ユング派分析家を自認していた河合隼雄が、自らの行ってきた心理療法に仏教的要素が深く関わっていることを自覚し、これを積極的に取り上げようとした試みです。
これは、アメリカのユング心理学者のなかから年に1人を招聘して開催されるフェイ・レクチャーに東洋から初めて出講して連続講演の記録です。
印象に残った記述は、河合隼雄が自らを「ユング派ではない」と記しているところです。
「自分の独善性や安易やを防ぐため、自分の信じる方法や考えを全面的にぶっつけて検証する相手として、C.G.ユングを選び、そのことに積極的意義を見出す、というのがユング派であります」と明言しています。(p60)
米国の研究者をはじめ欧米の人々の前で語られた言説なので、かなり意識して明確な語調での主張がなされているように思います。