本著は、1992年に増補版として再版が出ていますが、こちらも現在は古書でしか入手できないようです。
三木先生は、1919年生まれ、結婚し2児を設けられてから新制大学を出て公立高校教師になられた30代で最晩年の古沢平作先生に分析を受けられた後、ロジャース理論が日本に導入された最初期に、佐治守夫先生・村瀬孝雄先生・空井健三先生、山本和郎先生、越智浩二郎先生といった心理臨床分野の学徒なら誰でもよく知る先生方と交流を持たれたようです。
その後に、河合隼雄先生と出会われ「ユング派にたどり着く(p200)」こととなりました。
本著は、一言で言って、たいへんユニークな著で、本著が出版されるには、やや複雑な事情があったことが伺われます。
ただ、ある意味、いかにも、ユンギアンらしい著作でもあろうかと思われます。ちなみに、三木先生は歌人でもいらっしゃいました。
箱庭の技法に関する三木先生の見解は、pp.186-196の「箱庭療法の手引き」にあります。
Lowenfeldが箱の外を黒く塗っていたり、箱の内側は必ずしも水色ではなく、「水の感じがでればよい」との趣旨だったようです。銀色内張(防水のためか?)のブリキ色のまま使用していた精神科医もいたとの記述も見られます。
砂の質感には、LowenfeldもKalffもこだわりがあり、複数の種類を用意していたとあります。
ところで、最近は、身体感覚を砂の触感には必ずしも求めず、ITを用いたHAKONIWAプロジェクトでは、箱も砂も排除してしまっています。
....こうなると、もう全くの別物になってしまっていますよね。