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TITLE:
放逐の羊。
SUBTITLE:
~ Anti matter bullet. ~
Written by 青猫β

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::私は日常を、平凡さを愛している。
 特別である必要を感じないし、特別でありたいとも思わない。
 
 日々が平穏無事に過ぎ去ってくれることが、どれほど喜ばしいかを忘れたくないし
 時折振り返って、それがどれほど奇跡的であるかを感謝せずにはいられない。
 
 
 

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 最近になって、自分の育った特殊な環境に気が付いた。本当にこの1年ほどのあいだである。
 もちろん家庭というのはそれぞれ個別の環境で、共通する点はあったとしても、まったく同じ環境などというものは存在しないだろう。
 それにしても、僕の育った家庭環境は、思うにかなり特殊だったような気がする。
 結果として、僕の人生が思いのほか特殊なものになったような気がしないでもないが、この人生が特殊だったのは、家庭環境がすべての根源だったとはさすがに言い過ぎだろうか。
 ただ少なくとも、僕がこういう人格(価値観の集合)を持つことになったのは、家庭環境の影響が非常に強かったのだと、考察される。
 
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【僕の子供の頃の家庭環境の概要】
 
 文章にしても面白いとは思うのだが、ざっくり箇条書きにしてしまおう。
 
○住居
 自宅 兼 工場 兼 事務所 兼 簡易倉庫。
 居住スペース(事務所や工場、倉庫など、会社機能を持つエリアを除いた場所)の部屋だけで思い出せる限り9部屋あった。浴室を含むと10。トイレを1F2F合わせると12にもなる。
 今棲んでいる場所が6部屋だから、考えるにえらく広い。
 
○家族構成
 父(会社経営)
 母(兼業主婦。事務やら工場作業もすることがあったように記憶している)
 姉(12歳/10歳/5歳 僕と年齢が離れている。計3人。個性はそれぞれにある)
 僕
 妹(2歳下。悪魔のような性格)
 犬(2〜1匹。時期によって若干異なる)
 猫(0〜7匹。ものすごく増えたり減ったりしていた)
 鳥(煙突というか、通気口というか、その穴から、百舌だとかスズメの雛が落ちてくることがあって、それを育てていることがあった)
 叔母(私が介護することになった叔母が、同居していた時期がある)
 祖母(父方の兄弟のところで叔母が介護していたのだが、諸般の事情で一緒に出てきたらしい)
 祖父(一緒に住んでいたことがあったと聞いたことがあるが、僕の生まれる前だったのか、まったく記憶にない)
 従業員(上記、父の会社に勤めている人たち。数名。僕の乳母役だった人もいたらしい。このあたり、記憶が曖昧である)
 
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 ここまで書いただけで疲れた。もうやめたい。
 歴史的な詳細は面倒なので省く。
(両親の馴れ初めなど、僕が生まれる以前の記憶の一切を僕は持たない)
 最終的に両親は離婚し、会社は倒産し、上記の環境は大きく変化したが今回の話題はそこにあまり関係しない。
 
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【僕の性格の特色と、それに環境がもたらした影響】
 
○競争を求めない。
 両親は、僕に対して競争に勝つことを求めなかった。
 姉妹間で勝手に競争すること(当事者本人が競争意識を持つこと)は当然あっただろうと思うが、僕だけは家族間で一切の競争から除外されて育った。
 姉妹と比較されることもなかったし、近所の、あるいは同じ学年の、あるいは同年代の一般的な傾向などとも比較されなかった。
 
 学校に通うようになってから(小学2年以降は母親がいなかった)成績の良し悪しは若干あったが、それが特に秀でていても格別褒められることはなかったし、周囲に劣っていても(小学校までは相対評価だったので体育などでは特に顕著だったが)格別、注意を受けたり伸ばすように促されたりはしなかった。
 このため一切の競争ごとに興味を持たず、価値を見出さなかった。
 
 競争というのは、労多くして功少ないもので、誰かが勝てば誰かが負けるという必然があり、トップだけが勝ちとするなら、かなりの敗者を生む仕組みだと感じていた。
 とにかく面倒だったし、今でも競争が好きな人や競争そのものを面倒だと思う。
 
 両親が離婚するまで(まぁ、したあとも、かな)父上は(主として仕事で)ほとんど家にいなかった。
 家は女性と動物が、とくに何を競うでもなく生活しており、僕はその中で、のんびりと暮らしていたのだと思う。
 結果、僕は競争を嫌い、他者に競争を求めることもない。
 競争とは、リソースの無駄を生むものだと認識している。
 企業間の入札や製品の開発競争であっても、競争によって生まれる無駄がある。
 勝者があるとき、敗者は無駄な存在なのだ。
 
