218年 友の最後の願い事 | エルネア王国モニカ国の暮らし。

エルネア王国モニカ国の暮らし。

エルネア王国の日々の備忘録です。妄想もかなりあります。モニカ国。他のゲームの事も気ままに書いていこうと思います。
多忙のためのんびり更新中です。アイコンは旧都なぎ様のきゅーとなクラシックメーカーより。

任天堂Switch版エルネア王国をもとに書いています。


スプラトゥーン、フェスお疲れ様でした!
私、結局、土曜日の午前中のちょこっとしかできませんでした。頭痛が酷くて…悔しい…

勝敗はケチャップチームの勝利!
おめでとうございますー\(^^)/

゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.(o´_`o)g



ゆる女子メーカーで作ったリリーです。

イメージは現代で、スポーツか武道の練習前後というどうでもいいことを考えたりしています。

先輩な感じです。




今回はリリー視点のお話があります。
゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.



収穫祭の夜

騎士隊長の居室にバルナバ、リンゴ、ティアゴが集められた。









この居室の主であるリリーと共に椅子に座っていた。


テーブルには人数分のお茶が注がれたティーカップが置かれているが緊張した面持ちの彼等は誰も口をつけない。


気心の知れたメンバーが集まっているが、部屋に流れる空気は重かった。


龍騎士の白銀の鎧に身を包んだリリーが皆を見回したあと、魔銃龍騎士のティアゴに目線を送る。


リリー
「ティアゴ、報告を」


促され、ティアゴが口を開く。

ティアゴ
「禁断の遺跡の瘴気の濃度は日に日に増しています。今日の濃度も高く、奥に進めない者が数名出ています」


バルナバ
「………これ以上は引き伸ばせないな…」


リンゴ
「そんなことに…」



ティアゴ
「このままではいずれ禁断の遺跡に立ち入ることすら困難になると思います」



リリー
「突入時に濃度が高い場合になにか対処法は?」



ティアゴ
「魔銃師会にそれぞれ瘴気を緩和する薬剤を配布しています。いざとなったらそれを使います。」


バルナバは腕を組んで目を瞑った。


バルナバ
「騎士隊のほうは準備は整ってる?」


リリー
「当然。いつでも出撃できる」


バルナバ
「魔銃師会は?」


ティアゴ
「もう少し、戦闘で使う薬剤を生産しておきたいところではありますが……その他の準備は終わっております」


バルナバ
「明日一日あれば生産は間に合いそう?」


ティアゴ
「はい」




暫しの沈黙ののち、



バルナバ
「禁断の遺跡の魔獣討伐は、もう一刻の猶予もないため明後日の10日早朝とする」


「了解」

皆が異口同音に言った。


リンゴ
「明後日……」

復帰したばかりのリンゴには急に感じるが、皆はこの日まで様子をみて慎重に対処してきている。


リリー
「魔獣討伐戦のリーダーは、バルナバに。今後はバルナバの指揮に従って」


ティアゴ「承知しました」


リンゴ「はーい」


バルナバが全体指揮を執ることに誰も異議はなかった。



バルナバ
「今日の禁断の遺跡は前よりもまた瘴気の濃度が上がり魔獣の数も増えていた。遺跡なのに魔人も出現していて、異様としか言いようがない」
*魔人は主に洞窟で出ます


バルナバは今日禁断の遺跡に入ったらしい。一刻の猶予もないことを肌で感じているようだ。


リンゴ
「……そんなに危ない状況なの?」

怪我をした日以来禁断の遺跡に立ち入っていないためどれだけ危ない事になっているのかイマイチリンゴには分からない。


リリー
「瘴気は……人間の身体に害が及ぶレベルにまで濃度が上がってる」

瘴気の恐ろしさを身をもって知っているリリー。それでも禁断の遺跡の最奥まで入らないといけない。


ティアゴ
「非常に強力な魔獣がいて、ソイツがどうも瘴気を発生させている元らしい……それを討伐する必要があります」

眉間に皺をよせ、ティアゴは難しそうな表情を浮かべていた。

これから相対する魔獣がどれだけ厄介なのか、禁断の遺跡を管理する魔銃師会のトップの彼はこの中で一番よく分かっている。


バルナバは一度短く息を吐いたあと皆を見回した。他の三人がそれに気づき、バルナバに注目する。


バルナバ
「部隊を二つに分ける。まずは遺跡に入る突入隊と、遺跡の外で待機して討ち漏らした魔獣を討伐する部隊。俺とリリーちゃん、ティアゴ君は隊を率いて突入してもらう」


