ヴェルンヘル・ラウル
リンゴ・ラウル(旧姓フォード)
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220年
王家の居室
ヴェルンヘル陛下は、ベッドの上で目を閉じ眠る妻の横にいた。
その頰に触れる。
触れられている本人はピクリとも動かない。
ただ眠っているようにみえて、だんだん弱っていることをヴェルンヘルは察していた。
「陛下……いわれたものお持ちしました」
神官の手から渡される深緑の布。
神官
「そんなもの、何に使うのですか?」
ヴェルンヘル
「………………ただの気休めかな」
ばさりと広げ、眠る妻の身体に被せる。
「ーーなにが国王だ。妻1人守ることができないくせに」
苦しげに呟くとヴェルンヘルは俯いた。
神官
「陛下……」
なんと言葉をかければいいのか分からず、己の無力を嘆く国王を見つめる。
そこに、訪ねてきた者が1人。その人物を見て神官の顔が曇った。
??
「ヴェルンヘル国王にご挨拶申し上げます」
やってきた人物は丁寧に、洗練された仕草で国王に挨拶をする。
ヴェルンヘル
「お待ちしておりました」
神官「………陛下」
神官の表情は暗い。
ヴェルンヘル
「神官殿は、部屋の外へ。俺に何かあれば、この人を国外へ送ってほしい」
神官
「俺は………反対です」
ヴェルンヘル
「ーー頼んだよ」
神官の肩にぽんと手をのせる。神官はしぶしぶという風に頷き、部屋の外に出ていった。
??
「………………本当によろしいのですか?」
神官の消えた方を見ながら黒衣を纏った者が訊ねる。
ヴェルンヘル「はい」
テーブルの上に、袋を置く。音からして、お金が入っている。
ヴェルンヘル
「約束の報酬です。ーー始めてください」
迷いのない瞳を黒衣の者に向ける。
??
「……分かりました。準備をするのでお待ちください」
王家の居室に不気味な静けさがおとずれた。
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ヴェルンヘル殿下が空を見上げ、目を見開いた。
ヴェルンヘル
「結婚式………出来ないかもしれない」
不気味なほどに静まり返っている。
風の音一つ聞こえない。
空に浮かぶ、大きな一つの眼玉。ギョロリと私を見るとニタリと笑う。
あぁ……
終わりがやってきた。
とうとう終わりがやってきたのだと私は悟る。
一つ目の怪物は、私を見つけるとニタリと笑った。
私をこの幻想郷に留めた原因なのか、これが門番なのか………
一つ目の怪物の背後は、なぜかなにもなかった。
一つ目の怪物の後ろにはエルネア城があるはずなのに、真っ白な白すぎる世界が広がっている。
それがなにを意味しているのか、理解した途端ゾッとした。
私には、この世界で明日を迎えることはきっと出来ない。
この怪物は、私を消すために存在している。
ヴェルンヘルが私の腕を掴んだ。
ヴェルンヘル
「逃げよう!!」
静まり返った城下通りを駆け出した。
ウェディングドレスを着ている私は思うように走れない。
後ろから甲高い音が響きわたり、私のすぐ横を光が掠めていく。
光が当たった地面がひび割れ、爆発した。その衝撃で私はバランスを崩し、地面に叩きつけられる。
一つ目の怪物は、すぐそこまで迫っていた。
一撃でもくらえば、私の存在はきっと消えてしまう。
一つ目の怪物からピカっと光が発せられる。
私を消す光だ。
こんなに速い攻撃、避けられない……
「まったく、
いつになっても手のやけるやつだな」
どこからか声がしたと思うと光が消える。
目の前には、深緑の制服に、深緑の帽子を被っている人物。
その後ろ姿が見えた時、私は息を呑んだ。
リンゴ
「………………うそ……」
どういうこと……?