 
○無責任でもOK。
 すごいことを書いているが、本当にそうだったと思う。
 学校の宿題をまったくしなかった。もちろん父子家庭という事情は学校の先生も承知しているのである程度までは目をつむってもらえたと思うが、父はまったくそのことについて僕に注意をしなかった。
 しかしそれを徹底的に嫌う先生も当然ながらいて(当たり前だ)、僕はよく叱られたり廊下に立たされたり、教室の後ろの床に正座をさせられたりしていた。
 もっとも3歳の頃から正座を躾けられていたので、正座で苦痛を感じることはまったくなく、居眠りをして起こされた。
 
 今になって思うと、これはさすがに悪影響が大きかったように思う。
 僕はかなり無責任な人間になってしまって、与えられた課題をきちんとクリアするという責任感や目標達成意識を構築するのにずいぶん苦労した。
 まぁ、子供の頃に散々ラクをしたツケが回ったのだ。
 
 
○「男らしさ」の概念が希薄。
 父親も母親も、僕に「男らしさ」を押しつけなかった。
(主に妹に泣かされて)泣いていれば「どうしたのか」と訊ねて、理知的に喧嘩を解決した。
「男なんだから」「お兄ちゃんなんだから」といったことは一度も言われなかった。
 姉はときどき「女なんだから」「お姉ちゃんなんだから」と言われていたかもしれないが、数えるほども見ていない。
 結果、僕は自分が女なのだと小学生になるまで思っていた。
(「いつか自分もおっぱい大きくなるんだなぁ」とか本気で思っていた)
 妹に至っては悪魔なので、両親も手に負えなかったのではないかという気がしないでもない。
 
 学校では僕の性差はさほど問題視されなかった。
 10歳頃までろくに男友達はできなかったが、それは僕の性差によるものというよりは、転校生なのに学校帰りに拾った猫を、翌日から教室に持ち込んで育てたり、まったく宿題をしないのにテストは高得点で、授業では挙手して正しい回答をするという奇行が目立ったためだろう。
 当然いじめられたりもしたのだが、猫は世界でも最強に匹敵するイキモノなので、猫の友達になりたい気持ちが勝る結果、僕の敵になろうとする人間は少なかった気がする。
 
 実に「男らしくなさい」と言われたのは社会人になってからだったし、そのときはとても驚いた。
 職場にいた、母親であってもおかしくない年齢の先輩に言われたのだが、まぁその人はそういう(男は男らしく、という)世代であることには違いないし、僕は30代までは同性愛者に間違われることもあったので、さほど気にしなかったし今も気にしていない。
 
 正直なところ、自他共に性(ジェンダー)なんてどうでもいい、性別は性交に必要な肉体準拠の識別子に過ぎない、と考えるのはこうした環境の影響も強いのだと思った。
 ちなみに僕の姉妹は、僕より男っぽい人もいる。
 
 しかし僕は姉妹だろうと、恋人だろうと、女らしくとか、恋人らしく、といった役割をとくに求めない。
 その役割はすでに自己処理ができている。
 母親らしさを誰かに求める必要もなかった。
 自分にないもの、必要なものを、可能な限り自力で埋めるのは、僕には必然のことだった。
 
 
 
○動物が多い。
 上記のとおり、落ちてきた野鳥の雛を家族で育てたり、誰かが蚕を大量にもらってきたり(あれが大量に箱の中で蠢く姿は衝撃的である)、庭で拾ったトカゲだかヤモリだかを虫かごで誰ともなく育てたりしていた。
 後年のことを考えても、父上は人間以外の生き物にも優しく、また好ましく思っているようだった。母上のことはよく分からない。
 これらは僕が動物を好きになるきっかけだったと思う。
 
 なにより僕は4歳の頃、動物に強く激しく魅入られた。特に猫だ。
 愛らしい貌、力強くしなやかな造形、艶めかしい毛並み。
 性欲と呼べるものも存在しないのに僕は、ひどく官能的に動物に魅入られていて、将来、人間と恋愛をしたり家庭を作ったりすることはできないのではないかと自ら危惧したほどである。
 おそらくこの段階で僕は「どうして自分は猫ではないのか」という初歩的な疑問に突き当たったのだと思う。記憶にないけれど。
 
 何故といって普通、猫を知らない人間が、自分のことを猫だと思ったりはしないからだ。
 異性を知らない人間が「自分はこっちの性別ではない」なんて言い出したりはしないのと同じように。
 
 もちろん種族違和と性別違和を同列に語るのはどうかと思うし、僕の種族違和は僕の性別違和と同じくらい僕にとってはどうでもいいことなので、なんともいえない。
 ちなみに今までのところ人間と恋愛することはあったが、人間と家庭を作ることはなかった。
 また猫と恋愛することはなかったが、猫と暮らしていると気持ちが落ち着くのは変わらない。
 
