『なんぞころびやおき 女神御前篇』
(28)
峠杣一日・著
虫取り網を手に宙に浮く小蛇娘(ころちむすめ)のお嶺(おみね)を、予期せぬ事態に口ぽかん、唖然(あぜん)として眺める一日翁(いちにちをう)達。
はっと視線に氣付いた小蛇娘(ころちむすめ)のお嶺(おみね)、双方(さうはう)凍(い)て付く永遠とも感じらるゝ一瞬。
お嶺(おみね)が、決まりが悪さうにえへゝと笑ひ…。
「わあい、逃げろっ。
だるまさんがころんだっ!」
虫取り網をほっぽり出して雲路(くもぢ)を走ると、はたと時間が動き出した。
「ちょゝゝっとあんた達、あれ捕まへてっ!
とっとゝ月虹豆鉄砲(げっこうまめでっぱう)!」
螢火のお総(ほたるびのおふさ)がびしっと号令(がうれい)を掛けるが、豆鼕翁(とうゝゝをう)も一日翁(いちにちをう)も余一(よいち)も前(さき)の氣剣術(きけんじゅつ)の痛手(いたで)でへろゝゝ、あたふたずっこけ透かしっ屁(すかしっぺ)、豆鼕変化(とうゝゝへんげ)も無理。
「はあっ?!
此の、すかたんトリオがっ!」
そんな喜劇(きげき)なあれかし山の頂(いたゞき)を尻目(しりめ)に、小蛇娘(ころちむすめ)のお嶺(おみね)は一目散(いちもくさん)に山を離れようとしてゐたのだが…。
![190828_163840.jpg](https://stat.ameba.jp/user_images/20190828/16/cocochiyosa/72/60/j/t02200165_4128309614555642503.jpg?caw=800)
つゞく。