木曜レビュー[シネマのこころ] 三度目の殺人(2003) | こころの臨床

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心理学は、学問的な支えも実践的身構えも、いずれも十全と言うにはほど遠い状況です。心理学の性格と限界を心に留めつつ、日本人が積み重ねてきた知恵を、新しい時代に活かせるよう皆さまとともに考えていきます。

 

 

「ここでは誰も本当のことを言わない」。

 

裁判は勝つか負けるか....なので、「誰も」本当のことは言えない。

 

 

検事も判事も弁護人も「ともに法曹界という同じ船の上に乗っている。」

 

だから、暗黙の了解でものごとが進められていく。

 

 

真実は、裁判の中では、唯一・専一・第一義的にさえ追及されるものではない

 

刑事事件であって、これが(裁判員裁判の裏側の)実態なのだから、民事であれば、言ったものがち、訴えたものがちの無〈法:ダルマ〉地帯となりかねない。

 

…と改めてわたくしたち法人が遭遇した民事裁判の苦い経験を思いながら、感慨深く鑑賞しました。....優れた演技陣で構成された、間違いなく佳作なのに、アマゾンではカスタマー評価は芳しくない作品でした。

 

生得的共感性が極めて高い(ほぼ超能力水準に近づくと、祝福されない)或る人物が、社会構造の裂け目の深奥まで落ち込んで犠牲の礎となるんだなあと改めて思わされました...。