六代目円楽追善興行 | 酒と散歩の日々                                               

 撮って出しである。昨日もちょっとそれらしいことを匂わせたが、落語を聞くのが好きである。

 両国にある「お江戸両国亭」で毎月の前半興行がおこなわれている「両国寄席」に久しぶりでいってきた。両国での呑み喰いなど、他のことはまた後日(こうやって、ブログの時間進行が実時間とずれていく・・・)

調べてみると、前回いったのが2020年。すなわち、コロナ禍が始まったばかりの頃である。

 

 

 この寄席は、都内にある定席の寄席に出演することのできない「五代目円楽一門会」が開いている。

この五代目の三遊亭 圓楽師匠(あえて文字をこちらで)は、「笑点」の司会もされていた方でいまさら説明もいらないだろう。その名を継いだのが、同じく笑点で活躍をされていた三遊亭 楽太郎師。六代目を継いだのが、2010年のことであった。

 六代目が「笑点」に登場したのは、調べてみると1977年のこと。まだ二ツ目であったが、当時としては珍しい大学出の噺家。そのせいか、回答もちょっとウィットに富んだ知的なものだった。

 後に、「腹黒キャラ」を確立していったが、これは意図してものであったという。

 その六代目がなくなったのは、昨年の9月の末。噺家としてはまだ脂ののっているはずの72歳であった。数年前から、六代目は落語芸術協会へも所属(訳あって円楽一門は、落語協会から分離独立し、そのせいで寄席定席へ出演ができなかったのだ)し、寄席にも顔付けされるようになった。これには故桂 歌丸師の尽力もあったそうで、分裂状態の落語界を統合していく第一歩であったと推測される。

 

 若き日の(私も若かったよね)楽太郎さんが割と好みだったこともあり、両国亭の2月の番組をみて、これは聴きにいかなければと思った。

 「六代目三遊亭円楽追善興行~生誕月に十八番噺と思い出話」。一門の師匠たちが日替わりで、六代目が得意としていた噺でもって トリをとるのである。

 

 

 開場の17時30分。直前に着くと、珍しく入り口の前に行列ができていた 5人(!)私が6人目。

ここの一番太鼓は、こうやって外に持ち出してたたかれるのである。ぶれちゃったが、前座さん寒そう。

 

 

 開演の少し前。おいおい、客はこんだけ?私の後に続いてはいったのは、たぶんこの時点で1人。出演者は(前座を除くと)8人。客の方が多い?

 

 開口一番は、愛二郎さん。この日の主任(トリをとる噺家さん)の愛楽師匠のお弟子さんである。家に帰って調べてみたら、御子息でもあった。演じたのは、「垂乳根(たらちね)」。上手くはないが、前座さんらしく元気が取り柄の舞台。

 全部書いていくと長くなるから・・・この日演じられたのは、すべて古典だった。新作もいいけど、やはり古典の方が好み。

 仲入り後、お待ちかねの「六代目思い出話」。仲入り前の好一郎師匠が、司会をする栄楽師匠が張り切っていて7名を高座にあげるといってるけど、乗りきりますかねと笑わせていた。

 さて、幕が開いて登場したのはその栄楽師匠 楽大師匠 好一郎師匠 前座の楽太さん。

楽太さんは、六代目の最後のお弟子さん。高校生の時に手紙を書いて、六代目に入門を直訴したそうだ。

 その楽太さんへ、栄楽師匠が話を振る。

 こんな思い出話。まだ入門前の2019年 国立演芸場8月中席。六代目は脳腫瘍を患って、病院から高座に通っていたそうだ。その時、やはり十八番の噺を演じる予定だったけども、そんな状態だったから「死神」はやりたくねぇと。で、客席からリクエストを募ったそうだ。その時、(後の楽太になる少年が)「短命」とリクエストして、場内は大爆笑だったそうだ。

 ただし、この話にはちゃんと結末がある。「短命」という噺のサゲは、「あ、俺は長生きだ」となるのである。

 故人について、それを偲ぶのに笑いに変える。噺家さんたちの何よりの追善である。

 で、栄楽師匠。自分自身の思い出話として、前座時代に笑点に出演する圓楽師匠のかばん持ちとしてついていった。収録が終わって、蕎麦を喰おうと皆で蕎麦屋へ。前座たちがみな「もり」と頼むところを一人だけ「天ぷらうどん」とやって、皆が喰い終わっても自分のだけ出てこない。後日、師匠にお目玉を喰らった話。いやいや、それは五代目の思い出ですから(と、心の中でつっこんだ)。ちなみに、六代目は「圓楽」の文字を使っていない。その名を大きくしたのは、自分の師匠である五代目だったからとされている。

 

 

 そんなこんなで、「思い出話」で押しに押した。楽大師匠なんて、そのせいで出番は5分でといわれて・・・根多帳には「お知らせ」とか書かれているし・・・ お気の毒に・・・

 トリは、先ほども書いたとおり 愛楽師匠。「ねずみ」は、左甚五郎ものの1つ。笑いもたっぷりの人情ものだ。六代目だったら、どんな口跡だっただろうと想いを馳せながら、熱演を聴かせていただいた。

 

 

 

 寄席が終わって、両国亭を出る。写真を撮る前に、そっと手を合わせた。