スルスルとハナ水が垂れる、節々が痛む、これらは風邪の前兆である。年に何回かあるのですぐわかる。しかしまだ動けないほどには悪化してない。早めのパブロンとか葛根湯とか言うが、何をしようと症状がいったん出始めたところから、引っ込んで治ったことがあまりない。どうせ寝込むならばとギリギリまで働き、それからゆっくりと寝込むことを決めた。
翌日、目覚めると熱が出て病人そのものだったので、近所のお爺さん先生に診てもらった。インフルエンザ検査は陰性。抗生物質と症状緩和剤などを出してもらい、解熱しなければまた来なさいといつもの感じで言われる。良く晴れた土曜の午後だった。
タイミングが良いのか悪いのか分からないが、ちょうど「マインドコントロール2」という本を読んでおり、その中で、現代医療の落とし穴というような形で、さまざまな西洋医学の問題点や限界点が示されていた。西洋医学では風邪も癌も、現象に対してアクションする「対処療法」でしかなく、根本治療にならず、むしろ免疫力を衰えさせて人間を弱体化してしまう、などの指摘があった。では何が良いのか。人間の自然治癒力、免疫力でバランスをとり回復させるホリスティック医療であると。熱は害なるモノを滅殺する必要がある時、適切に上がるのだ。ありがたい反応であり、咳鼻水も有害物質の外部への排出だ。いちいちの症状を抑えてしまっては逆効果だという話。
これらの話に弱冠かぶれながら、今回はひとつ出された薬を飲まずに治してやろうと布団の中で息巻いた。しかし自分の治癒力を試すこのような計画は、元気な人のみが言えるタワゴトであると一日足らずでわかった。一枚二枚と身体も心も膜の中に閉じ込められていく感覚に、結局、暖かくして寝るしかないのだが、苦しくて容易に眠れず、寒い、寒い、とのたうちまわること半日。風邪薬の副作用的についてくる眠気も病人には案外重要な効力なのだとわかる。せっかくの薬には手をつけず、ボーとしながら体温を計ってみると39・6℃という数字が出た。「40℃で廃人」という都市伝説を思い出し怯える。パジャマに貼ったカイロに触れたのかもと、改めて口で計ると先の体温は間違っていない。すぐに全種類の薬を飲んで横たわった。自分の免疫力がどうのというより、とにかく熱がツラい!これに尽きる。
後で気づいたのだが、私のインフルエンザ陰性の結果をツイートすると、ありがたいことに何人かの方から「初期のインフルエンザは検査をスルーするので再検査を受けられよ」との真面目なレスポンスが入っていた。確かにお爺さん先生も「二日後にまだ熱が高ければ再来院を」と言っていたが、嗚呼まさにビンゴと思った時はインフルエンザ特効薬が効く発症からのタイムリミットをとっくにオーバーしていた。なんなんだろうか、この不都合なエアポケットのタイミングは。
調べてみると確かに、初期状態におけるインフルエンザ検査の不確かさがあちこちで書かれている。しかし、だからといって毎日検査に行くわけにいかないだろう。この不都合な方程式を解くと、発熱からの時間数で確実にインフルエンザ検査の結果が正しく出て、尚且つ特効薬に投与に間に合う時間。その時間帯に検査~投与を済ませる必要があるということだ。これを知らなければ多く私と同じ運命だろう。偶然にもちょうど身体に菌がまわり尚且つ発症から48時間経っていない人だけがタミフルなどの特効薬で救われる。最近は国産のナイビルという薬もあるらしい。