アドルファスが逝った翌日
アドルファスの葬儀を終えてニーノ君をチェックすると、彼は危篤になっていた..
まるで奥様を追うかのように。
奥様が亡くなってからわずか5日ほどのことでした。
ニーノ「リリーか....まあ、こうして寝ていれば明日にはよくなるよ...」
神官として多忙を極め
神官を退いてからも、農場管理官として国の地盤として支えたニーノ君。
ニーノ君も友人たちに見守られ、ガノスに旅立ちました。
その心労と心痛は察するに余りあります..
この頃
国民の間では妙なうわさが流れていた。
騎士隊の隊員が立て続けに亡くなるので、騎士隊は呪われているんじゃないか。
リリーは最近寝込んでいるのでその噂の信憑性が増してしまった。
瘴気の影響と、瘴気のせいで最初の襲撃で受けた傷がなかなかよくならない、立て続けに人が亡くなりリリー本人が思う以上に心労が積もっていた。
そんなリリーをXが連れ出した。
2人は夕刻、酒場を訪れた。
X「私のおごりだから、遠慮しないで飲んでね」
リリー「Xらしくないことを..明日国が滅びるのかな」
X「素直にご馳走になりますーって言えないわけ?」
リリー「じゃあ、ポムワイン30本お願いします」
X「...多すぎない?」
2人はグラスに酒を注ぎ、酒を飲んだ。
X「体調はどうなの?」
リリー「ん..まぁまぁかな」
リリーはXに瘴気を中和する薬を毎日飲めるように処方してもらっているが、体調はまだ悪かった。Xが気にしてしまうし負けず嫌いのリリーは辛いとはあまり軽々しく言うことはない。
X「騎士隊..大変だったね...」
リリー「...Xとアドレーさんはみんなの見舞いと葬儀まできてくれて、ありがとう...」
X「...それぐらいしかできないから」
リリー「X...聞きたくないけど聞かなきゃならないことがある」
X「えぇ、なにしから」
まるでXはこれからリリーが言うことをわかっているような目をしていた。
リリー「瘴気は、人の命を縮めるの?」
意を決して訊ねた。
X「濃度によるわ。この国のダンジョンに存在する濃度なら全く問題ない」
Xは迷うことなく、即答した。
リリー「突入時...私が装置を破壊した。装置に辿りつけたのは、山岳兵団が突破口を開いてくれたから..私の後ろに、騎士隊はついてきていたはずなの...つまり.....」
X「リリーが浴びた瘴気を、近くで騎士隊が浴びた可能性はある」
リリーが言いたいことをXはかわりにいった。
「そのせいで、寿命が縮んだ可能性は、ありえなくはない」
「...!」
リリーの顔が苦しげに歪んだ。
X「寿命だったかもしれないし、瘴気の影響を受けたのかもしれない。でもそれは今となっては分からないわ。
ただ一つだけはっきり言えるのは、リリー、あなたが気に病むことではない。選抜の基準は誰が見ても納得できるものだったし、誰かが突入部隊として出陣しなきゃならなかった。誰も悪くないのよ」
リリーは無言で俯いた。
X「レッドがこの国に目をつけたのは私がいたから。非があるとすれば、私がこの国に永住してしまったから..リリー、ごめんね、あなたに辛いおもいをさせて」
リリー「Xは悪くない!」
リリーは思わず大きな声を出してしまった。
X「じゃあ、リリーはもっと悪くない。さあ、飲みましょう」
リリー「...うん」
リリーはXがついでくれたポムワインに口をつける。
その時、リリーたちの席の前に山岳兵団がやってきた。
バーニス「こんにちはー!」
天使のような笑顔を浮かべたバーニスが挨拶してきた。
後ろにはバーニー、バルナバ、ルクレーシャの姿があった。
X「こんにちは、あなたたちもこれから飲むのね」
バーニス「はい、ルクレーシャさんが落ち込んでいるので気晴らしに」
ルクレーシャも親しい間柄のアドルファス、ニーノを亡くしてリリーと同じく落ち込んでいるようだった。
二人の看取りと葬儀まで出てるということはかなり親しいと思われる..
せっかくルクレーシャが気晴らしにきたのだから、自分は邪魔だろう。
リリー「X、私体調が少し悪くなったから帰るね..」
X「え?大丈夫?」
リリー「たいしたことないよ。バーニスちゃん、もしよかったらXも混ぜあげて」
バーニス「うんそれは全然構わないし歓迎するけど....大丈夫?」
リリー「たいしたことないの。じゃあ、またね」
リリーはバーニーたちの前まできて会釈して去って行った。
バーニーたちには一言も発することはなかった。
バーニス「リリー、最近変じゃない?本当に大丈夫なの?」
ルクレーシャ
「なんだか体調悪そうだったわね..」
アドルファスが危篤の時も、部屋で休んでいた。
バーニス
「バーニー!あなた何か知ってるでしょう!?」
いきなり聞かれてバーニーは困惑した。
バーニー「え?いや、俺はなにも知らないよ」
リリーが瘴気の影響を受けていることをバーニスは知らなかった。
バーニス
「騎士隊は呪われてるとか言われてるし、リリー
も色々大変そう..」
X「体調も悪そうだけど...リリーがおかしいのはそれだけではないと思うのよね」
バーニス「というと?」
X「......リリーは、今自分と戦っているのよ」
自分の気持ちと。
X「さてと。山岳兵団諸君」
この中でXは一番年長者だ。
X「今宵は私が、奢りましょう。思う存分飲むがいい!」
Xは、酔っ払っていた。
バーニス「わーい!Xさん素敵ー!」
バーニスはXのテンションに合わせた。天使のような気遣いのできる子なのだ。
バルナバ「ゴチになります!」
山岳兵団とXに、後から魔銃師協会のメンバーも何人か加わって楽しい宴になった。
翌朝。
ウィアラさんの酒場で使った金額に、酔いが覚めたXが驚愕するのはいうまでもない..
あとがき
Xは金を持ってるから
大丈夫だ!
ちなみに金持ちランキングでリリーは上位にいるけど
もらう給料分、ダンジョン攻略のアイテムに消費されるためまったくたまらない!
(百万以下にならないように気をつけている)
一位は魔銃師で仲良しのジャネットさん。リリーの下にはXやバルナバ、じわじわとバーニーやバーニスもきている。
リリーがダンジョンに連れていくので山岳兵団の懐はほくほくのようだ。
おかげでリリーの懐はいつも泣いている..
そんなランキングは
多分Xとバルナバに年末には抜かれるようだ..