『なんぞころびやおき さいはひよいち篇』
⑮
峠杣一日・著
辺り一面に渦巻(うづま)いて、滾々(こんこん)と降り頻(し)く花吹雪。
「えい、前が見えねえ!
マドーを見失っちまったぢゃんか!」
苛立(いらだ)つお冥(おみゃう)の視界に、ちらと意宇櫻のお咲(いうざくらのおさき)の姿が入った。
お妖(おえう)とお卅美(おみみ)も一緒に居る。
「お咲!
お前の仕業(しわざ)だったか!
このバカみたいな櫻……うおおっ!!」
櫻吹雪の大波が押し寄せ、お冥を呑み込んだ。
と思ひきや、特大鉤手裡剣(とくだいかぎしゅりけん)にすっと立ち、ビッグチェリーウエーブを従へる波乗りお冥。
見霽(みはる)かす、淡紅(たんこう)の大海原(おほうなばら)!
空も青いぜ!
「む!
やあ!」
櫻の大海の波間にちかちかする光の玉を見つけたお冥、的を射(い)るやうに一直線に突進する。
無論、琥珀丸(こはくまる)のつるつる頭である。
人生といふのは、今は仮に人間、位の身軽さもあるといいね。
【よいこのみんなの合言葉を唱へよう♪】
〽️
いやさかえ
いのちいやちこ
さいはひよいち
まほらとこいは
みつのたま
南無あれかし大明神
南無あれかし大明神
南無あれかし大明神
つづく。