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TITLE:
クラゲかもしれない。
SUBTITLE:
〜 However lie, how never die. 〜
Written by BlueCat

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 かつての学生時代、TUやBP(いずれも旧くからの友人です)とも所属していた団体の、記念式典があるという。
 教育委員会が管轄している学生ボランティアの団体であるため、現役は高校生。
 僕らはそのOBに当たるものの、当然のように僕はその一切に興味がない。
 
 一方でTUは同期の会長であるため、およそ10年おきくらいに企画されるたびその会議に呼び出される。
 式典の1年ほど前から、ほぼ毎月一度、である。会議だけでない実務も発生するという。
 僕も(名ばかりの)役付きになっていたが、これまでは消息不明だったため一切の難を逃れていた。
 しかし今期は(TUにしてみれば世界中の誰よりきっと)ヒマそうなので、何らかの事情で本人が対応できないときのためにと僕も企画会議に参加させられた。
 
 TUの家はまだ両親が要介護の入口にあって存命で、三人いる子供のうちひとりは障害者である。
 家庭を持つ者、家族や類縁のケアが日常に組み込まれている多くの人たちからすれば、そりゃ僕は世界中の誰よりきっと醒めた細い目で薄ら笑いを浮かべているように観察されるはずであり、ヒマそうに見えるだろう。
 昼まで眠って日なたぼっこをして、草むらに遊んだかと思えばすぐ飽きて、ぼさっと日が暮れるのを眺めたり、夜な夜な月に祈りを唱えるのに忙しいと言っても誰も信じない。
 
 まぁ世の俗事に好き好んで首を突っ込む気はないが、飼い猫ともども助けてもらった恩は(TUに対して)あるので、気が向いたときは付き添うのである。
 そういえば加入の時、その団体の説明会に付き添ったのも、そんなどうでもいい理由だったか。
 説明会での自己紹介が、どういうわけかウケてしまって、そのまま所属する約束をさせられた。
 不本意なことに首を突っ込む好奇心が、必ずしも不幸を招くわけではない。
 
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 TUは当時の同期に連絡しているらしいが、なかなかスムーズに行かないこともあるという。
 たしかに半世紀ほども生きている人間をある程度の母数で選出すれば、必然に死んでいる者もいる。
 大病を患っている者、生死を彷徨って記憶を失った者もいる。
 介護や育児で忙殺されているものもあれば、仕事で成功した者、失敗した者、どちらでもないかもしれないが日々置かれた状況で最善を尽くしている者もいる。
 
 なんということだろう。
 まるで僕は世界中で誰よりきっとヒマそうに見えるのだ。
 
 それから、かつての僕のように消息不明の者だって相応にいる。
 いつ切れてもおかしくない縁というのはそういうものだ。
 繋がっていることの方が、本当は特殊なのだ。
 
 特定の組織で、特定の期間だけ、やれ仲間だ大義だ絆だと騒いでいたとしても、やがて人はそれぞれの道を進む。
 親子姉妹でさえそうなのだ。血族にさえない者など、赤の他人ではないか。
 
 ところで赤の他人がなぜ「赤い」のか、知っていますか?
 血の色はなぜ赤いのか。
 
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 連絡を(TUが)取っているうち(TUと僕の仲が良いことは誰もが覚えているらしく)「青猫はどうしている」という話になるらしい。
 どのようにTUが説明しているか知らない。どうにも説明しにくい立場のイキモノ ── なにせ世界中で誰よりヒマ ── である。
 いらぬ苦慮をさせていなければ良いが、そういう性分でもなさそうなので放っている。
 
 同期の多くは、どういうわけか、僕に対して好意的であるらしい。
 TUが連絡をしているからこその必然だろうとは思うが、誰一人として(あれ、そんな奴いたっけ?)ということにならないどころか、当時の話になるとまず僕の名を挙げるらしいのだ。
 (不本意かつ無駄に)印象に残っている様子であるがTUとしてもそれは不思議というか不服というか「なんでやろな?」と思うらしい。
「俺が連絡してるのに、なんで本題そっちのけで青猫の話をみんな聞きたがるん? 俺、オマエの飼育/連絡係ちゃうで」といった具合に。
 
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 比較的最近だが「今の記憶や経験をそのままに高校生をもう一度やり直すとしたら」という話題で雑談したとき、
「映画とかアニメとかにあるようなさ、休み時間とか授業中とか、窓際の後ろの方の席でぼんやり外を眺めているような立ち位置で3年間過ごしたいな」とTUが言い、その瞬間、互いに顔を合わせ「ってそれお前(俺)じゃん!」と同時に吹き出したことを思い出す。
 
 狙ったわけではないが、僕はそういうタイプだった。多分今でもそうだ。
 他人の話が退屈だとか、取るに足らないと思っているわけではない。
 ただ自分の興味関心のある物事があって、しかし僕にとって不幸なことに、それが果たして何なのか、ナンなのか、ナンなの? ライスなの? 何なのか? 自分でもうまくつかめないままでいる(多分そのまま死ぬ)。
 
