解糖系 有機化学的に考えてみる  | Coffee of Cusie

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薬剤師ですが、仕事内容は行政です。学生時代は、数学、物理学、化学、生物学に特に興味がありました。

 

 
汚い絵(構造式)ですみません。

これは解糖系の一番はじめのところから、フルクトール 6-リン酸になるまでを書いたものです。

おそらくグルコースからグルコース 6リン酸になる反応はSN2反応だと思います。

ヘキソキナーゼというリン酸化酵素によって、まわりにたくさん存在している『水』に邪魔されることなくこのグルコースのリン酸化反応は行われます。

ここでポイントとなるのはマグネシウムイオンの存在です。

マグネシウムイオンによって、ATPの電荷は4-から2-となり、グルコースの6位の水酸基がATPの末端のリン原子に衝突しやすくしているのです。

マグネシウムがなければ、水酸基の酸素にある2組の非共有電子対は、もろにリン酸の酸素の負電荷と相互作用してしまい、なかなか水酸基の酸素はATPの末端のリンに近づけませんからマグネシウムイオンの貢献は大きい(笑)

このリン酸とマグネシウムとの関係は解糖系は勿論のこと、あらゆる生化学の代謝において重要なキーワードとなります。

医療現場においては、低Mg血症やMgの体内における量の不足はあらゆる代謝系に悪影響を及ぼすということと繋がりますね。

分子レベルでは、グルコースとATPとの反応の例などが有名でしょうか。

続いて、フルクトースへの異性化では、グルタミン酸残基が重要な役割を果たします。

ここでポイントなのは、酵素反応といえども、基本的に有機化学の反応となんの違いもないということです。

酵素は、反応しやすいように場所を提供し、分子同士の向きを最適にしてあげ、場合によっては補酵素や補因子と協力して、より円滑に有機反応が進行するようにしているのです。

酵素だからといって「有機化学や無機化学、物理化学の範囲を飛び越えて、何かすごく特別なことをしている」、そんなわけはないということです。

基本的には有機化学の基本的な反応ばかりなので、酵素反応のほうが高級の有機合成を理解するよりも簡単だと思います。