わたしは長年、主に生活詩を書いてきた。
しかし出した詩集は、そうではなかった。
無数の生活詩は本にはなっていない。
しかしこんなのがある。
「つきひ」と題した手づくり詩集である。
ボールペンでの直筆である。
読みだしたら面白い。
最初の一篇。
「今日が終わって」
夕刻より妻は公民館へ出かけている
二人の子どもは もう二階へ上がって寝ている
衣服が脱いだままの姿で散らかっている
冷蔵庫がかすかに地虫のような声を立てている
ストーブにかけられたやかんが
ちんちんと
独り言をつぶやいている
その上に吊るされた日めくりごよみが
かさかさとささやいている
時おり明日の日付が顔を出す。
(1981年1月)
ちっとも気取ってなくて、初心者にしてはよく書けているような。
これに載っている最も新しい一篇。
「恒子」
季代がいなくなって
淋しがっていると
「わたしがおってもあかんの?」
と言う
何を言うか!
「もしもお前までが
おらんようになったら
俺は生きとれん」
と言うと 大笑いする
笑いごとではないのに
ホント。
(2004年11月)
読んでいたら、過ごしてきた家族の月日が面白く、止められない。
因みに「つきひ」は一字一字が家族四人の名前の頭文字。四人なのに三字というのは、二人が同じだから。