任天堂Switch版エルネア王国をもとに書いています。
前回の続き
ヴェルンヘルと別れ、奏女になって家を出て一人暮らしを始めたリンゴのお話です。
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1人で食べるのは、なんだか変な感じ………
結婚するまで実家暮らしだったからそうえば1人でご飯食べることがなかったんだっけ。
1人の食事は新鮮だと思いつつ、みんなで囲む食卓を思い出し少し寂しい気持ちになった。
「おはよう」
ご飯を食べ終えた頃、爽やかな声がかけられて不覚にも私の胸がドキンと高鳴った。
リンゴ「おはようございます」
胸の内を悟られたくなくて平静を装って挨拶を返す。
ヴェルンヘル
「ドルムの坑道で鉱石を掘ろうかと思ってるんだけど一緒にどう?」
にこりと笑みを浮かべてされる誘いに思わずコクリと私は頷いていた。
坑道でもくもくと鉱石を掘るヴェルンヘルの横顔は、いつもと同じで、そして何を考えているのか分からない……
目が合うと、にこりと微笑んでくれた。
悔しいけど
やっぱりヴェルンヘルはカッコいい…
そんな気持ちを必死にかき消そうとするかのように私は鉱石を掘った。
帰りに山岳兵団の仕事始めかなにかの集まりを見かける。
バルナバさんが兵団長………
このメンバー……いいなぁ。
今私の目の前にいる隊長たちは、元の世界?では皆亡くなっている。
時の流れの速さと切なさを感じずにはいられない。
翌日
ヴェルンヘルは朝一で現れる。
ヴェルンヘルはモテモテだというのに、フリーだった。
好きな女の子はいないんだろうか……
アンジェルが成人していたらさっさとくっつくんだろうか……
バーニス
「これ作ってきたんだけど
よかったら食べてね♪」
バーニスちゃんからの差し入れ……!
リンゴ
「ありがとうー!美味しそう。あとでいただくね」
バーニスちゃんとヴェルンヘルが仲良さそうに話をしている。
2人は仲良かったんだっけ……
私のバーニスちゃんを盗らないで(?)
マルセルからの差し入れ〜
小さいのに気がきくね♪
ありがとう♪
アンヘラちゃんからの差し入れも美味しそう〜♪
夕刻。
エティ陛下がわざわざ訪ねてきて私は驚いた。
エティ
「どこかで魚でも釣ろうかと思ってるんだけど」
小さい頃から隣に住んでいて、お母さんと仲の良かった陛下。身近な存在だけど、この国の女王となればやっぱり特別。
優しげながらも威厳があり、凛然とした雰囲気がある。
リンゴ「お供します」
承諾し、歩き出す。
近くにヴェルンヘルの姿があった。
エティ陛下の姿を見たらヴェルンヘルは足を止めた。
釣りを始めて少しするとエティ陛下は口を開いた。
エティ
「1人暮らしはどう?寂しくない?」
リンゴ
「まだ違和感はありますねー……ご飯1人で食べる時は寂しいかも」
エティ
「リリーが寂しがってたよ。」
ふっと表情を和らげる。
友人の娘に向ける優しげな視線。
リンゴ「お母さんがですか?まさか……」
エティ
「本人には言わないだろうね。リリーはそういう性格だから」
陛下はクスクスと笑う。
良き理解者がいてお母さんは幸せ者だなと思った。
リンゴ
「うちのお母さんと陛下は仲がいいですね」
エティ「そうだねぇ」
リンゴ
「そういう関係っていいなぁって思います」
エティ
「リリーは仕事以外の時は私を陛下ではなく、1人の「エティ」という人間としてみてくれる。私にはその関係が心地よい」
陛下の言葉に私は陛下をまじまじと見つめる。陛下は言葉を続けた。
エティ
「ヴェルンヘルにとって、それがリンゴなんだと思う。」
リンゴ
「…そうでしょうか」
ずっとエルネア城で暮らしてきて同い年で幼馴染だから、ってだけなのかもしれないけれど。
嬉しくもあり、先の未来で仮面夫婦になることが脳裏を過り複雑にも感じた。