リンゴ
「私は??」

まさか忘れているのでは?と心配になって聞く。


バルナバ
「リンゴちゃんには外の待機する部隊を頼みたい」



リンゴ
「ええー?!」

不満の混じった驚きの声が騎士隊長の居室に響き渡る。


リリー
「私たちも自分に手一杯でリンゴを庇う余裕はないと思うの」


リンゴ
「この前は怪我しちゃったけど、それはダンジョンじゃなかったし……次は大丈夫だよ!」

この前怪我をしたのは不意打ちであり、足手まといになると思われているなら誤解だと主張する。



リリー
「リンゴ」


スッと視線をリンゴに向ける。その視線を受けてリンゴはドキリとして居住まいを正した。


リリー
「上がってくる最奥の魔獣の報告は悪いものばかり。遺跡外にもそれなりに強い人が待機していないと万が一があった時……その魔獣は遺跡を出て国を襲うことになる。外でリンゴがいてくれるからこそ私たちは突入できるの。」


リンゴ「……」

いっていることは理解できるし、待機隊の重要性はわかる。だからこそ、最後の防波堤的な役割を自分が出来るのか不安になった。


リンゴが不満そうに下を向いたのでどうしようかとリリーとバルナバの視線がぶつかる。リリーはなにか思いついたらしくコクリと頷いた。ティアゴはその様子を黙って見ている。


リリー
「……リンゴがくるときっとねぇ…誰かが無茶しちゃうような気がする」

口元を緩めながら、チラリと魔銃導師を見ると

「え?俺ですか?」とティアゴが居心地悪そうにする。


リリー
「だって、ティアゴはリンゴのことを守りながら戦うつもりでしょ?」


ティアゴ
「……いつも通り普通に戦いますよ」



リリー
「そのいつも通りのスタンスが、リンゴを守りながら、なの」


ティアゴ
「そんな事はないですよ」

内心冷や冷やしながらティアゴは否定した。そんな言葉にはお構いなしにリリーはリンゴに向き直ると、


リリー
「ティアゴが大怪我しちゃったりしてもいいの?」

至極真剣な様子でリンゴに訊く。


リンゴ
「………それは困る…絶対だめ」

首を左右に振りながらリンゴは答えた。



ティアゴ「…!」

素直な言葉にティアゴが反応に困り固まった。


バルナバが俯いていた。笑いを堪えているようだった。


バルナバ
「リンゴちゃん、待機隊の方はお願いできるかな?」

なんとか笑いを抑えながらバルナバは「お願い」という形でリンゴに承諾してくれるように言う。

バルナバに真っ直ぐ見つめられ頼まれると断れなくなり、


リンゴ
「………はい、分かりました」

渋々と頷いた。


日程も決まり、突入する部隊と待機する部隊が決まったことで話は終わりバルナバが出されたお茶のカップに手を伸ばす。それを見て他の人もお茶に口をつけた。



皆がニ、三口飲んだところでティアゴがリンゴを見て口を開いた。



ティアゴ
「もしも俺たちが全滅したらその時は……リンゴが討伐して」

ティアゴの言葉にリンゴの顔色が変わる。


リンゴ
「縁起でもないこと言わないでよ!」



バルナバ
「でも実際、本当にそうなったら頼むよ。出来るだけ弱らせておくから」

あり得ない話ではないと、バルナバは思っていた。「覚悟はしておいて欲しい」とその目がいっている。


リリー
「我々が不在時は陛下やセシリア様たちをお願いね」

毅然とした態度でリリーはお茶を飲みながら言った。



リンゴ
「ーーーわかった」

不承不承頷き、目の前のカップのお茶を見つめた。お茶に映るリンゴは情けない顔をしていた。








゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.―


この日より遡ること数日前のこと





リリーの回想



リリー視点での回想となります






「もう長くない」


バルナバから聞かされたのは数日前……


聞かされる前からリリーはバルナバの異変に気づいていたが、それを本人に確かめることは出来ないでいた。


バルナバ自身もリリーが自分の異変に気づいていることを気づいたらしく、カミングアウトした。



一昨年に夫を亡くし、去年の秋に可愛がっていた義弟を失い、季節が冬になると親友のバーニスを失い、季節が春になるとバルナバが先を短いことを知る……




禁断の遺跡の最奥にいる魔獣の討伐はかなり手こずることが予想された。


バルナバの体調を考え、リリーはバルナバは討伐戦を見送るようにと伝えた。




だが、バルナバは自分も出ると譲らなかった。






7日の朝、バルナバは朝一にリリーの元へおとずれた。



リリー
「私は反対だから」


バルナバの姿を見るなり挨拶もなく開口一番にそう言うとバルナバはうっと怯んだ様子をみせる。


バルナバ
「リリーちゃん……」

リリーの許しなく戦闘に参加することは出来るが騎士隊の隊長を説得できないままだとなにかとやりにくいし、何よりリリーを怒らせてしまうことをバルナバは恐れていた。


そしてリリーが反対する理由は

"バルナバの体調を心配しているからこそ"

