217年 訳ありの旅人とセシリア | エルネア王国モニカ国の暮らし。

エルネア王国モニカ国の暮らし。

エルネア王国の日々の備忘録です。妄想もかなりあります。モニカ国。他のゲームの事も気ままに書いていこうと思います。
多忙のためのんびり更新中です。アイコンは旧都なぎ様のきゅーとなクラシックメーカーより。

任天堂Switch版エルネア王国をもとに書いています。
 
 
おしらせのとおり、
明絃さんとしばらく共同で書かせていただいております。
 
 
この話の前は
 
 
明絃さん担当となっております。



登場人物紹介です
 
 
 
 
 
 
 
美しい女騎士のアリスにイマノルが妙なことを言ってそろそろマーリンに蜂の巣にされると逃げ出したあと、手続きも終わったのでローデリックたちもその場を去ろうとした。
 
 
 
 
マーリン
「ーーエティ陛下が君臨される国はご存知かい?」
 
ふと思い出したように、マーリンが聞いてきた。
 
 
ティム
「エティ陛下…?エティ陛下は崩御されて、今はヴェルンヘル陛下の治世ですよ」
 
 
213年にエティ陛下は崩御され、今のヴェルンヘル陛下の治世が始まった。
 
 
アリス
「ーーマーリンさん!ここは…アーサーさんが言っていた国に違いないわ!」
 
アリスは嬉しそうに言った。
 
 
どうやら、探していた国がここだったらしい。
 
 
アリス
「ーーあの…この国に一昔前に元旅人の有能な女性が魔銃師会に所属されていたとか…そのような方に心当たりはおありでしょうか?」
 
アリスが遠慮がちに言った。
 
 
 
ティム
「昔……有能な……」
 
 
 
ローデリック
「ーー魔銃師会の女性……」
 
ローデリックとティムは顔を見合わせた。
 
 
 
ローデリック
「昔というなら、年齢的にXさんのことだろうか……昔というか今も所属してる」
 
 
 
 
「「「ええっ!?」」」
これには3人とも驚く。笑
 
 
驚く3人にローデリックは笑いを堪えるように口を手で覆った。
 
 
 
マーリン
「ーーあの…大変失礼なのですが」
 
マーリンが一息吐いて切り出した。
 
「ーーその方は生きておられるんですか?魔法とかで生きてるのではなく?」
 
 
 
 
ローデリックは今度こそ笑った。
 
 
 
 
ローデリック
「………もしかしてそうなのかも…」
 
 
 
 
ティム
「Xさんは確か28歳だったような…流石に魔法ではないと思います」
 
珍しく笑っているローデリックを二度見しながらティムが答えた。
 
 
 
 
アリス
「……アーサーさんの嘘つき」
アリスは口を尖らせた。
 
アーサーは亡くなってるのにという理不尽さをアーサーにぶつける。
 
 
ローデリック
「あの人が化け物のように長生きするから……」
 
Xが生きてるが故に何かアリスの表情が曇ったのだろうと察して、ローデリックは笑いが止まらない。
 
 
ティム
「そんなこと言うと、またXさんにこき使われるぞ」
 
ローデリックはギクっとして笑うのをやめた。
 
Xからの頼みは命がけが多くてもう沢山だと思っていた。
 
 
ティム
「Xさんにご用でしょうか?多分この時間だと探索に行ってると思いますが……」
 
 
 
マーリン
「……もしその方なのでしたら、また後日お会いしてみたいなと」
 
 
 
ティム
「Xさんならよく夕刻から酒場にいますよ」
 
 
マーリン
「ーーそうですか……ありがとうございます。では、夕刻に酒場に出向いてみます」
 
マーリンの傍らにいる彼らの娘だというサリアという女性の顔色が悪かった。
 
寒さのせいだと思ったが、アリスとマーリンの気遣ってる雰囲気がどうにもそれだけではないように感じた。
 
 
心配したティムが声をかけようとしたが、ローデリックはティムの腕を引っ張り、無言で首を横に振ってそれを制した。
 
 
何か感じ取ったらしいローデリックは、踏み込むなと言いたいようだった。
 
 
 