エティ
「リンゴくらいだよ?ヴェルンヘルを小さい頃から叩いたり蹴飛ばしたりしているのは」
リンゴ「……💧」
小さい頃の自分が恨めしい……
釣りを楽しむ陛下をチラッと見る。
思っていた以上に、国王という立場の孤独を垣間見たような気がした。
ヴェルンヘルは、ずっと孤独だったのだろうか。
エティ陛下との釣りが終わった頃、農場管理官に声をかけられる。
リンゴ「ジェラール……」
その頭………可愛い………
子供の頃にイムを頭につけたまま、大人になって一年以上放置されている
メルエルも……
メルエル
「この香水使ってみない?」
リンゴ
「え?そんな……勿体ないよ」
メルエル
「これつけて好きな人に声かけてみなよ」
遠慮する私に向かって、シュッと香水をかける。
春の柔らかで甘い香りが広がった。
メルエル
「いい香り♪似合ってるんじゃない?」
頑張ってね、と微笑みながら去っていくメルエル。
リンゴ
「なにをどう頑張れば……」
思わずため息をついた時、近くを通りかかる深紅の制服の人がいた。
リンゴ「こんにちは」
近くにいるのもあって声をかけてみる。
ティアゴ
「こんにちは………なんだ、いっちょまえに香水つけてオシャレしてんの?」
香水に気づいたティアゴ君はニヤリと笑う。
リンゴ
「べ、別にオシャレとかじゃないし…!」
そんな風に言われると恥ずかしくなって身体が熱くなるのを感じた。
ティアゴ
「ふぅ〜ん。毒舌発揮して、好きな奴に逃げられないようにね〜」
リンゴ「ティアゴ君💢」
完全に子供扱いされてる…!
メルエルがつけてくれた香水は、
心に苦いものを残したのだった……
ティアゴ
「お疲れ様です。探索帰りですか?」
急に態度を改めてティアゴ君が頭を下げる。魔銃師会の制服を着た女性……レイラさんがいた。
やっとレイラさんに会えた……!
レイラ
「ええ。ティアゴとリンゴちゃん…珍しい組み合わせね」
この時代?ではそんなにティアゴ君と顔を合わせていないのでレイラさんは首を傾げた。
リンゴ
「見かけたので挨拶を……それよりレイ……Xさん」
この時代?ではレイラさんじゃなかった。気をつけないと…。
レイラさんがジッと私を見てくる。
リンゴ
「えーっと………いえ。なんでもありません」
会えたのはいいけれど、どう伝えたらいいのやら全く分からない…
レイラ
「そう?ところで、リンゴちゃんの方はうまくいってるの?」
リンゴ「うまく…?何のことですか?」
レイラ
「殿下は恋人が出来たみたいだからリンゴちゃんのほうはどうなのかなーって思って」
リンゴ「えっ……」
さらりとレイラさんから発せられた言葉に思考が停止する。
ティアゴ
「へぇ…もう殿下に恋人が………」
ティアゴ君がチラリと私の方に視線を向けてきた。
リンゴ
「わ、私は……まだ全然……」
レイラ
「大事なことだから急ぐことはないわよね。きっといいご縁があるから」
リンゴ
「そうだといいんですけど……あの、私、用があるので失礼します」
私はぺこりと頭を下げ、まるで逃げるようにその場を後にする。
こんな日がくることは分かっていた。
自分以外の人とならきっと今よりヴェルンヘルは幸せになれる……そう考えたのは自分だ。
こうなることを望んだのは自分なのに。
覚悟はしていたのに。
「どうして………」
どうしてこんなに苦しいんだろう。
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レイラ
「リンゴちゃん動揺してたわね〜」
リンゴの後ろ姿が見えなくなると、レイラは言った。リンゴの反応に面白がっているようだった。
ティアゴ
「……Xさんは人が悪い…別れたとはいえ、ついこの前まで付き合っていたのに」
