あれかし大明神
~扨抑物語 第二幕 74
峠杣一日・著
七十四、
鏡糸(かゞみ いと)は、祖母の御伴(おとも)で大根島(だいこんじま)に来て居(ゐ)た。
中海(なかうみ)を模(も)した池一杯に牡丹(ぼたん)の花が浮かぶ、天上(てんじゃう)の庭園。
老若男女、すっかり福を給(たま)はる。
因みに牡丹、古老が言ふには、
「薬効(やくかう)は根っ子にあり。
大地(牝)にしっかりと根(牡)を下ろす姿は精神の如し。
愛(め)でるは花(丹)なり。
高貴(かうき)なる姿は、一(いち)を咲かせる。
花の神の如し」と。
「立てば芍薬(しゃくやく)座れば牡丹、歩く姿は百合(ゆり)の花。
女(をんな)は門開(かどびら)き、一(いち)の花の心持ちだよ」
趣味のデジタルカメラを構へつゝ、着物姿の祖母が言ふ。
糸(いと)も着物でポーズ、一寸(ちょっと)した晴れの舞台だ。
つゞく