任天堂Switch版エルネア王国をもとに書いています。
リンゴから放たれた言葉にリリーは目を見開き、しばらく身動きすらできなかった。
二人を容赦なく冷たい雨が打ちつけた。
どうして
好きな人は二人いちゃいけないの?
リリーは言葉を失って、雨に打たれながら俯く娘を見つめていた。
ドクンドクンと心臓の音が高鳴った。嫌な鼓動だった。
まるで
昔の自分を見ているような、そんな気がして、なかなか声が出なかった。
どうして
好きな人は二人いちゃいけないの
この言葉の含む意味を考えて、リリーは視線を泳がせた。
(殿下と付き合っているのに..付き合ってから好きな人が出来てしまったということなの..
相手は...)
そんな、相手一人しか浮かばなかった。
最近リンゴがよく一緒にいる相手は、ティアゴしかいない。
酒場でもよく一緒にいる。
ティアゴはリンゴのことを助けてくれた恩があるし、それでリンゴがティアゴに懐いているんだと思った。
(子供時代のリンゴのピンチを、偶然通りかかったティアゴが救う。)
懐いているだけではなかった..
(ティアゴ君は結婚してるんだし、流石にリンゴと何かあるとは思えないけど..)
苦しげに俯くリンゴに、リリーは責任を感じた。
リリーの体調が悪くなった209年。
リリーのために尽力したティアゴとリンゴの距離が近くなったのは間違いない。自分に原因がある。
レッドのこともあり、ティアゴはリンゴのことを毎日夜になると家まで送っていてくれていた。
リリー「殿下のこと嫌いになったの?」
リンゴ「・・そんなことない・・」
リリー「相手の人、結婚されてるのよね?」
リンゴ「・・!」
リンゴは目に涙をためて、顔をあげた。リンゴが誰のことを言っているのか、リリーが察したことに気づいた。
リリー(なんで私たち、親子は...)
リリーはリンゴのことを抱きしめた。
どうして好きな人は二人いちゃいけないの
答えなんて、聞かなくても分かってる。
騎士隊の重鎮、フルールさんが亡くなった。
喪主は、ティアゴの奥様のカトリーンさんだった。
この時気付いたが、フルールの娘さんがカトリーンさんだった。
(ここには表示はないけどロディの奥さんがXの娘さん)
ティアゴは探索終わりに、ローデリックを見かけたのでくさいスープを差し入れした。
ローデリック「いらない」
ぶっきらぼうに差し入れされたスープを拒否するローデリック。
ティアゴ
「いらないじゃないんだよ、受け取るんだよ」
相手に選択肢など与えるつもりはないティアゴ。
ローデリック「・・強制かよ」
ティアゴ
「受け取らないなら、奥さんに押し付けるぞ」
ローデリック「次は脅しか」
ローデリックは仕方なく受け取った。
ティアゴ
「明日の朝食えよ。食べないとお前の子供にくさいスープ差し入れするぞ」
ローデリック「・・怖いやつだな、お前」
ローデリックにくさいスープを押し付けた後、ティアゴは魔銃師会のランキングボードをチェックする。
ティアゴ
(ん?リンゴの探索ポイントが、昨日と全く変わらないような?そういえば今日はあいつ見かけないな..)
暇さえあればダンジョンにこもっているのにとティアゴは怪訝に思いながら、酒場に向かった。
酒場には山岳兵団の面々が飲んでいて、カウンターには一人、リリーがいた。
リリーからはどんよりとしたオーラが放たれていた。
ティアゴ(なんだ?何かあったのか?)