ティアゴにはレイラが少し意地悪に感じ、咎めるような視線を送る。その視線をレイラは悠然と受け止める。
*ティアゴは基本には優しい奴です
レイラ
「でも今は付き合ってないのにどうしてあんなにショック受けてるのかしらね。別れ話を切り出したのはリンゴちゃんからなんでしょ」
ティアゴ
「……きっと色々あるんですよ…」
あまり探るのはどうかと思っているティアゴはこの話をあまりしたくなかった。
殿下が誰と付き合いだしたのか確かめようと調べ始めたティアゴは、ヴェルンヘルの恋人欄を見て目を見開いた。そして横目でレイラを見る。
ティアゴ
「………………本当にXさんは人が悪い」
レイラ
「優しい、の間違いでしょ」
レイラは楽しげに笑うと酒場に向かって歩き出した。
゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――
その夜。
懐かしい夢をみた。
小さい頃の夢だった。
無邪気に遊んでいたあの頃。
城を駆け回ったり、森の小道にいったり、ピクニックしたり。
私の隣にはいつもヴェルンヘルがいた。
隣にいるヴェルンヘルのことを自然と好きになっていた。
ヴェルンヘルの太陽のような笑顔を見るたび気持ちがどんどん膨らんでいった。
「………」
目が覚める。
悲しい朝だった。
虚しい夢だった。
ヴェルンヘルと別れる前に、この夢を見たかったよ。
自分が嫌になる。
ウジウジといつまでも………。
じわりと目に涙が浮かぶ。
袖でゴシゴシと涙を拭っていると
「何かあったの?」
聞き慣れた声がした。
顔を上げると、心配そうにしているヴェルンヘルの姿があって、私は驚いた。
リンゴ「どうしてここに……」
ヴェルンヘル
「どうしてって……その……会いにきたんだよ」
視線を斜め下に流し、少し気まずそうに答える。
リンゴ
「会いにって朝一だよ……」
ヴェルンヘル
「うん………その意味は承知している。しつこいかもそれないけど……」
リンゴ
「彼女が出来たのに、どうして」
ヴェルンヘル「ん??彼女?」
リンゴ
「そうだよ。もうここにはこない方がいい…」
彼女はきっと心配するだろうし、嫌な気持ちになると思う。元カノに会いにいくなんて、彼女の立場なら普通はモヤモヤしてしまう。
それに、私が辛い。
ヴェルンヘルはきょとんとした顔をしたあと、
「ちょっと待って。
………俺、彼女いないよ」
発せられた言葉に私は固まった。
リンゴ
「……………ぇ」
ヴェルンヘル
「リンゴと別れてから誰とも付き合ってない」
告げられる事実に私はついていけない。
リンゴ
「だって昨日、Xさんがヴェルンヘルに彼女ができたって……」
あれはなんだったの…?!
ヴェルンヘル
「……………あの人ボケたのかな?」
もう歳だしなぁ、あ、本人に言わないでねと苦笑しながらヴェルンヘルは指で顔を掻いた。
リンゴ
「ってことは……勘違いだったの……?」
思わず安堵の息をついた。
レイラさんが勘違いしたってこと……?
そんなことあり得るの…??
自分でヴェルンヘルのプロフィールを確かめれば良かった……
いや……
もしも勘違いじゃなかったとしたらあの人のことだから何か細工くらいしていたかもしれないけど…
混乱している私にヴェルンヘルは一歩近づいた。
ヴェルンヘル
「さっき泣いてたのってそれが関係してる…?」
問いかけに私は内心動揺した。
リンゴ「関係ない」
精一杯普段と同じような態度で答えてみるけど、それを崩そうかとするかのようにヴェルンヘルは仕掛けてきた。
ヴェルンヘル「本当に?」
腕を掴まれ、力強い腕にグイッと引き寄せられて至近距離でヴェルンヘルの黒い瞳に見つめられる。
リンゴ「本当っ……」
端正な顔を目の前にして動揺する。悟られないように平静を装ってみるもののほんの少しだけ声が震えた。
こんな間近で見つめてくるとか、ズルいと思う!
