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【第18話】店長が起こした事件⑤

断崖絶壁の崖の上。

ここから一気に転げ落ちることが決定。



足を踏み外すのは案外簡単だった。

ちょっとした気の迷い。

ちょっとした何かが店長をそうさせてしまった。



普通の人であれば何も起きなかったと思う。

なぜなら普通は断崖絶壁の崖の上にいることはない。

しっかりと大地を踏みしめて生きていれば問題ない。





その日も常連さんの女性アイドルからの注文が入ったので

決まったように店長が自ら配達に行った。

その日も往復1時間の距離を2時間以上掛けて配達していた。




配達を終えた店長はすぐにバックルームに戻って行った。

これもいつもの行動だった。




通常であれば私たちアルバイトは配達を終えるとすぐにレジに行って

配達して受け取ったお金を精算する必要がある。




いつもであれば何も気にせずに

スルーしていたことだったかもしれない。




だけど日々借金に追われて

まともに御飯も食べずに疲れきっていた店長のことを思って

アルバイトのT君がバックルームにいる店長のもとに行った。



疲れている店長の代わりに配達して受け取ったお金を精算するためだ。





この瞬間、すべてが終わった。




店舗の閉店




失業




離婚




このすべてが店長を襲うことになる。





いつもならスルーしていたことだったが

T君は善意で店長のところに行ってしまった。




「店長。お疲れ様でしたー。代わりにレジ精算やっときますよ!」




あとから聞いた話だが、この時の店長の慌て方は異常だったという。

不意打ちを食らったかのように訳の分からないことを言い出した。





「店長・・??」


「何をしゃべってるか訳わかんないです・・」




逆にT君も状況を把握できずにこんな感じの会話になった。

店長からすれば完全に不意を突かれた。




気のゆるみ。



T君からの問いに対して返答を間違えた。




それが破滅への懸け橋になった。




「店長。ポーチどこにあるんですか??」




T君は再度、店長に聞いた。

ポーチとはデリバリーのときに持っていくお金の入ったヤツだ。

当然、お客様からもらった代金もここに入っている。




「店長!?」




なんとなく怪しさを感じたT君は強引に店長の引き出しを開けた。

この瞬間、『どん底』行きの電車がめでたく開通。





引き出しの中から出てきたものは

未処理のデリバリー用のレシートの束。





「店長!これなんですか!?」



「あれ!?これ全部、●●さんのヤツじゃないですか!?」




●●さんとは常連さんの女性アイドルのことだ。




「これも!これも!全部●●さん」


「これ全部、精算してないってことですよね!?」




T君は私や他のアルバイトスタッフをバックルームに呼んだ。

そこからは質問攻めの嵐。




「この場から消えてなくなりたい。」



店長はきっとこう思ったことだろう。

嵐のような質問攻めは永遠と続いた。




質問攻めの台風が通り過ぎた後には

見るも無残な放心状態の店長と

店長を破滅へと導く『ある事実』だけが残った。




その事実は私たちアルバイトスタッフ全員をしらけさせた。






常連さんの女性アイドルからの注文金額は

一回当たり4万円~5万円ほど。



毎回店長が自ら配達に行く。



配達に行くとお金を受け取らずに商品と交換で

あるもので払ってもらっていたというものだった。





店長はその「あるもの」までは詳しくは答えなかった。




店長は口を閉ざして教えてはくれなかったが

おそらく体で払ってもらっていたのだとスタッフ全員が理解した。



数十万円分もの未処理のレシート。

その行為は何度も繰り返し行われていた。




今まで店長を心配していたのが馬鹿らしくなった。

もっと店舗を良くして少しでも店長が楽になるように頑張ろう。

そんな思いは一瞬で吹き飛んだ。




従業員全員が裏切られらたような感覚になった。

私もその一人だった。






この事実が本部に伝わるまで時間は掛からなかった。

店長の味方をするスタッフはもう誰もいなかった。







それから1ヶ月後、店舗は閉店することになる。





>>第19話へ続く・・
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