『あれかし大明神』(扨抑物語 第二幕 38) | 『さいはひよいち』日本古来の人生観 常の理三つ子の魂 島根半島は勾玉宝船 山陰(島根鳥取)はたまをろち瑤大蛇 あれかし山の峠杣一日・著

『さいはひよいち』日本古来の人生観 常の理三つ子の魂 島根半島は勾玉宝船 山陰(島根鳥取)はたまをろち瑤大蛇 あれかし山の峠杣一日・著

島根県松江市東出雲町、あれかし山の峠杣一日です。
島根半島(島根島)は勾玉宝船、山陰(東方鳥取瑠璃光藥師少彦名神、西方島根極樂阿弥陀大国主神)は瑤大蛇(たまをろち)。常の理(とはのことわり)あれかし大明神鎮まる意宇の古都から常の親子(085)の物語を書いてゐます。


あれかし大明神
~扨抑物語 第二幕
峠杣一日・著


三十八、

『これ、何(なんぞ)。転何(ころびなんぞ)よ』

誰かゞ、彼を呼ぶ。

虚(うつ)ろな目を開くと、闇夜に丸い月が掛かってゐる。

ぽつり、と月から雫(しづく)が落ち、何(なんぞ)の口に入った。

喉(のど)に沁(し)みるは末期の水(まつごのみづ)か、と目を閉ぢる。

『これ、何(なんぞ)。転何(ころびなんぞ)よ』

再び目を開きかゝると、灼熱(しゃくねつ)の炎と燃え渡る太陽が視界を埋(う)め尽くした。

目を皿にした、転何。

闇(くら)がりで良く分からないが、仏像らしき朧(おぼろ)が浮かんで見える。

仏堂であるらしい。

『まだ、生きて居るのか』

静かにさう思ひ、起き上がらんとするも、全身が重く、力が出なかった。

『また、眠りをったか』

和尚の言葉に、二人の童子が頷(うなづ)く。

つゞく