公認心理師 過去問研究[1049] 第7回悉皆検討〈22〉想像力欠如状態の用語 | こころの臨床

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第七回公認心理師国家試験問題(2024年3月3日実施)

問22  自らの感情を認知したり表現したりすることが乏しく、想像力に欠ける状態を意味する

     用語として、最も適切なものを 1 つ選べ。 

1)  アパシー
2)  アメンチア
3)  カタレプシー
4)  ディスレクシア
5)  アレキシサイミア 

 

 

解は、5

1)か5)、医療者でも迷うかも...。3)も意欲障害の局面から気になるし。

決め手となる記述は、「想像力に欠ける状態」のようである。

正答には、以下の知識が必要となる。

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-006.html 

(上記より転載)
失感情症の概念は研究者の間で検討されて、以下の特徴としてまとめられました。
1.  自分の感情がどのようなものであるか言葉で表したり、情動が喚起されたことによってもたらされる感情と身体の感覚とを区別したりすることが困難である。
2. 感情を他人に言葉で示すことが困難である.
3, 貧弱な空想力から証明されるように、想像力が制限されている。
4.(自己の内面よりも)刺激に結びついた外的な事実へ関心が向かう認知スタイル。

 

 

用語アレキシサイミアの定着を企図したものとするなら「よくできた問題」と言えるかも。

 

ちなみに、

 

1)  アパシー apathy:社会事象への無気力・無関心(元は社会学の用語)

   医療領域では、抑鬱状態の一つ...関心の欠如、意欲の障害として捉えられることがある。

  ただこの語は、汎用的にも使われ、専門用語としての定義が確定しているとは言い難い。

       ICD-10に、「R45.3 無気力及び感情鈍麻<アパシー>」の登載がある。
 

2)  アメンチア amentia:急性精神錯乱状態、思考散乱と困惑を伴う、本人が自覚して困惑。

 

3)  カタレプシー catalepsy:強硬症、蝋屈症、意欲障害に基づくとされる。

       一定の姿勢をとると、その姿勢を随意的に変更できず、長時間にわたり同じ姿勢を保持する

       症状。緊張病症候群に含まれる。

 

4)  ディスレクシア dyslexia: LDの一つ、「文字の読み書き」に困難。

 

5)  アレキシサイミア失感情症  alexithymia
       *要弁別:失体感症  alexisomia:身体の気づきに乏しい状態身体の気づきに乏しい状態

 

😸本問考案・作成過程についての妄想 
万一この選択肢構成で、5)を「アレキシソミア」(ひっかけ)にすれば、1)を選ばざるを得ません。となると、受験者らからの批判や疑義が生じる虞がありうるでしょう。なので、素直に「アレキシサイミア」を採用したのかも。それに、「アレキシサイミア」への、公認心理師や志願者の関心を励起することが望めるし。

選択肢に「アレキシソミア」が並んで入る(選択肢は、語または文の長さの順に配列する)なら、類似語を弁別(いずれかが正解)とのヒントを与えるため、難易度が下がってしまう。このような検討を経て、この選択肢の構成になったのではないでしょうか。。

 

🌸タームの意味推定のヒント:

  接頭辞aは、続く文字列の意味を否定する。

    接頭辞dysは、続く文字列の意味の良い側面を破壊し、悪い側面を強化する。 

 

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