マーリンたちから離れると、しばらく無言だったローデリックは口を開いた。
 
 
ローデリック
「………あのサリアとかいう女の人…俺たちを見て怯えていた……」
 
 
ティム
「……異国の人が怖いのかな?」
 
 
ローデリック
「………………そういう目じゃなかった。怖いのは異国人じゃなくて………」
 
 
ローデリックは言葉を切って言うのを躊躇った。
 
 
ティム
「異国人じゃなくて?」
 
なにを言いたいのか、ティムには全く見当がつかないらしい。
 
 
ローデリック
「………とにかくイマノルだけは近付かせないように、ってこと」
 
まるでバイ菌かゴ◯ブリ扱いのイマノル。
 
ティム
「たしかに、アイツはダメだ…」
 
そこは激しく同意するティムだった。
 
 
 
 
 
 
このあとティムたちは逃げていたイマノルに合流した。
 
 
 
ティム
「イマノルってあんなに女好きだったっけ??」
 
合流するなり、ティムは軽蔑の眼差しをイマノルに向けた。
 
イマノル
「アリスちゃん、可愛かっただろ?」
 
さっきの調子のままイマノルがおどけて言った。
 
 
ローデリック 
「お前の頭はどーなってる..あの人どこかの国の騎士隊だろ。それにあの立ち振る舞い……」
 
アリスという名の女性は騎士隊の鎧を身につけて
ローデリックたちへの挨拶の立ち振る舞いは完璧だった。
 
それは騎士隊の挨拶ではないが、他国の騎士隊はあんな風にエレガントなものなのだろうか?
 
 
同じ騎士隊の女のリリーを思い出したが鬼隊長の眼光を思い出すと身体が一瞬震え、ローデリックは比べることをやめた。
 
 
比べる対照にリリーは適切ではなかった…ヒドイw
 
 
イマノル
「訳ありなのは確かだろう。あの人たち、偶然この国にきた感じだったなー。この国のことを何も知らない感じだった。旅人にしちゃ旅人らしくない、諜報員だったとしたら目立ちすぎるしアリスちゃん可愛すぎる」
 
 
 
ティム
「………」
 
真面目に話をしているのかと思ったら、そうでもないのでティムは冷たい視線をイマノルに向けた。
 
イマノル
「ヴェルンヘル陛下がイロイロ手回してる中で辿り着いた人たちだから害はないだろう。とりあえず、オモロイ男がきたってバルナバ兵団顧問とかに連絡しておくかー」
 
 
ティム
「ヴェルンヘル陛下がなんだって?」
 
ローデリック 
「陛下は人知れず頑張ってるってこと………」
 
頑張ってるのは、陛下ではなく指示を受けた別の人なんだけどとローデリックは内心で思うのに留めた。
 
 
イマノル
「みんな陛下をただの女好きって思ってるけどな!まぁ、女好きが本業だけど」
 
 
ローデリック  
「本業は王様の仕事なんだけど」
 
 
ティム
「マーリンさんたち、エティ陛下のいる国を目指してきたらしい」
 
あの場にいなかったイマノルに、ティムは先ほどの話をした。
 
 
イマノル
「は?マーリンさんたちの情報古いのかな?」
 
しっかりしてそうなのに、とイマノルは首を傾げた。
 
 
ティム
「元旅人の、有能な魔銃師会所属の女性のことを聞かれたけど…」
 
まだそれがXだと決まったわけじゃないが、誰だと思う?とイマノルに振ると、
 
イマノル
「………あのおっかないXさんしかいないじゃん」
 
やはりXの名前が出た。
 
*イマノルはティアゴに飲み比べの勝負を挑み
Xに身の程をわきまえなさい、と言われたとことがある。
 
 
ローデリック
「あの人、他国でなんかしたんじゃないの?」
 
 
Xが生きているという事実を知ったときの3人の反応を思い出してローデリックは思い出し笑いをした。
 
 
イマノル
「ローデリックが笑ってる……」
 
驚いて呟くイマノルに、ローデリックは蹴りをいれた。
 
 
 
 
イマノルから妙な報告を受けて、ダンジョンから切り上げたバルナバが、例の旅人3人のところへやってきた。
 
「諜報員にしちゃ諜報員らしくない」という謎の3人だが一応この目で見ておきたい。
 
 
 
 
 
 
____幸運の塔で、例の2人はイチャついていた。
 
1人は酒場の部屋で休んでいるようだ。
 
 
アリス
「マーリンさん…わたくし、貴方と一緒になれてよかった…龍騎士にまで上り詰めたのに…本当にごめんなさい」
 
マーリン
「ばーか。国から出る時に言っただろ?アリスさえいれば、俺はいいんだって」
 
 
なにを話しているのかバルナバにはよく聞こえないが、目のやり場に困るほどのラヴラヴっぷりだった。
 
 
 
この国にやってきた経緯はよく分からないが、穏やかに過ごしてほしい、そんな事を思いながらバルナバはその場を去った。
 
 
「人のデートジロジロみるなんて、はしたないですねぇ、兵団顧問さん?」
 
幸運の塔から出ようとすると、フッと笑ったリリーがバルナバを見下すように笑っていた。
 
 
バルナバ
「…リリー隊長。来たらデートしてただけで、デートを覗いたわけじゃないよ…」
 
リリー
「あの方々がイマノルの言ってた?只者じゃない感じだけど」
(隠しきれないオーラ…我が国の騎士隊にきてほしいくらい…!)
 