私は信じられない光景にその背中を凝視した。
ヴェルンヘル
「………………あの人って」
魔銃龍騎士の衣装を身に纏った人物は魔銃を構えた。
「ヴェルンヘル殿下。リンゴを連れて、神殿へ」
声で確信する。
リンゴ
「ティアゴ君なの……?」
この世界のティアゴ君は、龍騎士じゃない。赤い魔銃師会の制服を着ている。
魔銃龍騎士の制服を着ているのは、この世界のティアゴ君じゃない。
ティアゴ
「向こうの世界もマズイことになりそうだ。早く、リンゴがいるべき世界に戻るんだ」
振り返ったティアゴ君は、若い時の姿で、
私のことを愛おしそうに見てくれる、私のよく知っているティアゴ君だった。
私の目にじわりと涙が浮かぶ。
ヴェルンヘル
「なぜティアゴさんはそんな格好をしているのですか……?」
ティアゴ
「話をしている時間はない。早く行け!ここは俺が食い止める」
一つ目の怪物がまた光だした。
急かされたヴェルンヘルは私を立たせて、また走り出そうとする。
リンゴ
「ティアゴ君!!」
私は振り返りありったけの声で叫んだ。
いやだ………これで最後なんていや………
ティアゴ
「俺たちの世界を、頼んだよ」
向けられる真摯な眼差しを見て、私の子供のような情けない気持ちが吹き飛んだ。
こんな時に私は何を考えているんだろう。
リンゴ
「うん、任せて」
ヴェルンヘルと共に、私は神殿に向かって走り出した。
振り返るとティアゴ君が一つ目の怪物と交戦を開始した。攻撃を避けつつ魔銃を撃っていた。
不思議と、彼が負ける気がしなかった。
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神殿につくと、丁度昼になるところだった。
こんな時に呑気に結婚してる場合じゃない………
けれど。
神殿には、みんな揃っていた。
あんなに外は静まり返っていたのに、いつの間にみんなは移動していたのだろう……
ヴェルンヘル「行こう」
私の手を引いて、ヴェルンヘルは歩き出す。
リンゴ
「ちょっと待って、外があんな状態なのに、結婚式をするの??」
ヴェルンヘルがのんきな性格なのは知ってるけどのんきすぎない?
そんな私にヴェルンヘルは優しげな微笑みを浮かべた。
ヴェルンヘル
「……大丈夫だよ。俺を信じて」
私の手を握る彼の手に力が込めらめる。
リンゴ「……分かった」
神殿に行けといったティアゴ君の言葉もある。私はコクリと頷いて、ヴェルンヘルと共に神殿の中に入った。
そして私たちの結婚式が定刻通り行われた。
………
ヴェルンヘルの友人筆頭、アンジェル……?
ヴェルンヘル側の参列者、男1人のぞいてみんな女……
ヴェルンヘル………
どういうことなのさ。
神殿の扉を開けるとキラキラと輝いてなにも見えない。横にいるヴェルンヘルを見上げると、なんだか寂しそうな表情をしていた。
リンゴ「ヴェルンヘル……」
ヴェルンヘル
「どうやら、
この先があなたの帰る場所みたいだ」
ギュッと抱きしめられる。
「ーーー気をつけて」
リンゴ
「………ありがとう。お元気で、
ヴェルンヘル殿下」
腕が解かれ、私は前を向く。
光の中に足を一歩踏み入れた。
あとがき
ヴェルンヘルからほぼ会いにいくことがなかったので(見ていた限りでは)
まさかヴェルンヘルの友人筆頭にアンジェルがいるとは夢にも思わず。
盛大なオチをヴェルンヘルは最後にもってきてくれました。
どーゆーことだよ💢
とリアルプレイで叫んだのは去年のことでした。
セーブなしで数日ぶっ通しでプレイした
最後をアンジェルがしめます(?)
リンゴの友人のなかに、リンゴから話をしにいっていなくてヒゲ姿で話しかけてきたロベルトが入っているのも謎………
当時の私の記憶でも、ロベルトにリンゴから話しかけていないはずなのです。話しかけてたとしても記憶に残らない回数。
だったらまだセシィー、ティアゴ、ローデリック、そのあたりがいていいはずなのに………人選が謎すぎます。
太陽の君、次回が最後です。