 他人を信じられないと感じる出来事も、自分を信じられなくなる出来事も、何度となくあったが、動物はそれを救ってくれる。
 
 
 
>>>
 
 これらの少々風変わりかもしれない環境によって、僕は衆に秀でた能力を発揮せずとも(特に賞賛はされなくとも)非難されず、協調性を持たなくても共存していられるという、とても平和的な日常の中にあった。
 
 通気口から落ちて畳を汚したヒナ鳥は、叱られることも捨てられることもなく育てられた。
 家族はよく捨てられた猫を拾い、知人から子犬を貰い受けた。
 個々人間にそれぞれ何らかの軋轢はあったのだろうけれど、僕はまるで羊のように、牧歌的な存在であり続けた。
 誰かを攻撃する理由も目的も持たなかったし、誰かより優れる指命もなかった。
 何かを守る必要も価値も知らなかったし、何者かの謀略や略奪、背信や欺瞞の存在を知らなかった。
 
 後年にも通じて、僕は生きているだけで家族から大切にされた(おそらく今もそうだ)。
 理由は分からない。
 
 おそらく僕は、姉妹を相手に、父を相手に、何かを競うことで自身を証明しようとしなかった。
(母は競争の相手にはなりようもなかった)
 おそらく僕は友人にもそれをしなかった。教師に競争を命じられたところで自身の能力を発露することはあっても、それを他者に誇示することで自身の証明とはしなかった。
 おそらくこれまでの人生にただ一度として、それをしなかっただろう。
 
 そして僕は、父を相手に、姉妹を相手に、その役割を強要しなかった。
 他者に対して「こうあれかし」なんて理想を持たず、それを押しつけることもなかった。
(母に対しては、言葉にしたことこそないが、おそらくそれを求めていたとは思う。不在になったから余計に)
 
 ── なぜならそれらを、僕は誰からも押しつけられたことがなかったからだ。求められなかったからだ。
 証明する必要もなく認められ、達成する必要もなく大切にされていたのだ。
 
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 上記の環境は、僕が6〜7歳のときにドラスティックに変化し、その変化によっても僕は(もちろん僕以外の家族も)それ以降、大きな影響を受けることになった。
 
 僕の根底を変える手段など存在しなかっただろう。
 僕はすでに他人の存在する環境において、個々人間の競争による証明の必要を感じず、何かの目標を押しつけあうコミュニケーションの有り様に意味を見出さなかった。
 だから僕の根底を変える手段は、存在しないだろう。
 
>>>
 
 資本主義は無情だ。
 競争を必然とし、競争を原理とし、競争を美化する。
 
 勝者は賞賛されその価値を燦然と刻み込むが、しかし敗者はどうなる。
 暗闇でぐつぐつと煮詰りくすぶるだけではないのか。
(生活保護さえ、今の社会には無駄で不要だと断ずる思想が存在する。自己責任と自助努力の名の下に死ねということだろう。)
 
 どうして他者に対して自身のありようを、今持つ熱情を、証明する必要があるだろう。
 どうして証明して勝利しなければ、存在を認められず価値を見出されないのだろう。
 
 その手法、概念、演算式、原理に、なぜ誰も疑問を持たないのだろうか。
 
 
 
 
 
 
 

// ----- >>* Escort Division *<< //
 
 
::「自分に価値があるか自信がない」なんて、いい大人になったら口にするべきではないだろう。
 自分が、持てるすべてを削って、時に痛めつけられて、そうやって傷跡のようにカラダに刻み込まれたものが、時に価値となる。
 
 いわば宝石のようなもので、その価値は外部からしか観察できないかもしれない。
 
 けれども自分以外の人がどう感じるかをきちんと知っていることが優しさであるとするならば、
 優しい人はすべて、自分の価値をきちんと知っているものである。
 そしてその価値は、謙遜するでも誇示するでもなく、そこにある小さな光としてきちんと認められるべきものだろう。
 
 
 

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[出典]
~ List of Cite ~
引用は、
残り続けるカタチ 〜 Remainable Exist 〜」From「青猫工場 〜 Bluecat Engineering 〜」
によりました。
 
 
 
 

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[NEXUS]
~ Junction Box ~
[ Traffics ]
 
 
 
// ----- >>* Tag Division *<< //
[Engineer]
  :工場長:青猫α:青猫β:黒猫:赤猫:銀猫:
 
[InterMethod]
  :Algorithm:Blood:Convergence:Darkness:Ecology:Form:Life:Link:Mechanics:Memory:Recollect:Style:
 
[Module]
  :Condencer:Connector:Convertor:Generator:JunctionBox:Reactor:Resistor:
 
[Object]
  :Cat:Human:Memory:
 
// ----- >>* Categorize Division *<< //
[Cat-Ego-Lies]
:青猫のひとりごと:ひとになったゆめをみる:
 
 
//EOF