 僕にとっての幸福は、それを誰かと共有しようという欲がないこと。
 それから、誰かが僕に何かを共有させようと強制しても必ず失敗すること。
 社会と僕の乖離 ── 。
 
 水と油の比喩のように、明確にくっきりとはじき合う(分離し対立する)ことはないのだが、絶対的な被膜があって、混ざることがない。
 若い頃はその性質が分からず淋しさを覚えることもあったが、仕方ないのだ。
 自分の中心にある被膜で覆われた何かは、僕自身にとってさえつかめない、支配も制御もできないもののようだと最近になって理解した。
 
 多くの人は混じり合うことができる。
 他人と価値観を共有して、共感して、混ざってゆく。
 自分自身の中でも様々な感情や価値観が混じって、同質の絵の具みたいにひとつの新しい色を作って、それが自分なのだと信じられるのだろう。
 
 僕の中は混ざらない。
 記憶も、感情も、思考も、価値観も、それぞれ相反しても、ばらばらにマーブルになって、他人からは遠目に「グレイだ」「紫だ」と判別されているのに自分の中では細かく入り乱れた白と黒や青と赤が脈動して見える。
 どれが自分であるかなど、考えるのも無駄だと諦めて久しい。
 
 自分がそうであるから、他の人も同じだと思っていたのだが、どうも違う。
 一般に「丸くなる」と表現されることもあるようだが、年々歳々、いろいろな色が混ざってゆく。
 水彩絵の具の場合、すべての綺麗な色を混ぜてゆくと「ホラー映画みたいな色」になるのだが、皆はそれを知っているのだろうか。
 
 しかしその「混じる」「染まる」「うつる」という性質が、社会性なのだ。
 僕が自身をして社会不適合だと思うのは、自分という社会がすでに、どうにも混じらず、どうにも染まらないからだ。
 しかしだからといってそれぞれの価値観がいつも反発や反抗や対立をするわけでもない。
 ために他人に指図したり命令したり支配したりもしない。支配する価値も理解しない。放っておけばいい。
 
 僕の号令にすら僕の中心は従わない。
 子供の頃からそれをそのまま体現している。せざるを得ない。
 それもこれも僕自身でさえ僕の中心を中心に回っているからだ。
 
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 古い知り合いにとって僕の印象が悪くないのは、僕が一貫して誰の邪魔もしない(しなかった)から、なのだろう。
 自分の価値観を押し付けもしないし、誰かの価値観を否定することもない。
 僕にとってそれは当たり前だけれど、多くの人は子供の頃から家族や友人といったコミュニティの中で生活する上での必須スキルとして「価値観の共有」を叩き込まれる。
 
 僕だって猫を飼うと「僕と猫」というコミュニティにおける「価値観の共有」を叩き込む。
 飼い猫にとっては不幸かもしれないが、寝食を共にし養って貰うということは、そういうことではないか。
 だからといって飼い猫が(僕でない)誰に懐こうが、そんなことは猫の勝手であるし、玄関を開けて家出してしまうのもそれはそれで猫の勝手である。
 
 猫の管理が悪い、とか、自分勝手、とか、傲慢、とか、人でなし! とか、隠し子がいるくせに! とか言う人も居るとは思うが、愛玩ついでに支配する独善や執着は、正直狂気にも思える。
 安全についての基本的な講習(躾)を終えた個体なら、その先は当事者の自由だろう。
 飼い主が管理責任(あるいはそれに伴う賠償責任)を負うことは支配することではないし、その理由にもならない。
 もちろん「行為者(猫)の自由な決定に依らないから責任は猫にない」という考え方もあるだろう。
 それなら自由決定の意志を有しているかどうかは猫を鑑定してくれ。絶対に意志があるぞ我らは。
 
 好き勝手に冒険して自動車に轢き殺されたり、ヘンなものを食べて病気に罹って野垂れ死ぬ自由も、まぁ無能な猫ならあるだろうと思うし、こちらの邪魔をせず、躾に反することをしない限り何の文句もない。
 寝食を共にし養っている猫に対してさえそうなのだから、血族でもなければ生計を共にしているわけでもない人間を相手に、何の価値観を共有しようというのだろう。
 
 不可解な価値観に対しては「なるほどそういうのもあるのか」と考えて、いちいち反発する必要はないし、こちらの価値観について理解を求めるのも無駄である。
 誰かに共感を覚えたり、誰かに価値観を理解してもらえるというのは結果であって目的ではないし目標にするものでもない。
 目的や目標に進む上で、邪魔にならないならどうでもいいのだ。互いに理解できてもできなくても。
 
