詩集『ふる里』 | 喫茶店の書斎から

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コーヒーカップの耳

昨日のこと、「ピンポ~ン」と玄関チャイムが鳴り、出てみると郵便屋さん。

「郵便受けに入りませんでしたので」と手渡されたのがこの詩集。

手前の小さな詩集はわたしが一昨年に出した『恒子抄』です。

『ふる里』(金春康之著・編集工房ノア刊・2500円+税)。2025年7月8日発行。

『ふる里』はA4変形の大きさがあってわたしの家庭用プリンターではスキャンできません。

著者の金春(こんぱる)康之という人。わたしには全く未知の人です。わたしとのつながりも分かりません。

多分、ノアの社主涸沢さんの配慮によるものでしょう。ありがとうございます。

 

読ませていただきました。

やさしい言葉で書かれていて、読むのが心地よいです。

金春さんの人生のすそ野のような詩。伸びやかに広がってゆくような言葉の連なり。

巻頭の「音」です。

余白が必要なのですね。だからこの大きさの本。

全部読ませていただきましたが、一篇一篇、す~と読めながら、なにか心の中に懐かしい風景が残るような。

金春さんは1950年生まれとのこと。わたしより少し年下ですが、精神的にはずっと熟成されているような気がします。

なぜか老境という言葉は使いたくない、でも人生の達人、そんな感じがする詩です。

全体的には哲学的なのでしょうが、詩にはそんな硬い言葉は出てきません。

すらすらと読めて、なにか心地よいものが胸の内に降り積もるような、不思議な感覚になります。

わたしなんぞがチマチマと書いている詩がなんだかみすぼらしく見えてしまいます。

大きな空の中、あるいは柔らかな山の裾野に包まれるような、そんな気持ちにさせられました。

もう一度、ゆっくりと読んでみよう。

 

  追記

   先に上げた金春さんの「音」という詩ですが、拙詩集『喫茶・輪』(2011年刊)に載せている短詩「蛇口」を思い起こしました。

    「蛇口」

    深夜

    水滴の音が

    ひとり ひとり

    と聞える。

 

 

 
imamuraさんの本。 『完本・コーヒーカップの耳』面白うてやがて哀しき喫茶店。
 
          『触媒のうた』楽しい文学史秘話が満載。