 
バルナバ
(リリーちゃん、騎士隊にきてほしいって顔してる…俺には分かる…)
 
リリー
「夕刻、酒場で集合ね。お酒飲んで気晴らしでもしましょう」
 
踵を返して去り際に言うリリー。謎の旅人に危険がなさそうなら飲むと決めたらしい。
 
バルナバも弟、妹のように思っていたバーニーとバーニスをこの短期間で失いさすがに消沈していた。
 
 
バルナバ
「分かった、夕刻酒場だね」
 
 
 
 
 
大人たちがどん底の中、セシリアも沈んでいた。
 
 
結婚できない独身による、独身の素晴らしい生き方について書かれた本を片手に彷徨っていると、
 
この国では見かけない顔の人たちが噴水広場を通りかかった。
 
 
セシリア
(騎士隊の鎧つけてる?旅人さん?)
 
 
セシリア
「旅人さん、こんにちはー♪今日もいいお天気ですね♪」
 
挨拶をすると美しい金髪のポニーテールをなびかせた女性がにっこりと微笑んでセシリアと目線を合わせるようにしゃがんだ。
 
 
旅人?
「あら、ごきげんよう。可愛いらしいプリンセス。良いお天気ね…あら?ご本を読んでるの?賢いわねー!どんな本かしら?おばさんに教えてもらっても良い?」
 
 
にっこりと微笑みを浮かべ、物腰の優しい女性にセシリアは嬉しくなった。
 
 
セシリア
「__?お姉さんはおばさんじゃないよ?
えっとね、独身貴族の生き方って本だよ。
 
今から独身のココロエを学んで寂しいロウゴにソナエます」
 
 
 
マーリンが苦い顔を浮かべる。
「この国…どうなってるんだ?子どもまでもおかしくないか?」
 
 
セシリア
(ガーン(゚ω゚)セシリアハオカシイ…やっぱり大人は結婚しなきゃいけない病……)
 
セシリアはどんよりした。
 
 
 
アリス
「あら、お上手ね。ありがとう、お嬢ちゃん…ところで、独身のまま生きて、寂しい老後に備えるって?…あらまあ、お嬢ちゃん。こんなに可愛らしいお顔なのにもったいないわよ。ねえ、マーリンさん?」
 
なぜか振られるマーリン。笑
 
マーリン
「ずっと独身で良いって昔のどこかの国のプリンセスみたいだ。わたしひとりで生きていかなくちゃいけないの!って」
マーリンが笑い、アリスは頬を赤らめた。
 
セシリア
(2人ラブラブ……)
こんなに人前でイチャつく大人をあまり見てこなかったセシリアは、食い入るように見てしまった。
 
アリス
「…お嬢ちゃん、このご本のどの部分に興味がおあり?」
 
セシリア
「えっとねーすきな人の幸せを願って身を引くシーンだよ!ドクシンキゾクはフラれるのに疲れたのです。好きな人と一緒になれないなら、1人でいい、その潔さがいいんだけど、どうおもう?」
 
 
 
アリス
「それは…美しくもあるけど、切ないシーンね」
 
 
マーリン
「…好きな人と一緒になれないか…そうだよね。自分が好きだからと言って、好きな人が自分の事を必ず好きという訳ではないからね。相手は自分じゃないからね…別の人間なんだからね…」
 
 
丁度その時、噴水広場を横切って、ウィアラの酒場に彼女を連れ立ったレドリーが入っていくのが見えた。
 
 
 
 
レドリーの彼女のマルティナは幸せそうに微笑んでいる。
 
 
 
セシリアの心は更に沈んだ。
 
「………そう…だよねー」
 
 
 
女性はセシリアの視線を追う。
「…素敵な男性ね?何かが足りない気がするけど」
 
女性は囁くような声で言う。
 
 
 
