ワタシとキミがオワルマデ④まやかしの幸せは終わる | エルネア王国モニカ国の暮らし。

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エルネア王国の日々の備忘録です。妄想もかなりあります。モニカ国。他のゲームの事も気ままに書いていこうと思います。
多忙のためのんびり更新中です。アイコンは旧都なぎ様のきゅーとなクラシックメーカーより。

任天堂Switch版エルネア王国をもとに書いています。





223年14日


夏の暑さがエルネア王国を包み込む。


かなり積極的な年上のステファニーさんからのプロポーズでチレーナはスピード結婚することになったと風の噂でスピカは知った。


チレーナからも会いに行ってはいるようだが、ステファニーさんからが圧倒的に多いらしく、いつも彼女がチレーナを引っ張っていた。


「彼女はスピカちゃんの代わりでしかない」


その言葉通りなのか、チレーナは結婚が決まっても相変わらずスピカの元へ通っていた。


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結婚式当日


ゲロルドはこれから結婚する息子が出かけようとするところを呼び止めた。


チレーナ

「なんだい、父さん」


ゲロルド

「おめでたい日に言うことではないが……結婚するのだからスピカ様と会う回数を減らした方がいいんじゃないか」


チレーナはため息をついた。父親の苦言に対して不服な心境を隠す気がない。


ゲロルド

「ステファニーさんの事も考えなさい」



チレーナ

「俺は、最低限の責務は果たしてるよね。子供さえ作って跡継ぎさえ出来れば問題ないはずだ」


ゲロルド

「……チレーナ」


チレーナ

「じゃあ、行ってきます」


まだ何か言い出そうな父親を残して家を出る。


空は雲一つない青空が広がっていた。


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結婚式



スピカの隣には姉セシリアの姿が。

セシリアの存在はスピカにとって心強かった。












スピカは笑顔を貼り付けて2人を祝福する。


結婚式が終わり、スピカはただそこに居ただけだというのにドッと疲れを感じた。



神殿の出口のほうを見ると、ステファニーとチレーナが仲睦まじく話をしているのが見えた。


「じゃあ、これから仕事だから先に帰っててね」


ステファニーにそういった後、チレーナはスピカと目が合った。彼は小さく手を振って去っていく。


チレーナの結婚式という拷問にも似た時間からようやく解放された。


チレーナはやはり変わらずスピカの元にやってはくるがさすがに頻度は減った。


そのうちステファニーさんが妊娠したことがスピカの耳にも入る。


なんだかんだ仲が良い。



季節は秋へ移る


チレーナの祖父ジェフさんが亡くなった。

スピカが葬儀に行くと、チレーナが消沈している姿に胸が痛んだ。思わず声をかけると


チレーナ

「スピカちゃん……会いにきてくれて嬉しいよ」


力なく笑う様子が痛々しくてスピカはその日しばらくチレーナと一緒に居た。




年は224年に代わり、再び夏がやってきた。



ミラー家の跡継ぎが生まれたのは、収穫祭の翌日の初夏のことだった。



それから数日後の夕刻。


スピカはなんとなく、ミラー家の前にきてしまった。


スピカ

(ステファニーさんと鉢合わせしたらどうするの……なんできちゃったんだろ……)