ヴェルンヘル「……嘘つき」
切なげな声で囁かれた。
リンゴ「……っ」
聡いヴェルンヘルを誤魔化せるはずもない。
私の心を見透かしているかのよう。
ヴェルンヘル
「今、幸運の塔に誘ったら、
ついてきてくれる?」
その一言に私は驚き目を見開いた。
私たちは少し前まで付き合っていたのに……
リンゴ
「ーーこの前私たち別れたんだよ…」
ヴェルンヘル
「……好きな人が出来たと言っていたけど、リンゴは恋人を作る気配もない。
リンゴが他の誰かと幸せになるなら身を引くけどそうじゃないなら
……もう一度付き合って欲しい」
ヴェルンヘルは私の目を真っ直ぐに見つめた。
リンゴ
「…こんな私の、何がいいの……?」
私じゃ、ダメ……なんでしょう?
だから、ヴェルンヘルは、結婚してから他の女性とよく一緒にいるんでしょう?
このヴェルンヘルには身に覚えがないことだとしても、全く関係がないわけじゃない。
ヴェルンヘル
「リンゴだけだよ。俺を『ヴェルンヘル』という個人で扱ってくれるのは。」
彼の言葉に、エティ陛下が重なる。ヴェルンヘルは穏やかな顔で続けた。
「昔から、俺を特別に扱わず、他の友達と同じように接してくれた。ーー覚えてる?昔、森の小道の探検にみんなで行こうってなったとき、危ないから殿下はきちゃだめって言われてさ……俺がしゅんとしたのを後からきたリンゴが気づいて」
『じゃあ、2人で行こうよ』
「そう言ってリンゴは無邪気に笑って俺の手を引いて森に連れて行ってくれた。」
リンゴ
「……確かそのあと、シカに追い回されたような」
ヴェルンヘル
「リリーさんに危ないことはするなって怒られたね」
ヴェルンヘルはクスクスと笑った。
リンゴ「………💧」
昔の自分…本当になにしてんの。
ヴェルンヘル
「あの頃から……いやその前からずっと、一緒に過ごしてきたリンゴがこれからも隣にいて欲しいと思っている。」
向けられる眼差しは熱を孕んでいてその瞳に見つめられると吸い込まれそうな錯覚を覚える。
リンゴ
「…私じゃ、ヴェルンヘルに相応しくないの」
真剣なヴェルンヘルには、真剣に答えなくてはならない。
苦しげに出た私の言葉にヴェルンヘルは一瞬眉を顰める。
ヴェルンヘル
「相応しくないって誰が決めた?俺は、今のままのリンゴにそばに居てほしい」
身体がぎゅっと抱きしめられる。
力強い腕の中に閉じ込められて、目から涙が溢れ落ちた。
リンゴ
「……本当に今のままの私でいいの?」
ヴェルンヘル「もちろん」
リンゴ
「あとで後悔するかもしれないよ…」
ヴェルンヘル
「そんな日はこないよ」
自信満々に言う。
その様子に私は救われた。
誤魔化すことが出来ないくらい、膨らんでいたヴェルンヘルへの気持ち。
私はもう自分の気持ちから目を背けることは出来なかった。
抱きしめていた腕の力が緩み、ヴェルンヘルが少し離れて深呼吸する。
ヴェルンヘル
「改めて……
もう一度、付き合ってくれないかな?」
緊張した面持ちでそう言うと、手を差し出してきた。
差し出された手と緊張したヴェルンヘルの顔を交互に見る。
リンゴ「うん……」
ヴェルンヘルの大きな手に自分の手をそっと重ねる。その直後、またぎゅっと抱きしめられた。
私も彼の背中に手を回す。
私たちは再び、付き合うことになった。
あとがき
めちゃくちゃ苦戦しております。
書き方分からなくなっちゃった…🤣
ファンブックの特典、早く申し込まなきゃと思いつつ、未だに申し込んでいません……
次のアプデまでには……!