クイックルワイパーにまつわる朧気で奇妙な話 | 社会のマンホール

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コーヒーカラー代表 仲山卯月 兼
恵比寿横丁流し パリなかやま
によるブログ

最近、正式なクイックルワイパーを購入した。それまで使用していたのはクイックルワイパーもどきで、ネズミ捕りの粘着ガムがくっついてしまい使用を断念したのだった。

そもそも床のホコリや毛髪を絡めとってくれるこのクイックルワイパー的な掃除道具なのだが、ウォークマンがソニー固有の商品名であるように、クイックルワイパーという名は花王固有の商品名で、いまだ掃除具としての一般名を知らない。床モップとでも呼ぶのだろうか。しかし先がモップにはなっていない。ホコリを吸いつけるワックスを含ませた黄色い布を何と呼ぶか?「ダスキン!」他に呼び方を知らないのと相通ずる。

さて、実際このクイックルワイパー的な道具は100円ショップにも置いてある。以前のものもこれである。ホコリキャッチャー(勝手に命名)を交換していけば100円だろうと柄やヘッドの部分は壊れることなく何年も使えるので特別な不満はなかった。しかし前述のように、粘着式ネズミ捕りに掛かったネズミが暴れまくり、付近にあったこのクイックルワイパーもどきにベタベタをくっつけてしまったのだ。あの手この手で血眼になり綺麗にしようとしたが、ネズミ捕りの説明書の「ついたら絶対とれません」の通り、ベタベタを取り除くことができなかった。結局仕方なしに処分した。

失ってみると意外とフラストレーションを感じるもので、それが身に沁みるのは、掃除機をかけるのは億劫だが、なんとなくリフレッシュしたい、正直そんな時である。そのかわりに、しばらくは四つん這いでコロコロを回したりもしていたのだが、正真正銘のクイックルワイパーを薬局でふと見かけ、ひと思いに購入してみた。

一体、世の中でどれだけの人が正規のクイックルワイパーを使っているのだろうか。値段は確かに廉価品の10倍以上もするのだが、気が利いているというか痒いところに手が届くような工夫がいくつも施してある。底が平面でなくこんもり膨らんで万遍なくゴミが取れるだとか、柄の組み立てが自在で便利であるとか、方向転換、クランクが滑らかであるとか、単純そうに見えるそのボディに所狭しと画期的アイデアを搭載しているのだ。「神は細部に宿る」というよく分からない言葉があるが、この場合「豊かさが細部に滲む」がよりふさわしい。感心しつつ、さっそく本物のクイックルワイパーを満ち足りた気分で試した。

ところで、何が奇妙かと言えば、改めてこのクイックルワイパーについて調べたときのことだ。アマゾンでクイックルワイパーの商品ページを見ると、カスタマーレビューのほとんど(9割以上)が5点満点中1点という最低評価なのである。コメントも辛辣な内容が多く、胸騒ぎがするほどに奇妙である。