『なんぞころびやおき 女神御前篇』
⑩
峠杣一日・著
どうした事か、無人かと思はれた車内にはごった返す程の乗客が居た。
そして皆、何とも穏やかな表情で列車に揺られてゐるのだ。
トンネルを抜けて暫(しばら)く走ると、天に聳(そび)える室原山(むろはらやま)が見えて来た。
列車は、山腹の急勾配をスイッチバックを使ってぐんゝゝと登って行く。
おっと、前方を行くのは豆鼕列車(とうゝゝれっしゃ・でんゝゝぽっぽ)。
また、線路の横をループ方式道路でぐるゝゝと室原山へ向かってゐるのは豆鼕翁(とうゝゝをう)の姪っ子(めひっこ)・お豊(おとよ)が豆鼕変化(とうゝゝへんげ)した豆鼕四輪(とうゝゝよんりん・でんゝゝぶうゝゝ)である。
やゝ、氣付いて見れば、線路、道路、空路にも、目を疑ふ摩訶不思議な乗り物や飛行物体が無数にあり、一様(いちやう)に室原山の山頂を目指してゐる。
(現在の木次線・出雲坂根駅~三井野原駅、奥出雲おろちループ、三国山か?の辺りである)
つゞく。