⑥
峠杣一日・著
い:内に鎮(しづ)まる(働く)命、意(おもひ・い)、意宇の社(おうのもり)。
さ:外に鎮まる命、眞(まこと・さ)、室原山(むろはらやま)。
両者を貫(つらぬ)く生命の大黒柱(だいこくばしら)を言御柱(いふのみはしら)と呼んだ。
其処(そこ)に鎮まるのはいざなぎいざなみ(精神と肉体)、いさのきとみで生命たる君神(きみのかみ)。
また君(中核・とはのいのち)は幹(みき・主軸)となり、八百萬(やほよろづ)の実りと睦(むつ)ぶ道祖神(さいのかみ・塞の神)となって私達を見守ってゐる。
私達の意(おもひ)が、君(私達を生かしてゐる力)の眞(まこと)とひとつになるやうに……。
「お妖(おえう)!
見付けたぜ!」
意宇(いう)の川面(かはも)を波立たせて飛来(ひらい)した一羽の梟(ふくろふ)が、ふはりと舞ひ降り乍(なが)ら人間の姿に変はる。
「あらなあに、お冥(おみゃう)。
そんなに血相(けっさう)変へちゃって。
おお、恐いこはあい」
と戯(おど)けてぺろり舌を出す、お妖と呼ばれた玉結び髪の女。
鉤爪(かぎづめ)の手裡剣(しゅりけん)を構へるお冥(兇冥きよみ)と意宇川(いうがは)を挟(はさ)んで対峙(たいぢ)し、三味線(しゃみせん)の撥(ばち)を握(にぎ)ってゐる。
やがて鉤手裡剣のお冥(かぎしゅりけんのおみゃう)と猫ま三味線のお妖(ねこまじゃみせんのおえう)、二つの水鏡(みづかがみ)が眩(まばゆ)く砕(くだ)け散った。
【よいこのみんなの合言葉を唱へよう♪】
いちよあれかし、さいはひよいち。
まほらよいちそはか、南無あれかし大明神!
いのちいやちこ、いやさかえさいはひよいち。
つづく。