ティアゴはバルナバたちのテーブルに近づいた。
「リリーさん、何かあったんですか?」
バルナバ
「よく分からないんだ..声をかけてみたけど、何でもないって」
ティアゴはリリーの元に向かった。
ティアゴ
「どうかされましたか?体調でも悪いんですか?」
また瘴気のせいで具合が悪いのではとティアゴは心配になった。
リリー
「体調はとてもいいよ、大丈夫。心配してくれてありがとね」
リリーはティアゴをジッとみた。
あんなに小さかったティアゴが、今では立派になって、導師も経験し、自分の娘の先輩になっている。
なにより、自分のために尽力してくれた功労者の一人だ。
リリーはティアゴの帽子をとって、ティアゴの髪の毛をわしゃわしゃと触った。
ティアゴ
「な、なんですか??」
リリー
「べつにー。」
可愛いやら憎たらしいやら..複雑な感情が交差する。
ここ数年で、ティアゴは急に大人びた。そうならざるおえなかったのかもしれない。
ティアゴ
「俺、子供じゃないんですけど..ああ、そういえば、リンゴは今日探索してないんですね?探索ポイント全く増えてないんですけど。」
リリー
「・・・あの子ね、熱出しちゃって、今日はずっと家で寝てるの」
ティアゴ「熱?」
リリー
「大したことないんだけどね。寝てればすぐよくなるから」
ティアゴ
「リンゴでも熱出すことがあるんですね..」
ティアゴは一杯だけ飲んで、酒場を出た。
調薬室に寄って、解熱剤を調合してリンゴの元に向かった。
魔銃兵になったばかりのリンゴには、まだ解熱剤を教えてなかった。
ジェレマイアもまだ外にいて、セイもモモも家にいなかった。
リンゴは1人ベットの上で天井を眺めていた。
そこに誰か尋ねてきた。
ティアゴ「具合はどう?」
リンゴ「ティアゴ君?!」
ティアゴ
「さっき酒場でリリーさんに会ってリンゴのことを聞いたから薬もってきたよ」
ティアゴはリンゴの額に手をのせた。
ティアゴ「けっこう熱いね」
ティアゴはコップに水をいれて持ってきてくれた。
リンゴは薬を飲むためにベッドから起き上がった。
ティアゴ
「もっと早く具合が悪いことに気づいてあげてれば早く薬飲めたのに。ごめんね」
リンゴ「、、ティアゴ君は、悪くないし」
リンゴはコップを受け取った。ティアゴから薬をもらい、飲んだ。
リンゴ「にが!!」
予想以上の苦さに驚いてリンゴは慌てて水を飲んだ。
リンゴ「にが!にがすぎる!!」
ティアゴ
「リンゴには特別に苦さを50パーセント増やしておいたよ」
リンゴ「ティアゴ君バカなの?!」
ティアゴ
「うそうそ、普通に作ったよ。普段薬を飲まないから苦く感じるんだよ」
リンゴ(今の薬、ティアゴ君の手作りなんだ..)
ティアゴ
「飲んだら、もう寝て。」
ティアゴはリンゴを寝かせた。リンゴは熱でぼーっとしながらティアゴを見上げた。
リンゴ「ありがとう..」
ティアゴ
「どういたしまして。もうすぐ収穫祭だから、早く治せよ」
ティアゴはリンゴの頭を撫でた。ティアゴの手が冷たくて気持ちよくて、リンゴはすうっと眠りについた。
翌日の夜にはすっかり体調もよくなって、いよいよ収穫祭を迎える。
ジェレマイア
「明日は収穫祭だねー
今年の出店はどうなるのかな?」
リンゴ「そうだね、楽しみだね!」
ーー収穫祭当日
『噴水広場に出店できます。売り物を並べにいきましょう』
?!
リンゴ(まさかの自分だった)
魔銃兵になったから関係ないと思ったら、権利は失われていないというか、気にしてもなかった。
大きなマトラを釣るぞと気合いを入れる父に今年も
リンゴ
「まあ、大きくてもおいしくないんだけどね」
と和やかな雰囲気にチクリと刺す。
薬をくれたお礼を言うため、ティアゴを誘ってマトラ釣り。
リンゴ
「この前は薬ありがとう!よく効いたみたいですっかりよくなったよ」
ティアゴ
「それは良かった。..マトラ釣りのついでに礼を言いにきたんでしょ」
リンゴ「ティアゴ君はひねくれてるねー」
ティアゴ「(ついでとしか思えない..)
・・・解熱剤とかの作り方、リンゴもそろそろ教えとこうか?」
リンゴ「ほんと?!よろしくお願いしますー」
ティアゴ
「本当はXさんの方がいいんだけど、あの人面倒くさがるからなぁ..」
リンゴ(ティム君も、Xさんが警備につくの面倒だとか言ってたって前にも言ってたっけ..)
マルセルが声をかけてくれた。可愛いなぁ。
今度はお父さんとマトラ釣り。
気をつけて見てみると、女性たちがジェレマイアのことをチラチラみながら釣りをしたりしていた。
リンゴ
(まさかこれがジェレマイアファンクラブの方々?!)
レドリーに釣りに誘われ、やってはきたがレドリーは速攻でどこかへ向かい、置いてけぼりプレイをされたティアゴが近くで釣りをしている。
リンゴは周囲をキョロキョロとみた。
(良かった、カトリーンさんはいないみたい..)
ギオルギーに、練習試合を申し込まれた。
いいの?本気でやるよー。
先制はリンゴで、ストレート勝ちでした。
出店のことを忘れていた。
並べるものがあんまりないので、大事にためていたお守りを放出することにする。
ティム「今年はリンゴさんが出店なんだ」
リンゴ
「私も今日まで知らなくて、びっくりしたよ」
ティム
「魔銃師会の人が出店してるのってなんかへんな感じ」
リンゴ「それは私も思う」
みんなお買い上げありがとうー。
(出店するときは裏?から品物を置くとみんなに邪魔されないのに、それに気づいたのは夜だった)
去年は、プレイヤーもヴェルンヘルの行動に動揺して納品し忘れたキングマトラを今年はちゃんと納品です。
二位はバーニー。
一位ありがとうございます!
その後はバーニスちゃんとご飯。
みんなが平和に幸せで暮らせること
それだけで感謝です...
バーニス
「美味しいお酒が飲めて幸せー♪」
リンゴ
「だねー♪」
女二人は美酒で酔っ払い、楽しい収穫祭は幕を閉じたのでした。