セシリアは一瞬で見破られてしまって顔を赤くした。
 
 
 
セシリア
「…足りない?なにが足りないの?」
 
バクバクうるさい心臓になんとか耐えながら、女性の大きな青い瞳を見つめる。
 
 
 
女性は微笑みながらさらな顔を近づけて言います。
「隣にいるのが…貴女じゃないって事よ」
 
 
 
セシリア
「……えええっ?!」
 
セシリアは赤くなった顔を更に赤くさせた。
こんな事を言う人は、今までいなかった。
 
 
動揺しながら2人を見上げる。
この国の人とは明らかに違う雰囲気だけど、いい人達だと思った。
 
 
セシリア
「……レドリー君は彼女さんとラブラブなの。」
 
初対面だけど、この人たちなら大丈夫な気がしたセシリアはポツリポツリと話をした。
 
「レドリー君とじゃなくて、好きでもない人と結婚するのは嫌なの。イマノル隊長は、結婚してもしなくても大人になったら俺のところにおいでって言ってるけど……」
 
イマノル隊長という名前にぴくりとマーリンの眉が動いた。
 
「イマノル隊長が大人になったらおいで、遊んであげるからって言うけどよくないと思うんです。でもみんなやってるからいいんだよ、ってイマノル隊長はいいます。オトコヒデリは身体にヨクナイヨ?って言ってマシタ」
 
とんでもない言葉があどけない子供のセシリアから飛び出して、緑髪の男性の表情が険しくなった。
 
 
 
マーリン
「あのクソ野郎…!今度こそ会ったら、タダじゃおかねぇ!
…あ、えーと…俺はマーリン。お嬢ちゃん。お名前は?」
 
 
 
セシリア
「セシリア。セシリア・ラウルです!」
 
突如怒りを滲ませた男性にセシリアは不思議に思いながら微笑んだ。
緑髪の男性は目に不思議な炎を燃やしてこう続けた。
 
マーリン
「いいかい?セシリアちゃん。絶対に大人になったらとか…可愛くなったら、とか…セクシーになったら、とか…そのような条件を言ってくる人で良い人なんて一人もいないよ。絶対に行ってはいけないよ?」
緑髪の男性は優しく微笑むと、セシリアの頭を撫でる。
 
 
 
セシリア
「…うんっ!」
 
セシリアはコクリと頷いた。
 
そしてマーリンの隣にいる金色の髪の毛の女性に視線を向け、
 
「お姉さんはマーリンさんのお嫁さん?」
 
 
と聞くと女性は頷きゆっくりと微笑むと、
「だから…もう良いおばさんよ。わたくしはアリスと申します。どうぞ、アリスとお呼びください」
 
セシリア
「アリスさん!マーリンさん、よろしくお願いします」
 
セシリアはにっこりと笑ってお辞儀をした。
 
 
 
そこにツカツカと誰かが近づいてきたのでセシリアはハッとして本を鞄に突っ込んだ。
 
 
 
セシリア
「また会えるといいね!ゆっくりしていってねー!」
 
 
セシリアは手を振りながら慌てて去っていく。そこに黒いマントをなびかせたヴェルンヘルが後を追っていた。
 
 
 
ヴェルンヘル
「待ちなさい、セシリア!その本を図書館に返すんだ!」
 
なかなか追いつけないのでヴェルンヘルは声を張り上げた。
 
 
セシリア
「ふーんだ!パパのバーカ!」
 
振り返ることもなく、セシリアは逃げていき、ヴェルンヘルは追いかけていた。
 
ヴェルンヘルは一瞬、マーリンとアリスを見て気まずそうな表情をする。一目で旅人だと分かり、一国の王が娘にバカと呼ばれてる姿を見られて情けないと思った…が、今は王家の危機だった、
 
セシリアがドクシンのココロエを学び、ロウゴにそなえる、なんてさせる訳にはいかない。
 
 
ヴェルンヘルは2人に会釈をするとセシリアを追う。
 
人々の視線を集めながら、セシリアとヴェルンヘルは噴水広場から消えていった。
 
 
 
アリスとマーリンはその陛下が去るまで頭を下げていた。
 
 
 
マーリンは頭を上げると、他人事のように。
「…どこの国の王も大変だね。王のあの焦りよう…あの子は王族の中でも王太女のようだ」
 
 
 
アリス
「…可哀想に。あの純粋な気持ちをそっとしておいてあげればいいのに」
 
 
 
マーリン
「セシリア嬢ちゃんが好きな人と王は訳ありなんじゃないか?」
 
 
 
