シンクロ | くにこ先生のコーヒーブレイク

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通りすがりのあなたに、心に残るお話をひとつ

 タンタラララン、ターンタタタン・・・
 タンタラララン、ターンタタタン・・・

 料理を並んで作りながら、下の娘が私と同時に歌い出した。
 しかも、同じ曲を。突然に。メジャーな曲ではない、クラシック音楽である。

 いやー。きもちわるーい。
 いやー。きもちわるーい。

 同時に顔を見合わせる。
 何故、この曲を思い出したのかさえ不明である。
 変だよねえ。なんでだろ。思考回路が一緒になってんじゃないの、という話になった。

 それにしても、最近、娘とシンクロすることが多い。
 テレビを見ている時、本を読んでいる時、何かを取ろうとしている時。同じ時、同じタイミングで行動や声が一緒になる。

 あっ。
 あっ。
 なんでぇ。
 なんでぇ。

 実は、シンクロするのは歌や行動や声だけではない。

 朝、起きて顔をあわせる。着ている洋服の色が一緒だ。白いセーターに灰色のスカート、黒のカーディーガン。茶色のシャツにベージュのスカート。水色の上着に紺のスカート。組み合わせのパターンが同じなのである。

 変だよ。
 変だよ。何で一緒になるの。

 二人で本屋さんに出かける。書棚を見ていて本を取り出す。

 ほら。
 ほら。

 書棚の上と、下の平積みから同時に取り上げ、お互いに見せあった本はなんと同じ本だ。


 確かに、娘とは一緒にいる時間が長い。仕事を終えて帰宅してから、お夕飯を作り、食事をし、団欒をし、テレビを見、勉強をし、本を読む。ほとんどの時間を一緒に過ごす。個別の部屋は持っているが、いつも居るのはリビングだ。
 主人は団欒の後はすぐに自分の部屋に引きこもってしまう。音楽を聞いたり、好きなテレビを見たり、パソコンに向かったり、自分の世界に入っている。
 娘も勉強で自分の部屋に引きこもるが、私と居る時間は、主人よりも圧倒的に多い。
 生活を共にすること、時間を共有することで、こんな結果が生まれるのだろうか。

 主人と私は違ったタイプである。明らかに理系の頭を持つ主人と、文系の私。ものの感じ方は似ているが、思考のパターンが違う。だから、娘と同じようにシンクロすることはない。息子もどちらかというと、主人に近いのか、やはり行動がシンクロしたことはない

 全く見た目は違うのに、主人や息子と「似ているね。」と言われたことはあるが、行動のシンクロとは別物のようだ。

 娘との共感性が高いのかもしれない。会話でも、「あれ」「そこ」で充分通じるのである。
 食事のときでも、「あれ、おいしかったよねぇ。」といきなり言っても、それが1ヶ月前に訪れたレストランのデザートの「ブリュレ」であることが、一瞬にして理解できる。だから、会話が飛んでしまう。次に「後でセブンに行こう。」という言葉が続くと、「ブリュレがおいしかったから、また食べたいね。後でセブンイレブンに行って、クリーム系のデザートを買ってこよう。」という意味であることがわかるのである。

 こんな会話を聞いていても、主人はさっぱり分からない。

 あたりまえか。


 結婚した上の娘も、よく似ている。
 先日、帰省の折、二人でスーパーに買物に行った。
 買い物かごに同じものが同時に入る。味噌はメーカーまで同じだ。

 あら。
 あら。

 顔を見合わせ、苦笑いである。

 上の娘も、下の娘と同様、会話が飛んでも意味が通じてしまう。
 娘は私と同じ感覚で旦那さんに話しかけ顰蹙をかっていると言う。

 話がちっとも分からん。飛びすぎ。

 その通りである。


 あまりに頻繁にシンクロするので、最近、私も娘も以前ほど驚かなくなった。

 また。
 また。