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峠杣一日・著
喫茶(きっさ)よもつ鏡(かがみ)。
鉤手裡剣のお冥(かぎしゅりけんのおみゃう)、猫ま三味線のお妖(ねこまじゃみせんのおえう)、観音手鞠のお卅美(くわんおんてまりのおみみ)が集まり、頭を抱へて歯を食ひ縛ってゐる。
「あのさあ、あんた達ちょっと落ち着いて食べなよ」
欠氷(かきごほり)と取っ組み合ふ三人に呆れる同年代らしき娘はお咲(おさき)、あの意宇の桜(おうのさくら)の化身(けしん)である。
三人の助けで迷妄念々(めいまうねんねん)の呪縛(じゅばく)を解(と)かれて後、よもつ鏡で働いてゐた。
で、「氣嶋法師(けのしまほふし)ならちょいちょい来るよ」と聞いた三人が駆(か)け付けたところであった。
「それにしても暑い!
手裡剣も生毛(うぶげ)も発火(はっくわ)しさうな暑さだぜ」
「もう汗だく。
よもつ温泉ってなかったっけ?
お卅美の如意(にょい)でちょいと地面突いても出ないの?」
「そんな訳ないでしょ。
私はいっそ欠氷の体になりたいわ~」
おつむも蕩(とろ)ける、そんな真夏の一齣(ひとこま)。
「あら、いらっしゃい」
すは、暖簾(のれん)を潜(くぐ)って来客あり。
果たして!?
【よいこのみんなの合言葉を唱へよう♪】
〽️
いやさかえ
いのちいやちこ
さいはひよいち
まほらとこいは
みつのたま
南無あれかし大明神
南無あれかし大明神
南無あれかし大明神
つづく。