任天堂Switch版エルネア王国をもとに書いています。
「ティム君、練習試合しよっか」
「え、遠慮します!」
魔銃師が、若い山岳兵に絡んでいる。
緑髪の山岳兵の青年は、魔銃師から逃げるために走り出す。それを魔銃師は可笑しそう笑っている。
今から10年以上も前の出来事だった。
リンゴがティムとティアゴのそんなやりとりを思い出したのは……
ティムが危篤になってしまったからだろう…
この日、ティム・マルチネスが危篤になったいた。
4年前。ティアゴをガノスに見送った葬儀の日の寒さを思い出す凍晴の日のことであった。
ティムは朝から出かけていて、家に戻るのは昼を過ぎた頃だった。
なぜかイマノルの奥さんのヴィオレーヌさんが先導するように前を歩いている
黒い天使を肩に歩くティム君…
家に戻ったティム君を早速見舞う人。
心優しいティム君のことだ、彼には友人が多いことだろう。
食べやすそうなものを差し入れ。
イラリオに石掘りに誘われる。
このままずっとここにいるのは……と一度セシリアは退室することに。
セシリアと入れ替わりでイマノルとリンゴがティムの見舞いでマルチネス家に入っていった。
さすがのイマノルも表情は暗かった。
゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――
イマノル
「よぉ、具合はどう?」
マルチネス家に入ったイマノルはティムの前ではごく普通に振る舞っていた。
ティム「……まあまあかな」
椅子に腰をかけたまま、ティムは客人を振り返る。
リンゴとイマノルはティムの向かい側の席に座った。
イマノル
「お土産持ってきたんだけどみる?」
テーブルにどんと置かれた綺麗な装飾がついた箱。ティムはこれに見覚えがあった。
ティム
「また虫が出てくる箱だろ、勘弁してよ」
イマノル「あ、バレた?」
リンゴ
「ったく、イマノルはまたしょーもないことを」
リンゴは呆れた声を出した。
イマノル
「前にリンゴの前で出したら飛び上がってビビッとたんもんなーw」
当時を思い出しイマノルは笑い出した。
リンゴ
「あ、あんなものいきなり沢山でたら誰だってビックリするよ!」
イマノルの出した箱は、キャラバンで購入した他国のものだった。
開けると中から大量の虫の幻が出てくる魔法が出る他国の「こどものオモチャ」らしい。
イマノル
「リンゴは、驚きのあまりティアゴさんに抱きつくもんだからティアゴさんに怒ったリリーさんが剣を抜いてたりして騒ぎになったなぁ」
リンゴ
「もう!全部イマノルのせいじゃん!」
恥ずかしさで顔を赤くしながらムスっとする。
ティム
「リリーさんの怒りの矛先が何故ティアゴさんに向かったの?」
イマノル
「王妃さまならウェルカムだとか言ってたっけあの人」
ティム
(あの人は何考えてんだ……)
リンゴ
「ティアゴ君はふざけてよくそんな事を言ってたんだよ」
イマノル(本気だろうけどね〜)
ティム
(ふざけていたながらも冗談ではないだろうなぁ)
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リンゴ
「懐かしいね。あの頃は、みんないたのに…」
とは言っても、山岳兵団はバーニーやバーニスを含め4人亡くなり、エドモンドも失ったあとのこと。
ポツリと呟き、部屋に沈黙が流れる。
このおしゃべりの時間も、明日はもうやってこない。
ティム
「懐かしいといえば……」
流れ沈黙を破ったのティムだった。
イマノル「ん?」
ティム
「最近よく昔のことを思い出していたんだけど……俺がまだ山岳兵の時、ダンジョンでイマノルが魔人を大量に引き連れて来た時のことを思い出した」
イマノル
「あれはヤバかったよな〜」
リンゴ「そんなことがあったんだ」
(イマノル……私が知らないだけでドルム山でいろんな事をやらかしてそう…)
ティム
「ダンジョンに入ったらやたら焦ってる声がしてさ、前からイマノルが必死で走ってこっち向かってくるんだよ……怒り狂った魔人たちが大勢いてさ、あの時はここで死ぬんだと思った」
イマノル
「道連れにする感じになって必死にダンジョンの外まで逃げたんだよなー」
リンゴ
「魔人が怒り狂うってなにしたの?」
イマノル「色々悪戯を……」
リンゴ「アンタってやつは……」
イマノル
「まだ、若かったから仕方ないじゃん」
リンゴ
「やってること今と昔変わってないでしょ」
イマノル
「今はもっとうまくやってるさ」
なにをどううまくやっているのか知らないが。
リンゴ
「それでダンジョン出たら大丈夫だったの?」
ティム
「それが魔人はダンジョンの外まで追いかけてきて、50体は超えていたから大騒ぎになった」
ドルム山にも普段多くの国民が行き交っている。
巨大の魔人がダンジョンの外まで大量に出現したらパニックになるだろう。
リンゴ
「どれだけ怒らせたの……」
ティム
「たまたま近くで打ち合わせをしてきたバルナバさんとリリーさんとティアゴさんがいたからあとは周りの山岳兵で対処できたけど、誰もいなかったら大変なことになっていたと思うよ…」
攻撃に特化したバルナバに、素早い動きで魔人を翻弄するリリー、2人をサポートしつつ状況判断をしながら攻撃するティアゴ。
50体を超える魔人の大群は、この三人がいなかったら被害が出ていただろう。
リンゴ
(だからなにしたら魔人がそんなに群れて襲ってくるの……)
イマノル
「あの程度俺たちの敵じゃないってことだね!」
ティム
「運が良かっただけだって」
結婚してドルム山を降りてもイマノルとティムの交流はずっと続いていた。ドルム山で育った幼馴染。冗談を言い合う姿は、とても微笑ましくてリンゴは泣きそうになるのを耐えながら、話を続けた。
彼らが話せると時間は、あと僅かしか残されていない……
゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――
夕刻
マルチネス家にティムの姿はなかった。
大切な人に会いにいった帰りなのだろうか。
彼の姿は城下通りにあった。
ティムを見舞う人が絶えることはない。
しばらくするとティムは2階にあがり、ベッドに横になった。
みんな、心配かけさせたくなくて
こんな風に言うんだね……
そして夜……
姉のメーベルはまさかこんなな早く弟が逝くことになるなんて思わなかっただろうな…
ティムは家族に看取られ、ガノスに向かった。
ティム・マルチネス
山岳兵団マルチネス家に生まれる。
長子でなくても、有事の際には国のために戦うことを父バルナバから言われ、鍛えられていた。
実際訪れた有事の際は、山岳兵として参戦し、国と国民のために奮戦した。
穏やかな彼の人柄を慕う者は多く、好かれていたという。
203年22日〜223年28日没
享年20歳
あとがき
バルナバの息子、ティム。
バルナバが長生きだったのにたいして息子は短命でした…
山を降りてから、どこかに所属するかと思ったのですがティムは国民を貫きました。
有事の際には山岳兵として参戦する、そのスタンスでいたかったのかもしれません。妄想
妻のラナは騎士隊所属。奥さんがダンジョンにいる間はティム君が子供たちの相手をしてほのぼのとした毎日を送っていたのだろうと思います…
203年組、最初にガノスに召されてしまったのはティム君でした……
ティム君、お疲れ様でした