何かイタリア語で言いたいと思った。


考えているうちに老人のほうが先に口を開いた。

「チャーオ!チャーオ!」

笑っている。


初めて会った目上の人に使う言葉じゃないかもしれないけど、あえて使わせてもらった。

「チャオ!グラッツェ!」

チャオは親しい友人に使う、「こんにちは」や「さようなら」の挨拶の言葉。

気持ちが伝わる、あったかい言葉だと思う。

老夫婦は「チャオ」を繰り返してその場を去っていった。



そして、いよいよ「ニース」の街へ・・・

しかし、そこには予想以上の困難が待ち受けていたのであった。



ニース一人旅 につづく・・・


ワイン11月の第3木曜日はボジョレー・ヌーボー解禁!

今年もそろそろボジョレー・ヌーボーの解禁日ということで、街で広告ポスターなどを見かけます。

今回はボジョレー・ヌーボーの解禁にあわせてフランスワインのお話です。


ワインはまだまだ勉強中で中途半端な知識しかないのですが、「庶民派ヨーロッパブログ」らしく1000円札一枚で買えるフランスワインの選び方というテーマで考えてみました!

「無造作に並べられたワインの中から何を選んでいいかわからない。」

そんなマダム&ムッシューがフランスワインを選ぶ手段の1つとして参考にしていただけたらと思い企画致しました。

ワインにお詳しい方は「是非!」スルーしてください(笑)




一般的に良いものとされているワインを高確率で選ぶ方法は簡単です。

値段の高いのを買ったら良いです。

コストに対する十分な見返りが得られるかどうかはわかりませんが、良いものを飲むことができるのではないでしょうか。

ただし、高価なワインは長期の熟成を要するものが多く、購入してすぐに飲んでも美味しいとは感じないかもしれません。


また、上質なワインの味わいのすべてを理解する為にはそれなりの経験が必要であると考えられます。

裏を返すとワイン初心者であれば安価なワインでも経験を積むことができますし、美味しく飲むことができるのではないかと思います。

まして、日常的に飲むワインであれば、そんなに高価なものばかりを飲むわけにはいきません。

まずは1000円くらいのワインでフランスワインに親しむことから始めたいところです。




フランス、ボルドー地方のメドック地区には1級から5級までの格付けがあります。

この格付けなどは選択する際の1つの目安になり、ワインを選びやすくしてくれます。

しかし、格付けされているワインはとても1000円では購入できません。

ある程度高級なワインであれば多少の情報を得ることができるかもしれませんが、1000円クラスのワインの情報源は店頭で得る他ないと考えたほうが良いでしょう。



店頭で得られる情報として一番役に立つと思われるのは、ポップなどの説明書きやボトルの裏に貼ってある輸入業者の日本語の説明。

そこには味わいの目安が書いてあったり、そのワインに合う料理が書いてあったりします。

その中で「フルボディ」、「ミディアムボディ」、「ライトボディ」という表記があるものがありますが、「フルボディ」は濃い、「ライトボディ」は薄い、「ミディアムボディ」はその中間というような意味です。

ワインの初心者には「ライトボディ」が飲みやすいとされていて、「ボジョレー・ヌーボー」も、「ライトボディ」に分類されます。



店頭のポップや日本語のラベルなどから必要な情報を入手できればいいのですが、そこに何も書かれていない場合はフランス語で書かれたラベルから情報を得ることになります。

前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。(笑)

フランスのワインは法律により品質を等級分けして、4つのランクに分類しています。

法律で定められた基準によっての分類なので、一概に一番上のランクのものが良いとは言えませんが、それぞれのランクについて簡単に説明します。


1、AOC (アペラシオン・ドリジーヌ・コントローレ) ・・・厳しい条件をクリアした最高格付けのワイン。

2、AOVDQS (アペラシオン・ドリジーヌ・ヴァン・デリミテ・ド・カリテ・シュペリュール) ・・・特定の産地で造られ、一定の基準を満たしたもの。

3、Vins de Pays (ヴァン・ド・ペイ) ・・・生産地が限定された日常消費用ワイン。

4、Vins de Table(ヴァン・ド・ターブル) ・・・産地や収穫年の異なるぶどうやワインをブレンドしたワイン。



1000円くらいでスーパーに並べられているものの中にはAOCもVin de Tableもあります。

今回のテーマである「1000円で飲める日常消費用のワイン」という観点から言えばどのランクの物でも良いのですが、他に選択する条件がなければ最高格付けのAOCを選びたいところです。


AOCの基準を満たしたワインのラベルには 「Appellation [産地名] Controlee」 (rの次のoの上に「^」、lの次のeの上に「´」が付きます。以降省略します。)の表記があります。

例えばボルドー地方のワインであれば 「Appellation Bordeaux Controlee」 といった具合です。

産地名の部分には地方単位から畑の名前まで、様々な単位での表記がされています。

基本的に産地名の記載部分が細かければ細かいほど上級なワインになります。


わかり易くするために新潟産のお米に例えて言うと・・・

「Appellation 新潟 Controlee 」よりも「Appellation 中越 Controlee」、さらに「Appellation 魚沼 Controlee」のほうが上級という具合です。

1000円で買えるワインとなると、ここでいう新潟(実際は中部くらい?)に値する、ボルドーやコート・デュ・ローヌ、ラングドックなどの地方名の物になると思います。

(一本あたり1000円位でボルドーのメドックやグラーヴのワインが買えるサイトもありますが、リンク許可をもらってないので知りたい人はプチメください。)




なんか気が付いたらいつもの記事と比べるとすごく長くなってますが、要は1000円でAOCのワインを買おうというだけのことであります。

それに加え、コンクール受賞なんかも選ぶ目安になるんじゃないでしょうか。

フランスにはいくつかのワインコンクールがありますが、金、銀、銅のメダルを獲得したワインはメダルのシールが貼ってあったり、ラベルの下のほうにメダルの記載があったりするのですぐわかると思います。


あと、とっておき(?)の方法としましては、瓶の底のくぼみを見るという方法があります。

ワインの瓶の底がくぼんでいるのは澱(オリ)を集めやすくする為です。

澱が溜まるのは濃厚なワインに多くみられる傾向です。

濃厚であってもくぼみがないワインはあるかもしれませんが、くぼみが深いものは濃厚で良質と考えるのも1つの目安になると思います。


あとはビンテージや葡萄の品種などいろんな選択基準があると思いますが、詳しくわかるサイトがいっぱいあると思うので割愛しますね。




先日テレビで観たのですが、最近はいわゆる「ニューワールド」と呼ばれる地域のワインの人気が高まりフランスのワイン畑が縮小傾向にあるそうです。

フランスワインの魅力は、その多彩性にあると思いますので、畑が減っていくのは残念です。

例えばチリのワインなどはコストパフォーマンスが高い(安い)と言われますが、日本でワインを買うとどの国のワインでも安くてもだいたい1000円くらいかかりますよね。

安くて美味しいという点で、日本で売られているチリのワインはどれも安心して買えると思います。

ただ、フランスのワインも同じくらいの値段でも手に入ります。

「1000円で美味しいフランスワイン」

それを探すことがフランスワインの多彩性を守ることにつながると良いですね!

お気に入りのものが見つかったら是非教えてくださいね^^





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