(30)
峠杣一日・著
「ふほう!
人間共の悪足搔(わるあが)きも、それまでよなう。
所詮(しょせん)はその程度、最後に勝つのは暴力だけぞ。
暴力こそ我が正義!
暴力こそ我が命!
暴力こそ我が神よ!
暴力バンザイ!
破壊バンザイ!
ざまあふほう!
ざんまあふほう!」
梟鏡藁人形(けうきゃうわらにんぎゃう)の頭頂円形部(とうちゃうゑんけいぶ)が、再び暗闇(くらやみ)の眩(まばゆ)さを浮かび上がらせる。
兇闇皇帝(きょうあんくわうてい)渾身(こんしん)の一撃が、常(とは・永久)の勾玉宝船(まがたまたからぶね)たる島根半島(しまねはんたう)を狙(ねら)ふ。
「梟鏡、梟鏡……
灰燼、灰燼……」
邪眼(じゃがん)の渦(うづ)の梟鏡念仏(けうきゃうねんぶつ)が声高(こわだか)に昂揚(かうやう)して、夕焼けの空を浸蝕(しんしょく)してゆく。
「喰(く)らへ!
梟鏡灰燼砲(けうきゃうくわいじんはう)発射!!」
とその時、射出(しゃしゅつ)しかかった腐眼弾丸(くされめだま)に何か赤い塊(かたまり)のやうなものが飛び込んだ。
「ぷぽおおおおおおおおおっっ!!!」
梟鏡藁人形の頭頂が、烈(はげ)しく発火(はっくわ)した。
翻筋斗(もんどり)を打って脳天(なうてん)を海中に突き刺すと、鈍(にぶ)い爆音と共に水芸(みづげい)よろしく全身の彼方此方(あちこち)から水柱(みづばしら)が立った。
まるで、水上に生(は)えた珍妙(ちんめう)なサボテンだ。
そして、夕陽(ゆふひ)の中には何者かの影が!
はて宙(ちう)に浮かぶそれは、これまた奇天烈(きてれつ)な巨砲(きょはう)の姿。
クサレメダマを撃(う)ち抜いた砲身(はうしん)に違ひない。
【よいこのみんなの合言葉を唱へよう♪】
いちよあれかし、さいはひよいち。
まほらよいちそはか、南無あれかし大明神!
つづく。