『パーソナリティ障害』(2) | すべてはうまくいっている! 光と心の調和

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『パーソナリティ障害』になる原因
なぜパーソナル障害になるのか。

ふつう病気になる原因として、遺伝的要因と環境的要因の二つの関与が考えられる。

遺伝的因子の影響を調べる場合、一卵性(遺伝的に同一)と二卵性(遺伝的に他の兄弟と同等)の双生児による研究がある。同じ遺伝子因子、同じ環境という条件が揃うので、より正確なデータを得ることができる。

その結果によると、パーソナリティ障害に遺伝的要因が占める割合は5割程度であり、他の肥満や高血圧、統合失調症の8割~9割と比べるとかなり低い。つまり、パーソナリティ障害においては、環境的な要因が半分を占め、それだけ環境が重要なカギとなっている。

『パーソナリティ障害』と環境的要因
人は生まれてから成人するまで、どのような段階を経て発達成長していくのか。それはそのまま、どのような環境(成育環境)で育ったか、を考えることになる。

●人の発達段階
誕生 ~ 2週間 まで      新生児期
2週間 ~ 9ヶ月 まで     乳児期
9ヶ月 ~   2歳 まで       乳幼児期
2歳 ~   6歳 まで         幼児期
6歳 ~   12歳 まで       児童・学童期
12歳 ~ 19歳 まで      青少年期(思春期~青年期)         
20歳 ~                      成人期
(この発達段階は厳密なものではなく、ある程度の目安です)


●新生児期~乳児期 (誕生~9ヶ月)
生まれ落ちた赤子にとって、部屋が100ある王宮であろうが、馬小屋であろうが、ほとんど関係ない。そういった物質的環境はそのまま受け入れ、適応することができる。

最も重要な環境は『愛情と保護』を受けることができるか、ということ。人として成長してゆく上で、人格形成の根幹となるのが、自分が安全に守られている存在であり、より大きな存在としっかりつながっている、という安心感。それをを心と体で身につけるのが乳児期の子どもの課題となる。
アメリカの精神分析学者のエリクソンは、これを『基本的信頼』といっている。

以前、児童精神科医の佐々木正美先生の講演でお聴きした、ひじょうに印象に残っている話しがある。

かなり昔、イギリスの乳児院で数十人の乳児を研究対象として、成人するまでの追跡調査を行ったという。当時は今ほど人権意識が高くはなく、だからできた実験研究でもあったそうだ。

乳児数十人をA・B2つのグループに分け、それぞれの部屋に寝かせる。

グループAには、昼間であろうと夜中であろうと、乳児がほぎゃ~と泣けば抱き上げてミルクを与える。24時間、泣いてほしがるままにそのつど抱き上げ与える。

グループBには、本来の乳児院の規則通り、朝から夕方までの間、決められた時間に抱き上げてミルクを与える。夜中には、いくら乳児たちが泣こうがミルクを与えない。

以上を、乳離れするまで続けたという。
ブループBの乳児たちは、最初のうち、夜中でもミルクが欲しくなると泣いていたが、ミルクをもらえない日が続くにつれ、あきらめて徐々に泣かなくなっていったという。(なかにはいつまでも泣き続ける乳児もいたが、彼は特別根性のある性質だったらしい。)やがて数週間が過ぎると、Bグループの乳児は、まったく夜泣きをしなくなった。

一見、Aグループの乳児たちは我が儘に振る舞うことを覚えたかのように見え、Bグループの乳児たちは、夜中にミルクをもらえないことをきちんと学習したかに見えた。

その後の追跡調査で、様々なことが分かってくる。

Aグループの子どもたちの多くは、他者に対する信頼感を身につけており、自分を信じることのできる人間に成長した。成人してからも努力を怠らずに能力を発揮し、それぞれにふさわしい職に就き、コミュニケーション力をもった一人前の社会人となった。

Bグループの子どもたちの多くは、人に対する信頼感が育まれておらず、疑い深い人間となり、自分に対する自信も欠如していた。すぐにあきらめやすく、職を転々とし、社会の一員としての責任を果たすことに困難を生じた。

もちろん、A・Bとも例外なく全ての子どもがそうなった訳ではなく、あくまでも統計として出た結果である。

ミルクが欲しいと泣いた瞬間に抱き上げられ、ミルクを与えられた乳児たちは、すぐに自分の要求を受け入れてくれた世界(他者)に対し、基本的信頼を育むことができた。

一方、ミルクがほしいと泣いても泣いても与えてもらえなかった乳児たちは、世界(他者)に対する基本的信頼を育むことができず、泣くのをあきらめた時点で、世界に対する不信、不安、絶望を芽生えさせていた。

岡田尊司氏の『パーソナリティ障害』にも、イギリスの児童精神科医ウィニコット氏の研究報告が紹介されている。以下抜粋。

「情緒のトラブルを持つ子どもが、赤ん坊の頃からすでに情緒的発達に問題を抱えていたことに気付いた。それらのケースでは、母親がさまざまな理由で、子どもに全面的な愛情を注げていなかった。ウィニコットは、子どもの自我が健全に育まれるためには、、彼が「母性的没頭」と呼んだ、子どもと一体化した(母親の)熱中が何よりも必要であり、(略)愛情と世話によって、子どもは自分の存在を、連続性を持った確かなものとして感じられるようになる」(p47)

人は、人生の始まったその瞬間から、生育環境によって大きな影響を受け始めていることがわかる。

私の大好きな言葉、『人は環境の奴隷ではない。』も、それゆえ意味を持ってくるのですが。(つづく)

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