出題基準大項目15心理支援の事例問題編、いよいよ最後の中項目(6)
「要支援者等のプライバシーへの配慮」となります。
小項目(キーワード例)は以下です。
・個人情報の保護に関する法律〈個人情報保護法〉
・個人の尊厳と自己決定の尊重
・インフォームド・コンセント など
■ 生命の危機等の重大事案に関わる場合があり得る心理的支援の特質との兼ね合いが
つねづね課題となる、プライバシー保護の問題が多出しています。
法理を踏まえた上での、例外事象・ケースに留意しましょう。
この項目の趣旨の中核となる、「個人情報の保護」については、過年度までの
一般問題では多く問われておりますが、事例問題としては以下が見つかりました。
第一回追試(2018.12.16)~守秘義務
問65 中学2年の担任教師 A。A は、中学校でスクールカウンセリングを担当している公認心理師に次のように相談した。クラスの女子生徒 B が「誰にも言わないでください」と前置きし、「小学校6年生になったころから、母親が夜仕事に出ていくと継父が 夜中に布団に入ってくる。夜 になるとまた来るのではないかと恐ろしくて眠れない」と話した。A は 性的虐待の可能性が高いと思うが、B に詳しく聞いていないため確証が得られていない。今後、担任教師としてどのように対応すべきか助言してほしいという。
A に対する公認心理師の助言として、最も適切なものを1つ選べ。
1 母親に電話して事実を確認する。
2 A が中心となって、この問題に取り組む。
3 虐待の可能性があることを、児童相談所に通告する。
4 安心して話していいと B に伝えて、話してくるまで待つ。
5 秘密は必ず守ると B に伝え、これまでの経緯と現状を詳しく尋ねる。
解 3
1 母は外的事実として詳細を知らないか、あるいは否認の機制が働 いている可能性もある。
いずれにしても「事実を確認」できる情報は得がたく、母を動揺させることはBに良い影響
を与えないであろう。
2 虐待(性的虐待)のような重大事案には「チーム」で取り組む。
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/__icsFiles/afieldfile/2019/05/09/1416474_001_1_1.pdf
4 緊急性があるので、受け身で待つのは不適切
5 守秘義務が除外されるケースなので、「秘密は必ず守る」との保証は不適切
■ 本日で、国家が公認する心理師に求められる業務の根幹を支える、心理支援者の
こころがまえに深く関与する、大項目15の過去問研究を終了します。
国家資格者としてその専門性を活かして、「国家」ではなく「国民」(社会全体)の
福利を支え導く責務としての臨床家・支援職には、名実共に盤石な基盤が求められます。
今後とも、人が他者の「心理支援者」であることの意義と危うさの双方への気づきの下、
日々の臨床と支援に、どうか励まれてください。
本日までに検討した問題は、一般問題を含めて100問ほどとなるでしょうか。
... 公認心理師の実際の業務の基盤となる「心理支援」(出題標準大項目15)の
キーワード群をできる限り拾い上げてきたので、わりと長期の連載となりました。
お読みいただいて、本当にありがとうございました。
3回の国試から、知識を記臆するだけではちょっと解きにくいかなという問題を
選んで、全問(154問×3)の2割ほどを検討してきました。
この後、「大項目15」のキーワードに引っかからなかった問題も含めて引き続き、
12月の受験直前講座(ウェビナー)までの11月末をめどに、法と制度により重点を
おいた新たな編成で連載をスタートしますが、ひとまず本日にて中締めとなります。
夏の終わりとともに、これまでの弊法人のいろいろな積み重ねが一旦ご破算となり
ましたが、気持ちを新たに精進して参りたいと思います。
昨年度までのこころの臨床主催の公認心理師現任者講習会をご受講いただきました
皆さまをはじめ、公認心理師を志されている皆さまとのご縁を大切に、この資格の
内実をたしかなものとするため、これからも弊法人は頑張ってまいります。
どうぞよろしくお願いいたします。
(2020年8月14日、終戦の日の前日に、くろにゃん記)