アリス
「ーーマーリンさんったら!」
 
 
 
マーリン
「ーー訳ありなんて…俺達はもう動じないけどね」
 
 
流石洞察力の鋭いマーリン、詳細を知らないとはいえ訳ありということを察したようだった。
 
 
 
_____この2人はまだ知るはずもない。
 
王妃と導師のただらなぬ関係を王が察し、その導師の息子に我が娘が想いを寄せているなんて。
過去の話だけどね!一応…たぶん
 
 
 
そこにがっくりと肩を落としたオレンジ頭の青年が噴水広場に入ってきた。
 
「おい、ルイス。お前、またフラれたの?」
 
オレンジ頭のルイスという青年に、アッシュ髪の男が声をかけている。
 
 
ルイス
「____導師…またってひどいよ。っていうか、聞いてよ。なんかやたらと幸運の塔に旅人がいて、ジロジロ見てくるんだけど」
 
ティアゴ
(例のパンフか、とうとう配られたか…)
「…気のせいじゃない?お前は彼氏もちばかり誘ってないで、フリーの子に目を向けろ」
 
憐みの目を向けながら言うと、ティアゴは立ち去ろうと身体の向きを変える。
 
 
そこでアリスとマーリンと目があった。
 
 
ティアゴ
「………?」
 
上着は着ていないが自分とほぼ同じような格好をしたマーリンを訝しげに見たが、ジロジロ見たら失礼だとすぐに視線を逸らせ、足早にその場を去っていった。
 
 
その場に残されたルイスは小さなため息をつき、そんな彼にマーリンは穏やかな口調で声をかけた。
 
「やあ。君、幸運の塔に旅人がいっぱいいるって言わなかったかな?…それも君が振られた直後」
 
 
突然旅人に話かけられてルイスは少し驚いた様子だったが、
 
ルイス
「そうだけど…待ち構えているような人たちもいたけどね」
 
その通りなので正直に答えた。
 
 
マーリンは丁寧な口調で話す。
「突然声をかけて失礼。俺達は旅の者でね。この国に入国する際、おすすめスポットというものを紹介されたんだよ」
 
ルイス
「オススメスポット?この国にそんなものがあるのか…」
 
何にもない国なのにとルイスは首を傾げた。
 
 
マーリンは胸元から例のパンフを取り出すと流暢に読み上げた。
「ーーおすすめスポットはルイス玉砕する幸運の塔」
 
 
ルイス
「俺がオススメされている…?!」
 
幸運の塔がオススメされているのだが、自分の名前にルイスは混乱した。
 
「えーっと旅人さん……?それ、誰からもらった?」
 
 
マーリン
「入国時にこの紙を渡されてね…どうやら、これは今役に立つようだ」
 
マーリンは意地悪そうな笑みを浮かべた。
 
「ーー何と言ったかな…あ、そうそう…山岳兵長イマノル・ボイドだと名乗ってたよ」
 
 
ルイス
「あのバカノルが…っ!」
 
苦々しく呟くと、ルイスはイマノルの居場所を導きの蝶で確認した。
 
ルイス
「この近くかっ…!アイツ一発ぶんなぐってやる…! 旅人さん、教えてくれてありがとうございます。助かりました!」
 
ルイスはぺこりと頭を下げると、ダッと走り出した。
 
 
マーリンは帽子の鍔に手をかけ、ニヤリとした。
 
 
 
「幸運を祈るよ」
 
 
 
 
 
ルイス
「バカノルー!お前!へんなパンフ配りやがってー!」
 
怒鳴り声と共に現れたルイスに、イマノルは
 
「なんでもうバレちゃったのかなーー?」
と頭を掻いた。
 
 
ルイス
「ふざけんな!作ったパンフ全部タナンの高炉に入れて燃やせ!それから10発殴らせろ!」
 
イマノル
「いやいや、あのパンフ何も間違ったことは書いてないよ?お前のスケジュールを書いてるだけじゃん」
ルイスのスケジュール=幸運の塔へ行きフラれる時間
 
ルイスがイマノルを叩こうとするがイマノルはひょいっとそれを避けて逃げ出した。それをルイスが鬼の形相で追いかけている。
 
イマノル
「げ、マジで怒んなって!!」
 
この日、イマノルはリリーに保護されるまでルイスから逃げ回り、それを見かけたマーリンはザマアミロと言わんばかりにほくそ笑むのであった。
 
 
 
このあとは




に続きます