『なんぞころびやおき』
(61)
峠杣一日・著
真っ暗闇にぽかりと穴が開き、ぐんゝゝ大きくなる。
自分自身を呑み込まむばかりの、毛助(けすけ)の大欠伸(おほあくび)である。
もそゝゝと床を出て縁側に胡坐(あぐら)をかき、昇り行くお天道様を眺めてゐる。
「やれゝゝ、お目覚めかいな」
「其れにしても、よく生き廻(めぐ)れたもんだねえ」
様子を見に来た、山刀斎(さんたうさい)と妻のお光(みつ)。
「いやあ、助かりましたあ。
わあはゝゝゝゝ」
何ともけろりとした満面もじゃゝゝゝ恵比須顔の毛助(けすけ)に、思はず釣られ笑ひとなるのだった。
其の笑ひ声に、蓮権現転何(はちすごんげんころびなんぞ)達も又候(またぞろ)釣られてやって来るのであった。
つゞく。