俺の娘は俺の顔に似ていると周囲は言う。

性格も小さい頃は俺っぽかったんだが、成長と共に嫁のビッチ遺伝子が際立ち、

今となってはすっかりビッチになってしまった。アッチャーなんてこったショック

 

娘は高校卒業後、大学に進学せずハリウッド女優を目指しカルフォニアに旅立った。

しかしなぜか通るオーディションはニューヨークが舞台の作品が多く、ちょこちょこ帰ってくる。俺はその度に空港までの送り迎えに振り回される。

 

娘が生まれて間も無く、嫁は仕事に復帰した。

俺は娘の面倒をみるために夜勤の仕事を見つけ、嫁が仕事に行っている昼間は俺が娘の面倒をみていた。

 

祖国から離れ、親や親戚のいないアメリカで生きていくことを決めたのは自分たちだ。当然の試練である。

 

地元にあるデイケアを色々とあたってみたが、乳幼児を預かってくれるところはどこもなかった。経済的に余裕のある家はベイビーシッターを雇うがうちにはそんな余裕はない。デイケア入園の条件は歩けるようになってからだった。娘はハイハイとつたい歩きの期間が長く、歩き始めたのは15ヶ月の時だった。

 

娘のデイケア第一日目は俺の仕事復帰第一日目でもあった。

 

俺は早朝から夕方遅くまでの仕事なので、嫁が出勤前に娘をデイケアに連れていき、仕事が終わるとデイケアにお迎えに行くという生活が始まった。

 

デイケアの第一日目、どうだった?

 

うん、最初私の太ももにしがみついて離れなかったのよ。でも面白そうなおもちゃを見つけて遊び出した時に先生が ”今よ!” って合図してくれたから、そーっと外に出て仕事に行ったの。後で先生に電話したら、あれから泣くこともなく他のお友達と楽しく遊んでたみたい。

 

”太ももから離れなかった” というくだりが俺の胸に突き刺さった。ぐっときて、目頭が熱くなり、、俺は急いでキッチンに逃げ込んで、シンクを洗い出した。

 

どうしたの?大丈夫?

 

嫁のその言葉に誘発され、感情を抑えられなくなってしまった。

 

俺、仕事辞める!夜勤の仕事に戻ってコイツの面倒みる!

 

って、言ってしまった。

 

え〜?でもこの子、デイケア気に入って明日行くの楽しみにしてるし。

 

は?でも太ももにしがみついて離れなかったんだろ?

 

まあ最初はどの子もシャイになるのよ。あの後は大はしゃぎで遊んでお友達をいっぱい作ったみたい。

 

 

あれから18年の月日が流れ、俺は還暦になった。

 

娘は夢を追いかけ、後ろを振り返らず前に進み続けている。

俺の心配などなんのそのでバンバン自分の人生を切り拓いている。

 

ビッチになるのは女性がアメリカで活躍していく上で必須条件なのかもしれない。