⑫
峠杣一日・著
八柱(やはしら)の龍神が巨石に塒(とぐろ)を巻きながら、ひとつの壺(つぼ)の形に変はってゆく。
雲に乗った八岐彦命(やまたひこのみこと)と八岐姫命(やまたひめのみこと)が、壺の口に吸ひ込まれるやうに入って行った。
巨石の頂(いただき)に居る氣嶋法師(けのしまほふし)と三人娘(幸ひ梟鉤手裡剣のお冥(さいはひふくろふかぎしゅりけんのおみゃう)、招き猫猫ま三味線のお妖(まねきねこねこまじゃみせんのおえう)、睦び兎観音手鞠のお卅美(むつびうさぎくわんおんてまりのおみみ))もまた、空間ごと壺の中へと呑み込まれた。
大地を離れ、中空へ舞ひ上がる龍神の壺。
その姿は、やあ、瑤大蛇(たまをろち)である。
日の本(ひのもと)の故郷、やまたのくに(八岐國)の魂だ。
それは取りも直さず常の理(とはのことわり・永久の理)たる三つ子の魂であり、意宇社(おうのもり)はその揺籃(えうらん)たる斎場(ゆには)である。
世の大地たる宇宙に、三つ子の魂(一いち)が芽生(めば)えた。
則(すなは)ち大地に一(いち)が生じて、ここに芽出度(めでた)く天地(あまつち)が開(ひら)けた。(天地開闢てんちかいびゃく)
常の理を育む人間にしか、天地は存在しないのである。(天の石戸あまのいはと開き)
さ(外なる神・自然)と、い(内なる神・先祖)とで、とはのさいのかみ(常幸神)となる。
そんな理(ことわり)をも示してゐるのが、瑤大蛇(日々観音にちにちくわんおん、常磐大神とこいはのおほかみ、あれかし大明神などとも呼ぶ)
なのである。
【よいこのみんなの合言葉を唱へよう♪】
「私(うち)が三味弾いてあげるわ」(お妖)
〽️
いやさかえ
いのちいやちこ
さいはひよいち
やまたとこいは
おほみかみ
南無あれかし大明神!
つづく。