薬物動態学を臨床薬剤師として用いるために | Coffee of Cusie

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薬剤師ですが、仕事内容は行政です。学生時代は、数学、物理学、化学、生物学に特に興味がありました。

薬局実習が始まって1ヶ月が過ぎた。

当初の目的である「薬局実習を通して『臨床薬剤師としての薬局業務』を具体的に把握する」ということについては、どこまで掴めたのか正直微妙なところだ。

以前のブログの記事にも記したように、薬剤師のビジョンは薬剤師ごと、薬局ごと、地域ごとに違いが大きい。

またビジョンがある程度収縮してある一定範囲に定まったとしても、これを現実のものにするために行動していくことは相当な困難がつきまとう。

そこでまずは自分自身を自分自身によって鍛えていこうと思う。

そこで目を付けたのが薬物動態学の薬局業務における臨床応用だ。

なぜなら、薬剤に関して相当優秀な医師ではない限り薬物動態まで考慮にいれないと感じたからだ。

医師の真似っこをしても薬剤師として意味がない。

「薬剤師じゃなく、医師になれば良かったんじゃないか」で終わる話だ。

薬物動態学の臨床応用を学ぶために、僕は個人的にある著名な先生の勉強会に出席して計18時間の講義・演習を受けた。

日本の薬物動態学の先駆者の一人の、緒方宏泰先生だ。(『第2版 臨床薬物動態学 薬物治療の適正化のために 丸善株式会社』などの書籍がある)

製薬会社向けの薬物動態学が多いなか、薬局薬剤師が薬局業務で実践できる薬物動態学はかなりの少数派だろう。

つまり、血中薬物濃度を測定しない薬物動態学である。

たとえば、患者さんの変化(体調、併用薬など)から、血中遊離形薬物濃度の変化を推定し、投与方法の改善策を考え、医師にフィードバックする。

薬物ごとに特徴があり、肝機能低下、腎機能低下、薬物代謝酵素の阻害、アルブミン、α1-酸性糖タンパク質の増減、血流量変化、浮腫等による変化などのどれの影響を受け、また、どれの影響を受けないかが異なる。

薬物ごとに薬物動態パラメータによる分類分けを行うのだが、それには薬物動態パラメータが必要になる。

しかし、残念ながら添付文書にはそのほとんどが載っておらず、インタビューフォームでも不足することが多い。

ここ2、3年の新薬については審査結果報告書(医薬品医療機器総合機構のHPから普通に読める)からパラメータを探し出すことができるので、新薬については分類分けが行えないことはないだろう。

注射剤の剤形もあるものについては、注射剤の方のインタビューフォームをみれば、薬物動態パラメータが揃っていることが多い。

日本の医療が遅れていることを痛感する。

日本の厚労省は薬物動態パラメータが不揃いでも承認するし、添付文章にあたってはデータがあっても記載しないことがほとんどだ。(アメリカだとデータ不足で申請が通らないはずだ。)

どういう意図があるかはわからないが、日本の医薬品情報は薬物動態を軽視している。

いや、正しくはインタビューフォームをつくる時点で他にもデータを取捨選択している。

審査結果報告書には書いてあることがインタビューフォームには書かれていなかったが為に、注意喚起体制がとれず、死亡事故が発生した事例が最近の新薬にもあるのだから、まだまだ日本は医薬品情報に関する体制が甘い。

以前も書いたが、審査結果報告書を読んで見てください。