宗教学会第82回大会公開シンポ参加報告10/10-1 | こころの臨床

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心理学は、学問的な支えも実践的身構えも、いずれも十全と言うにはほど遠い状況です。心理学の性格と限界を心に留めつつ、日本人が積み重ねてきた知恵を、新しい時代に活かせるよう皆さまとともに考えていきます。

🐱にゃんコメ愚見管見

 

このシンポジウムの議論に、もし、心理臨床の立場からなにかを足せないかと問われれば、「家族」「家庭」というファクターを挟み込むことを提案すると思います。

 

中井久夫先生の治療論には、「家族」というファクターは絶対に外せないものです。

 

公認心理師国試にむけて勉強してこられている方々なら、どなたでも叩き込まれた覚えがおありの、心理・社会・生物の3要素で様々な分野での対人支援を考える、なんていうことは、すでに力動精神医学の分野では、前世紀1960年代には当然のことでした。…が故に、(当たり前の日常事が特筆することではないので歴史書に残らないという原理から)語らる必要はありませんでした。そんな以前ではごく当たり前だったことが、殊更〈ことあげ〉さ(せら)れる現在は、その原理が看過されたり、すでに見失なわれつつある危機に瀕していることを意味しています。

 

この中の「社会」を中井先生は、「家族」として重要視してこられました。たとえば、

 

精神科医は、おそらく患者が休息できる条件を、生物学的、心理的、家族的、社会的の各レベルでさぐっていく必要があるだろう。(『精神科治療の覚書』1982, 日本評論社,p252)

 

この中井先生の御本の元になった『からだの科学』の連載は、1978年から1981年にかけてのものでした。

 

 

 

 

今回の個人研究発表の中に、世俗化に傾く公教育を避けて「ホームスクーリング」として「宗教右派」が「家の宗教」に基づく教育を行うことが、アメリカ合衆国で増えてきているという調査発表がありました(並行する他の発表を聞きにいっていたので、資料だけですが)。また、パネルでも宗教2世問題を主題にしたものがありました。

 

「宗教2世」問題において、「家の宗教」すくなくとも「家の独特な文化」環境の中での子育てが、重要な影響を及ぼすことは、言うまでもないことだと思います。

 

本シンポジウムで問題提起された松山先生の知見は、教育分野の大学の研究者のみならず、家庭教育に関わる研究調査をされている方々、現場の教師や心理臨床家の間の問題意識としてしっかり共有していければと思われます。

 

 

今学術大会は、上記の宗教2世、また例年通りに新宗教信徒の家庭に関わる調査研究のパネルや発表、また陰謀論とスピリチュアリズムのグローバルな結びつきに関わる時宜に応じてのパネルがありました。このような広い意味での宗教社会学の調査研究が、心理臨床に携わるにゃんたちにとって、有益な知見を広げてもらえることを再認できました。

そんなエキサイティングな対面大会に参加できて、幸せでした。

 

久しぶりにお出会いした、PC画面を通して身近に感じていた方々同士も、身近に直にお出合いすることの嬉しさはひとしおのようでした。関西から日帰りで府中までお越しの方とも久々の再会を喜びあうことができました。

 

 

これに比して、正直なところ、心理臨床系学会は今後ともZoomでにゃん的には充分ですが…ってことを、この際、次回に暴露ってしまいますが…。