「反社会的行動」を起こしやすい人 | すべてはうまくいっている! 光と心の調和

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人間の性格や行動パターンについての膨大な研究・調査の結果のひとつとして、「犯罪あるいは反社会的行動」をしやすい人が存在することが判明している。

「犯 罪・反社会的行動」を起こしやすい人の特徴は、他者への共感力が低く、特に「恐怖・悲しみ・苦しみ」といったネガティブな感情に対してはほとんど共感する ことができない。その結果、他者に対する「罪悪感」や「申し訳ない気持ち」「良心の痛み」などを持つことができないことがわかっている。

犯罪を起こした場合も、法律による処罰は恐れるが、被害者に対する懺悔の気持ちはほとんどないといってよい。捕まってから謝罪をすることがあったとしても、それは単に処罰の軽減を目的としていることが多い。

したがって、本心から後悔したり改心したりすることはほとんどなく、懲りずに何度も何度も繰り返して犯罪を犯してしまうことになる。

このような傾向性を持った人を、「サイコパス」「精神病質」あるいは「反社会性パーソナリティ障害」と呼ぶ。

では、なぜ「犯罪や反社会性行動」を起こしやすい傾向の人と、起こさない傾向の人に分かれるのだろうか?

進化心理学(人の精神的活動の基盤が、その生物学的 進化の過程で形成されてきたとする)」の立場からは、人間は生得的に「遺伝的知恵」として「犯罪・反社会性行動」をしにくいようにできている、と捉える。簡単にいうと人は生まれつき「良心回路」を持っている、という考え方である。

では、人の「良心回路」は、どのようにして善悪を判別し、さらにどのようにして善を好み悪を嫌うようにしむけるのか?

これはとても難しい問いかけで、宗教や形而上の問題範疇ともいえるが、ひとつの仮説として次のようなものがある。

人 は幼い頃から家族や学校などにおいて、大人たちとの関係、子どもたち同士との関係によって、さまざまな対人関係行動を学習しながら成長する。たとえば、幼い子どもが無意識のうちに人の嫌がる行動をとってしまったとき、相手に嫌な顔をされたり、睨まれながら去られたり、怖い顔で怒られたり、といった経験を何度も何度も繰り返すことになる。

この経験は、幼い子どもにとっては「恐怖」の体験となる。というのも、人はもともと「嫌がっている顔」「人の怒った顔」に反応して扁桃核が活動し、不安症状が生じるよ うにできている。したがって、特にこんこんと諭されたり叱られたりしなくても、人が「嫌な顔や怒った顔」をするだけで、自分自身のなかにネガティブな感情 (恐怖・不安)を引き起こしてしまう。これはミラーニューロンの働きによる、「他者に嫌な思いをさせる=自分が嫌な思いをする」という基本的共感性もベー スにあるからであろう。

「他者の嫌がる行動をとる」=「不安・恐怖(自分が嫌な思いをすること)が生じる」と関連づけられ、そのうちに単純に「他者の嫌がる行動をとることを考える」だけで、「不安・恐怖に関連した嫌な感情」が生じてしまうようになる。

単純化すると
「他者の喜ぶ行動をとる」=「安心・満足(自分が嬉しい思いをすること)が生じる」=善
「他者の嫌がる行動をとる」=「不安・恐怖(自分が嫌な思いをすること)が生じる」=悪
といった具合であろうか。

つまり、人が「良心回路」を身につけるのは、パブロフの犬と同じような「条件づけ」のメカニズムの働きによるもののではないか、という仮説である。

人の心に生じる善悪が、「宗教的、哲学的、形而上的問題」から一気に、「パブロフの犬と同じ単純な条件づけメカニズム」になってしまうのだけれど。

しかし、これが案外ほんとうのことかもしれないという科学的根拠が、さまざまな研究のなかでいくつもあがってきている。

そのひとつは、サイコパスや「精神病質」の人たちは、そうでない人たちに比べ「恐怖条件づけ」をしにくいというものだ。その傾向は、多くの実験で繰り返し示されている。

実験はパブロフの犬と同様の手順で行われる。
たとえば赤いランプが点灯すると仰天するような爆発音が起こり、青いランプの点灯では何も起こらない。被験者は、それを何度も繰り返されるうちに、赤いランプが点灯しただけで恐怖反応が起きるようになる。

しかし、犯罪者やサイコパスの人たちは、赤いランプの点灯も青いランプの点灯も、反応はほとんど変わらない。つまり、恐怖条件づけという学習ができない、ということがわかったのだ。

問題は、この「恐怖条件づけ」の学習がうまく働かない傾向は、「生まれ(遺伝的要因)」なのか「育ち(成長の過程で犯罪者になってしまうまでの環境的要因)」なのか? という疑問である。

人は生まれつき「良心回路」を持っている・・という仮説が成立するならば、将来的に犯罪者やサイコパスになってしまう人は、幼い子どもの頃から「良心回路」が働いていないのではないか?ということになる。

米国のGao博士たちの研究グループが、その疑問に応えるべく20年をかけて追跡調査を行ったという研究報告がある。

米国精神科学会発行「The American Journal of Psychiatry/2010; 167: 56-60.」の「小児期における恐怖条件付けの弱さは成人期における犯罪と関連するか Association of Poor Childhood Fear Conditioning and Adult Crime」


約1800人の被験者(3歳児)を集めて、その子どもたちに「恐怖条件づけ」の実験を行い、学習できるか、できないかのデータをとる。その後、20年後の23歳時に追跡調査を行い、その子どもたちが「犯罪を犯したか?」を確認する。

その結果、犯罪を犯していない人の場合は3歳時に「恐怖条件付け」を学習できているが、犯罪を犯した人の場合は3歳時の「恐怖条件付け」学習がほとんどできていない・・ということが明確に示された。結論として、犯罪の成因に神経発達障害(扁桃体・腹側前頭前皮質の機能不全)が関与するとしている。

と いっても、こうした「良心回路」の働きの問題が「遺伝的・生得的」なものであるのか、または3歳までの「育ち(環境)」のせいなのか、この実験結果では特 定できない。犯罪を犯しやすい要因として、3歳の幼少期から良心回路の欠陥、という問題がすでにあることを示してはいるが。


この研究論文のいくつかの問題点。

犯 罪者を扱うというかなり微妙な問題を含んでいるので、「恐怖条件付け」のできなかった子どもたちの何%くらいが犯罪を犯したか?についてのデータは発表さ れていない。また、犯罪を犯した人たちについて、犯罪の詳しい内容や、1回だけの犯罪か何度も再犯を繰り返しているのか、に関しても言及はない。

編 集者も研究結果の悪用や誤用を懸念して、「実験結果は、犯罪者になるのは運命として変えることができないという証拠を示した・・と誤った解釈する人がいる かもしれないが、その考え方は間違っている。神経系の性質の中で最も重要な性質は、その可塑性にある」というコメントを載せている。



繰り返し犯罪を犯す、サイコパスや反社会性パーソナリティ障害の人は、心の葛藤がない。
悩むこともない。行為は単純な行動原理にもとづいている。
したがって、矯正や更正については難しいといわざるを得ない。  

犯罪者も含め、心に葛藤のある人は、悩む。
強く複雑な葛藤であればあるほど、悩みは深化する。
だからこそ、葛藤し、悩み苦しむことで、どこまでもどこまでも変容してゆくことができる。


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