家の前で悶々としていると、


「なにしてんの?」


振り返ると、母リンゴが立っていた。


スピカ「えっと……」


リンゴ

「スピカもアリーチェちゃんに会いにきたの?一緒に行こうか」


アリーチェというのはチレーナとステファニーの娘の名前らしい。


リンゴはスピカの腕を掴むとスピカの返事を聞かずミラー家に突撃する。中にはゲロルドがいて作業をしていた。


ゲロルド

「王妃様、それにスピカ様」


リンゴ

「こんにちは〜アリーチェちゃんの顔見にきました〜」


リンゴはその場にいるだけで周りを明るくする不思議な力というか華やかさがある。

ゲロルドもリンゴの訪問を歓迎しているようで表情を和らげた。


ゲロルド

「ありがとうございます。王妃様とスピカ様に会いにきていただけるなんてアリーチェは幸せ者です」



案内された2階の寝室に、青髪の赤ちゃんが横たわっていた。


人の気配に気づいたらしく、ぱちりと大きな青い目を開けてリンゴとスピカを不思議そうに見ている。



リンゴ

「可愛い〜」


リンゴはそっとアリーチェを抱き上げた。アリーチェは嬉しそうに笑う。



リンゴ

「バーニスちゃんのひ孫を抱っこ出来るなんて、嬉しいなぁ」


リンゴの言葉にゲロルドは少し目を見開き、そして優しげに微笑んだ。


バーニスというのはゲロルドの母で、リンゴの親友だった人物だ。

とても可愛らしい人だったとスピカは聞いている。


リンゴ

「スピカも抱っこしてみる?可愛いよ」


スピカ「えっ……」


まともに返事もしないうちに、アリーチェはスピカの腕の中にやってきた。


暖かくてミルクの香りがする。


まるで硝子細工を扱うようにスピカは緊張した面持ちでアリーチェを抱いていた。


「あーぅ」


無邪気にスピカに笑いかけるアリーチェ。


その姿に、無垢な存在に、



スピカはいろんな感情が渦巻いた。


自分には、作ってあげれなかったチレーナの子供、そしてこの可愛らしい子を、自分の存在がきっと不幸にする。


それはスピカの家庭環境から分かっていた。



『結婚しても俺の一番はスピカちゃんだよ』



ーーーだめだって、チレーナ君。


家族を一番に思わないと。



「本当に……可愛い……赤ちゃん」


涙声のスピカをリンゴとゲロルドが驚いて見ている。


まやかしの幸せは終わった。

とっくに終わっていたんだ。


それを当人たちが受け入れず、まだ続いていると錯覚していた。




なんて愚かなのだろう。




なんて自分勝手なのだろう。



アリーチェをリンゴに渡すと、スピカはミラー家を逃げるように後にした。



「私のバカ……」


ゲロルドがいる前だというのに、


スピカは涙を流していたのだ。


流れる涙を拭いながら、走った。


情けない

情けない


あの人はスピカの代わりだと言われても、スピカはあの人にはなれないしあの人には敵わないのだ。


その現実にもスピカは傷ついた。


傷ついた自分にも失望した。


もう何がなんだか分からない。



無我夢中で走っていると、腕を誰かにつかまれる。


「スピカちゃん!!」


チレーナがスピカの腕を掴んでいた。


少し息が上がっている。スピカを追いかけてきたのだろう。



ーーどうして今私を見つけるの。


最悪のタイミングなのか、最高のタイミングなのか。


スピカ自身よく分からない。



「何かあったの……?」


チレーナは心配そうにスピカの顔を覗き込んでくる。


スピカ

「チレーナ君……約束してほしいの」



チレーナ

「約束……?」


スピカは掴まれている腕を引き抜いた。チレーナが不安そうにスピカを見つめる。



スピカ

「いつかエルネア杯で優勝して、龍騎士になって」


チレーナ

「龍騎士……えぇ?!」


泣いている理由に繋がらない。チレーナは困惑した声をあげる。



スピカ

「私がこんなに好きになった人なんだもん。ただの隊長なんかで終わらないで!

そして……誰が相手であっても全力で戦って絶対勝って」


チレーナ「スピカちゃん…?」



スピカ

「お願い……約束して」


ーー自分が愛した人はこんなにも凄い人なんだと誇りたい。


これが自分勝手な私の最後の願い。



チレーナ

「うん、分かったよ。約束する」


龍騎士になることが簡単なことではないが、チレーナは力強く頷いた。



スピカのこの日から、

イマノルに教えてもらった秘密の場所には行かなくなった。


スピカなりのけじめだった。


゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――


それから間もなく、スピカの母リンゴが他界する。


失意のスピカを慰めてくれたのはアモスだった。



18日スピカが8歳になるとアモスからプロポーズされる。


アモスはとても緊張していた。


指輪の箱を持つ手が震えていた。



スピカはその手をそっと触れ、包んだ。



アモスとスピカの結婚式は23日になった。

偶然にも、チレーナの誕生日であった。











ヴェルンヘルの声は涙ぐんでいた。


チレーナ

「お幸せに!」


チレーナの声が最後に響く。


胸がしめつけられる思いで、スピカは前に進んだ。




結婚式が終わるとスピカは友人たちに囲まれお祝いの言葉をかけられる。


アモスも少し離れた場所で同じように友人と話していた。


少しするとセシリアがアモスと話をしている。その様子をなんとなくスピカは見ていた。


すると……



アモスは視線を神殿の奥へと向ける。その視線の先には山岳隊長チレーナの姿があった。

 

「あんな奴より、立派な男になってみせます」

 

その言葉は、周囲にいた人たちにも聞こえ皆が驚きの表情を浮かべた。

 

アモスの視線に気づいたチレーナが、その視線を受け止めてアモスを見つめる。

 

2人から不穏な空気が流れた。

2人の立ち位置はそこそこ距離があるにも関わらずお互いジッと睨みあっている。周囲からするとピリついたこの状況は恐ろしい。

 

どちらともなく、視線が外されアモスはセシリアに向き直る。その時にはいつも通りのすました表情に戻っていた。

 

「それでは失礼します」


アモスがスピカの元にやってきて、手を差し出してきた。スピカは何も気づいていないフリをして手を握り返す。


「じゃあ、帰ろう」

「うん」


スピカはアモスと共に神殿を出た。



一度新居に帰ったが、特にやることもないのでアモスとスピカはそれぞれ出掛けることに。


それぞれ心の準備もあるので、時間までに備えようということなのかもしれない。


スピカは落ち着かず、お風呂に行ったり図書館にいったりウロウロする。


夜になっても勇気がわかずすぐに帰る気が起きない。


ようやく家の前までくると、家には明かりがついていた。


アモスが先に帰っているようだ。


スピカ

(緊張する……)


家に入ろうとするとドアノブに何かかかっているのに気づく。

少し大きな紙袋だった。


「なんだろう……」


その紙袋の中身をみてハッとした。


蒼玉がちりばめられた黄金の香炉だった。


ピカピカと輝く豪華な香炉。


紙袋の中にはメッセージカードが入っていた。



『スピカちゃんへ


結婚おめでとう。大切な友の幸せを祈っている』




送り主の名前はなかった。


だが、スピカには送り主が誰なのか明白だった。


山岳兵しか作れない工芸品を送ってくるなんて誰でも出来ることではない。


スピカはその場にしゃがみ込んだ。


色々な思いが湧き上がってくる。




少しの間 

彼を想って泣く事を赦してほしい。




秋風が吹く中、スピカは人知れず涙を流した。




一緒になれなかった今も愛しい人を想って。








ワタシとキミがオワルマデ

まやかしの幸せは終わる


【完】



゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――


あとがき

本編はこちら⬇️となります。


224年 スピカの結婚



辻褄合わせが大変だったし、

合ってないかもしれないけど細かいことは水と風で流してほしい

なにより「終わり」が分かって、オワルマデ書かなきゃならないわけなので

精神的にキツかったお話。

誰が悪いのでしょうか、チレーナとスピカが悪なのでしょうか…?


このお話自体が伏線となります。


今後チレーナとスピカが辿る数奇な運命をきちんと綴っていけたらとら思います。


駄文を最後までお付き合いくださり誠にありがとうございました。