ティアゴはそうバルナバに言い、リリーはバルナバ自身で説得するしかないと考えた。


リリー
「騎士隊も魔銃師会もそれなりに強い人が揃ってるし、山岳兵団はアラルコス兵団長が立派に務めている。安心して待っていて」


バルナバ
「俺が家で寝ながら吉報を待っていることができない事はリリーちゃんにも分かるでしょう?」


リリー
「………」



バルナバ
「リリーちゃんが同じ立場なら、きっと、俺と同じように考えて、同じことをしていると思う」


リリーには痛いほど、バルナバの気持ちが理解できた。

武人なら戦って死ぬことが本望であり、仲間が戦っていることをただ眺めて見ていることなんてできない……



何も答えなかった。

答えられなかった。





リリーは……

大切な友人に1日でも長く、平穏に暮らしてほしいと願ってしまっていた…

バルナバに生きていてほしいと思ってしまった。




それをバルナバは望んでいない。


彼は自分の死後の平穏のために闘うことを決意している。



無言で、リリーは歩きだすとバルナバもその横を歩き出す。


リリー
(説得が終わるまで諦めない構え…)


*この辺りのシーンをセシリアに目撃された。


夜の帳がおりる頃、織物を作る仕事を終えて毛織物工房から出ると工房の外にバルナバが立っていた。


目が合い、2人は無言でしばしお互いを見ている。

リリーは無言ですぐ近くの評議会堂に入った。バルナバもそれに続いた。

評議会堂に置かれている蝋燭の灯りをつける。お互いの顔がよく見えた。炎が時折揺らめきお互いの表情を見えなくする。


リリー
「……私は反対なの」


バルナバ
「………リリーちゃん…」

意見の変わらぬリリーにバルナバは困った声をだした。



リリー
「………」


バルナバ
「………」



リリー
「……陛下がきっとバルナバの出陣をご命じになるでしょう。それなら私はそれに従うだけ」

何を言っても結果が変わらないことはリリー自身分かっていた。



バルナバ
「……俺は」

離れていたバルナバが突然距離をつめて、リリーの両肩を掴んだ。



「最期はみんなと一緒に、同じ想いで戦いたいんだよ!」


真っ直ぐにリリーを見つめて、苦しげに言葉を繋ぐ。

それにはリリーが陛下の命令で従うのではなく、リリーの意思でバルナバの出陣を承諾してほしいとバルナバは願っていた。



バルナバの苦しい気持ちがリリーにも、流れるように伝わってくる。



リリー
「………私は、バルナバに1日でも長く生きていてほしい……!」


感情的になって我慢していた本音が出てしまって、堪らず視線をバルナバから外す。気を抜くと涙が溢れそうだった。


暗がりの中でもリリーの目にうっすらと涙が浮かんでいる姿と今の言葉にバルナバはひどく驚いた様子だった。




リリーの肩に掴んだまま、バルナバが首を垂れるように下を向く。






バルナバ
「………ごめん、リリーちゃん…」




そのリリーの願いをバルナバは叶えることは出来ない。


残された時間はそれほど長くはない事を彼自身がよく分かっている。








それからどれだけの時間が経ったのだろうか。




長い長い沈黙の後リリーが重い口を開く。




リリー
「討伐戦が終わったら」


自分の肩に置かれたバルナバの手にそっと手を重ねた。

「バルナバのピッツァが食べたい。バーニスが絶品だって褒めてたピッツァを」


バルナバ
「……焼き立てを差し入れするよ」


リリー
「じゃあ、もう帰って寝なさい。討伐戦で足手まといになるようなら連れていけないからね。分かった?」


バルナバ
「……!」


この日の夜、とうとうリリーは折れた。


一度バルナバの出陣に頷いたからには、後戻りはできない。







自室に戻り戦の準備をしていると何かが鞄から落ちた。


ーーアルバムだった。



幼いリリーとバルナバが遊んでいる時のページが落ちた時に偶然開かれていた。




終わりの時ほど始まりを思いだす……




いつまでも想いを馳せているわけにはいかない。



ーー私にはやらなくてはならないことがある。




懐かしそうに写真を見ていたリリーはアルバムをそっと閉じて本棚にしまった。










あとがき

次々と大切な人たちを見送ることになるリリー



残していかなけらばならぬ者と

残される者


両者共に辛い刻を迎えます。