臨床つれづれ:「宗教」と心理臨床/臨床心理学(その2) | こころの臨床

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心理学は、学問的な支えも実践的身構えも、いずれも十全と言うにはほど遠い状況です。心理学の性格と限界を心に留めつつ、日本人が積み重ねてきた知恵を、新しい時代に活かせるよう皆さまとともに考えていきます。

半世紀にわたっての悲願であった、国家資格はできました。

全心協を筆頭に医療心理師資格推進派の思惑のままに。

 

 

ただし、たとえば以下のような「ゆるやかな専門性(=素人の仕儀に等しい)って、どう思われますか?」と、河合隼雄先生に導かれて、この業界に骨を埋めるつもりでいままで頑張ってこられた方々にぜひとも聞いてみたいです。

 

 

こうした臨床心理学の専門性のあり方は、「心理臨床家でないとできないこと」としての「臨床心理行為」15) とは異なるものになるだろう。臨床心理学の独自性を 強調する専門性を「強い専門性」とするならば、上記 の宮脇の指摘49)は、他職種どころか専門家でなくても 可能な「素人性」を含むこころのケアであり、「弱い専門性」とでも呼ぶべきものである。それはたとえばチームのなかでリーダーシップを示したり「強い専門性」で治療・ケアを担ったりするのではなく、経験者 の持つピアの力や他職種の専門性を活かすためにチー ムを支えるフォロワーシップによって発揮される専門性と言えるだろう。公認心理師の時代の臨床心理学では、こうした「弱い専門性」について実践と研究を重 ねていくことが重要なテーマになると考えられる。

15)氏原寛,田嶌誠一(編).臨床心理行為 : 心理臨床家でないとできないこと.創元社.2003,

49)宮脇稔.医療心理師が果たしてきたこれまでの役 割 と 今 後 の 期 待. 臨 床 精 神 医 学.2007;36(2):157- 160.

(「心理職の国家資格化を巡る経緯から見る公認心理師制度の社会的意義 -「臨床心理学的社会制度論」の必要性-」岩田光宏,大阪人間科学大学紀要.2023,p93)

 

 

....う〜ん.....最高最善の心理専門職としての国家資格に相応しいモデル、その存在意義を突き詰めて考え抜いた末に創成された資格であるという自負は、何処にあるのでしょうか。

 

 

とにかく時宜が到来しているんだから、資格という形さえまずは出来ればいいんだ、中身は後で考えたらいいんだ、....と政治・経済的ステークホルダーのみなさんの賛助を得られたこのチャンスに勢いで出来てしまった後からのツケが回ってきてる、苦し紛れの「専門性」定義みたいやなあ〜という気がしてならないんですが。これもねこの浅知恵とか勘違いでなければいいけど....

 

 

そうそう、この論文に、縷々お言葉が引用されている宮脇稔さんは、全心協の会長で、現日本心理研修センターの理事でいらっしゃいます。

 

 

 

 

あの時のわたくしたちの日本臨床心理学会の改革を手始めに、心理臨床学域を広めようとした試みから、はや10年を経ています。そしていま、「宗教」への心理臨床の姿勢を今一度を省みていく時を迎えていると思います。....逆にいまのこの機を逃したら、いったいいつになるのだろう。

 

 

 

 

臨床宗教師が、医療系専門職としての和風「チャプレン」として、その職責を一身に背負うことになるかも。