 そのような考え方なので自分の邪魔になるものがとにかく許せないのだが、そもそも他者が邪魔になるルートを進まない。
 たとえば渋滞することが予見されている時間と場所にわざわざ出掛けたりしない。
 
 渋滞するような時間や場所を避ければ、それだけで他者は邪魔にならない。邪魔だと感じる対象を作っているのは自分の立ち位置である。
 帰省する人たちの価値観が、だから僕には分からない。
 実家というのはかくも魅力的な場所なのかもしれないが、行きたくない場所を目的にしたり、したくもない過程を踏むのはなぜだろう。
 
 良いとか悪いという話ではない。
 僕はそういうことに魅力を感じないし、したくないことを絶対にしたくないと思っているという話だ。
 傲慢だと自覚しているが、その(たとえば渋滞の)責任を他者に当てこするのとどちらが傲慢だろう。
 
 何事も自分で選択している(できる)のだから、自分で選択し続けた(し直した)方がいいのでは?
 そして選択した結果を享受しているわけだから、不満や文句は自分(の価値観や選択や行動)に言うべきではないだろうか。
 
 いやそんなに自由ではない、選択肢もない、という人も居るだろう。それは誰でもそうだ。
 与えられた選択肢は少ない。
 しかし「自分の選択肢を増やす選択」をどれくらいしているだろうか。
 自分の選択肢は限られている、とあなたに教えたのは誰ですか。その教えを守っているのは誰ですか。
 
 通勤時間が渋滞するから近道を探し、近道も混むから会社の近くに転居し、通勤が面倒だから会社で寝泊まりする。
 僕はそういう怠惰な性質を持っている。
 会議も馴れ合いも上下関係も、効率が悪いからと忌避していたら自営業になってしまった天性の落ちこぼれである。
 
>>>
 
 他者が自分の邪魔になることを嫌う(孤独好きというのはそういうものだと思う)ので、他者の邪魔にならないようにとも努めている。
 これは同じ価値観が同じ行動原理として働いている。
 他人が邪魔だから、私の進路から退きなさい、譲りなさい、というのではない。
 
 他人を邪魔に感じないルートを嗅ぎ分けて進み、他人の進路の邪魔にならないように気遣っているのだ。
 結果的に他者の少ない場所に僕はいる。
 単一の価値観が自分のためにもなるし他人のためにもなる。
 
 それが人間関係の構築にそのまま当てはまっている。
 他人を邪魔に思い、嫌っているというのではない。それでは他人に縛られているのと何も変わらない。
 他人を邪魔に感じる状況を嫌っており、それに対策している、というだけである。
 
<11匹いる?>
 
>>>
 
 なぜ他者の記憶に残っているのかまでは分からない。
 しかし好意的に記憶されている理由はおそらく、単純に、僕が誰の邪魔もしなかったから、である。
 しかもおそらくただの一度も、である。
 
 けれどもそれは、果たしてそんなに良いことだろうか。
 一度くらいは誰かの進路上に立ちはだかり「邪魔だな、鬱陶しいな」と思われるのも良いかもしれない。
 人間達は意外に、猫にキーボードやモニタの邪魔をされることを望んでいるのだから。
 
 そしてただの一度として、そこまでの熱意を持ったことがないのだ。
 競争と同じで、誰かの行く手を阻んででも掴みたいもの、というのが何もない。想像もつかない。
 競争の勝利によって手に入る価値など、既知の、誰もが知っている、どうでもよいものばかりだ。
 
 誰も知らない、自分しか知り得ない、宇宙の秘密のようなものがあったとして、一体誰がその発見を競えるだろう。
 その場所は、その道程は、どれほど混雑しているだろう。
 
>>>
 
 他人の印象に残っていることについて語っているのか、僕の特性について語っているのか、自分でもよく分からない。
 正直、他人が僕に対して思うことなど、勝手に思ってもらうしかない。僕に操作できることではない。
 
 それなら僕自身はどれだけ自身の意志で操作できているかというと、これまたどうにもならない。
 そもそも、どうにかしたいと思っているのだろうか。思っていなさそうだ。
 自由意志決定の能力なんて、僕に備わっているのだろうか。
 
 
 
 
 
 
 

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[NEXUS]
~ Junction Box ~
[ Cross Link ]
 
[ Better Half ]
  見える景色と選択肢。〜 However die, how never lie. 〜(未公開)
 
// ----- >>* Tag Division *<< //
[Engineer]
  :工場長:青猫α:青猫β:黒猫:赤猫:銀猫:
 
[InterMethod]
  -Algorithm-Ecology-Engineering-Form-Interface-Link-Mechanics-Memory-Stand_Alone-
 
[Module]
  Connector-Generator-JunctionBox-Reactor-
 
[Object]
 -Camouflage-Car-Cat-Friend-Human-
 
// ----- >>* Categorize Division *<< //
[Cat-Ego-Lies]
  :夢見の猫の額の奥に:
:月夜の井戸端会議:
 
 
 
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