注射剤 | Coffee of Cusie

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薬剤師ですが、仕事内容は行政です。学生時代は、数学、物理学、化学、生物学に特に興味がありました。

病院実習が始まって、はやいことに、あと少しで1ヶ月が経とうとしている。

薬局と病院の大きな違いを一つ挙げるとするならば、それは注射剤だ。

糖尿病の治療剤として使われるインスリン製剤やGLP-1アナログ製剤など、患者さんご自身による『自己注射』が認められている注射剤に関しては、扱っている薬局さんも少なくないだろうが、医師や看護師に打ってもらう必要のある注射剤の方が自己注射可能なそれよりも圧倒的に種類・数が多く、これを扱っている薬局はまだまだ少数派だろう。(患者さんのご自宅で医療を行う在宅医療に活動を広げている薬局が増えてきているが、薬局内で例えば抗がん剤の混注を行っているところは多くはない。)

病院で実習をする中で多くの注射剤を調剤した。

その中で感じたことは、多くの注射剤は、患者さんに投与される段階では、薬が溶けている水溶液であるということだ。

つまり化学的・物理化学的な変化を考える必要があるということだ。

配合変化と呼ばれる現象が特に重要で、ある薬剤と別の薬剤を一緒に混ざることが可能なものとそうでないものがある。

混ぜないのが理想的なのかもしれないが、患者さんにたくさんの管をつけることは、倫理的にも、精神的にも、疾病の回復を考える上でもデメリットしかない。

つまりは、配合変化を考えることは多くの場面で求められるのである。

そこで化学が生きてくる。

少なくとも薬局よりも病院の方が化学が求められる。

つまり化学的に予測される配合変化に関しては(これは結構な数がある)暗記ではなく、論理的思考や化学的思考でカバーできるわけだ。

暗記の効率の向上や、負担の軽減は、かなり重要なことであると、実習を通して感じている。

実際、有機化学や生化学、医薬品化学などの土台があるだけで、薬理学も病態生理学も臨床検査学も暗記しやすく、またより深く理解でき、臨床での応用力も高まると感じている。

新薬の作用機序や、既存の薬の同じ薬理作用の薬に分類される中での、個々の薬ごとの特徴に関する最新情報など、新しく学ぶことは多いが、基礎学力があると結構有利な気がする。

大学の勉強を軽視する大先輩の方々が多く見受けられることも理解した上で、僕自身は基礎学力の大切さを訴えたい。

生化学や有機化学、医薬品化学などは薬剤師としての土台となると僕は確信する。